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アクセントを味わう
福井県敦賀市出身の私の、アクセントの話です。
20年朗読をしてきて、私のアクセントの師匠はアクセント辞典です。
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朗読をしていると、ときどき話題に出るのがアクセント。
正しいアクセントって重要?と聞かれることも。
「正しいに越したことはない」と答えるのは簡単ですが、ちょっと掘り下げて。
*ここでは「放送用に使うために決められたアクセント」についての正しさの意味。
この質問には大体「感情表現を捨ててまでアクセントが重要?一番大事なのは心じゃないの?」というニュアンスが含まれている。
アクセントの正しさが、なんだか感情表現の「反対側」にあるような感じなのは、ここではひとまず脇に置いておくことに(笑)
アクセントを意識する耳
真剣に朗読の上達を目指すために大切なのは、アクセント自体というよりアクセントを意識する耳なのだと思います。
朗読の表現は声をコントロールすることが重要です。
作品を自分の考える表現をするために、声の引き出しを増やします。
そのためには、自分が出している音の高さや強さがどうなっているか、知っておく必要があります。
すると、人の朗読やテレビのアナウンサーの言葉を聞いて、耳慣れない言葉、アクセントなど自然と気になってきます。アクセント辞典でチェックするようになります。
そうしているうちに「最近こんなアクセントや抑揚が増えてきたな」など、時代の変化も感じ始めます。
「熱い気持ち」
例えば「熱い気持ち」。
最近はすっかり、熱い(中高)と厚い(平板)のアクセントが、ワイドショーぽいアナウンサーは両方平板化させている印象。
以下、見た目で音の高低を表現しているので汲み取ってください(*'ω'*)
本来、中高である「熱い」が
*中高
つ もち
あ い き
↓
こう、平板化している。
*平板
つい きもち
あ
これは、「厚い本」の「あつい」と同じアクセントです。
もともとは「熱い・暑い」と「厚い」でアクセントが違っていたのですが、同じになってきました。
一度「い」で下がるより、平板の方が高い音が続き、印象としては勢いがあるし、言いたくなるのかも。
日常、みんなの言葉はかなり平板化が浸透しているなと。
「モデル」
もう一つ、「モデル」とか。
*頭高
モ
デ ル
*平板
デ ル
モ
初めてモデルを頭高で発音したときの「私、気取ってる!?」と照れたあの日(笑)
平板で生きてきたので、ちょっと大人な気がしたもんですが、巷で頭高の発音する人なんてほぼいないので、現代風の軽い感じを表現したいときは平板で読んだ方が作品に合います。
ちょっと古い作品だと頭高の方が合う、みたいな。
*アナウンサーは頭高の人が多い。第二アクセントとして平板でもオッケー。
「熊」
あと、トリビアぽくて面白かったのが「熊」。
*尾高
マ
ク が
*頭高
ク
マ が
私は頭高の発音で生きてきました。
しかし、辞書を見てみると尾高!
言われてみると、「熊がいる」だと、尾高は結構自然。
あ、でも、でも、あの歌「森のくまさん」を尾高で発音してる人いなくない!??クマさん(尾高)って、クマさん(尾高)って!?
一応、これ↓
り の マ
も ク さん
いやいや、ちょっと待てよ。
歌の中ではどうなって、、、
(童謡は正しいアクセントに従ったメロディのことが多い。)
♪ある日 森の中 くまさんに、、、
あ!メロディが尾高!!
おおー、さすが童謡(笑)
でも「森のくま(尾高)さん」違和感あるなぁ、ととりあえずネット検索。
(すみません、ここからは正確な情報ではありません、どこかの記事で見た覚えがあるけど、今検索しても出てこない)
なんと、テレビかラジオの歌番組でアナウンサーが「森のくまさん」の曲紹介の際に頭高で発音し、そこから頭高が広まっていった、らしい!?
ああ、「森のくまさん」のときに、尾高で発音するの結構気持ち悪いな、、、でもそんな機会はないだろうと自分を納得させていました。
ところが2016年、NHK日本語発音アクセント新辞典、18年ぶりの大改訂で「熊」が頭高でもオッケーになりました!
「森のくまさん」を心置きなく頭高で発音できる(笑)
でも、普段の作品では尾高の「熊」の方が、個人的には大人っぽい印象があるので、尾高を据え置きにしておこう。
アクセントは表現の一部
このように、アクセントによって言葉の印象が変わり、時代を表していることもあります。
アクセントを意識する耳を持ち
身体全体で自分の音(声)を理解し
表現するために使う。
なんだか硬い言葉になっちゃいましたが、興味を持って意識することの楽しさです。
とまあ、話は尽きませんが、アクセントって味わい深いもんです。