王様の耳はもうロバの耳じゃない
このところ大河ドラマにはまっております。
6月にネタバレ記事を書き、バレ部分を「王様の耳はロバの耳」パートとして有料公開したのですが、番組がもうそれ以上まで進んだので、予告通り無料公開に変更いたします。
当初、有料記事として書いたのはこちらの後半、「王様の耳はロバの耳」以降。
「光る君へ」は、紫式部の生涯を描く大河ドラマです。
大河「ドラマ」だから史実と必ずしも一致していないです。これは他の大河ドラマ(信長でも秀吉でも家康でも「鎌倉殿」でも、「坂の上の雲」でも何でも)と同じ。フィクションをどうやって史実に混ぜ込むかが作家や脚本家の腕の見せ所なんですね。
だいたい紫式部なんて「源氏物語」の作者とされているけれど、それだって「多分たいていおそらくきっとそうだろう」と言われているだけで確実な証拠はないわけです。多分そうなんでしょうけど。
ましてその生涯に至っては生年も没年も不明、今わかっている部分以外はどうやって生きてきたかも不明。脚本の書きがいがあるというものです。
で、冒頭から主人公まひろ(これが紫式部なんだけど、こんな名前だったかは不明、ってか、このドラマ用の名前)の母が貴族に殺されちゃって、それが平安時代だとあり得ない展開らしいので(貴族は自分の手を汚さない)、史実に基づいた、でも令和の私たちの心に響くよう脚色された物語、として楽しんでいます。おもしろいんですよまったく!
だいたいこの時代の女性の名前なんて皇族や身分の高い貴族と結婚した人以外はどう呼ばれていたかもまったく不明。宮仕えしていた女房は父や夫の職名に関わる名で呼ばれたみたいだけど普段もいちいちそう呼んでたの? 普通の庶民は女性もちゃんと名があったの? 通り名みたいなのを使ってたのか? みな不明。
今の感覚だと名前がないなんてめちゃくちゃ不便、というか名前がないと何も始まらないですね。ドラマで史実に即して全員を「○○式部」「○○の君」みたいな呼び方をしなくて良かったと思います。混乱して見てられない。平安の高貴な女性はいつも扇などで顔を隠してたそうだけど、そんなことされたらドラマにならないし女優さんが演じる意味もない。
というわけで必ずしも平安そのものではなく21世紀の私たちに向けて作られた「光る君へ」ですが、なんとここでは紫式部の娘、大弐三位(賢子ちゃん)は、夫の子ではなく道長くんの子なんですよ。
もっとほのめかしで来るのかと思ったらかなりあからさまに描かれてましたね。視聴者をミスリードしないよう、はっきりわかるように。
でも大弐三位は若い頃、藤原頼宗とおつきあいしてったっていわれてるんですよね。歌のやりとりが残ってるだかで。頼宗とは道長くんと明子女王の長男の、ドラマでは童舞で見事な舞を舞って倫子様の長男頼通くんを泣かしていた、あの子です。
今回のドラマ設定だと異母きょうだいになっちゃうからまずいじゃん!
そのへんはドラマだから設定外のスルーということなんですね。
スルーといえば、一条天皇(塩野瑛久さんが実に良い! 超イケメンで目の肥やし)が、定子の死後しばらく心を寄せていたのに妊娠中に亡くなっちゃった御匣殿のエピソードはありませんでした。そこまでやってると尺がないんだろうな。この方は定子の同母妹で、一条天皇の寵愛を受けて子どもができるんだけど生まれる前に亡くなってしまったのです。当時は妊娠も出産も命がけで、その際に命を落とす女性もたくさん居たのでしょう。花山天皇の女御さんもそうでした。17歳とか18歳だとまだ身体もできあがってなくて妊娠は過酷だったのだろうな。
あと絶対スルーされそうなのが大納言の君。倫子様の姪。
配役も付いてドラマには出てきてますが、この人は史実では道長の公認の愛人(召人)でした。倫子様が「あの子ならしょうがないわねえ」と認めたという記録がどこやらにあるそうです。でもその話まで入れてると尺が足りないからきっとスルーになると思われ。
本ドラマの道長くんは、いろいろあっても「まひろ命」でないと視聴者が付いてこないもん。柄本佑だし。
紫式部の娘の大弐三位にもどりますが、この方は「紫式部日記」などから推測される式部の性格と異なり、恋もたくさんするし人づきあいもうまそうで、天皇(皇子)の乳母になって従三位まで大出世しています(だから大弐「三位」)。まひろよりは、正規の夫であるドラマの宣孝殿(佐々木蔵之介さん良かったー!!)に性格が似ている。やっぱり宣孝の子なんじゃ(笑)?
というわけでいろいろありますが、これからも「光る君へ」を推していく所存でございます。
いったい最後はどういう終わり方をするのかな。どこまで描くんだろう?
楽しみでしかたありません!