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灰は、かつて炎があった証である


知りたい、と強烈に思う人が時々います。
これまでどのように生きてきたのか。今何を考えているのか。これからどう生きていくのか。
「私だけしか知らないこと」は別になくてもいいので、おそらく独占欲ではない。ただ、できる限りのことは知りたい。知ってどうする? 特に何もないですが。この衝動はうまく言語にできない。

Ashes denote that Fire was —
Revere the Grayest Pile
For the Departed Creature’s sake
That hovered there awhile — 

Fire exists the first in light
And then consolidates
Only the Chemist can disclose
Into what Carbonates.


タイトルは、Emily Dickinsonの1063番目の詩の冒頭部分の和訳です。

私がこの詩を知ったのはちょうど十年前のクリスマス前、顔も名前も知らない人のmixi日記からでした。

顔も名前も知らない人だけど、顔も名前も知ってる人のお姉さんだということは、色々調べた結果分かりました。というか、ネトスト力(りょく)を駆使してお姉さんを探した結果、この詩に辿り着きました。

その妹さんは当時京都大学薬学部の3年生で、眼鏡をかけていて、少し癖のある茶色のショートボブの髪で、びっくりするぐらい字が汚いのに絵はうまくて、大阪のご出身で、親御さんのご実家が愛媛のお寺で、科学全般の知識や探究心がすごくて、書くものはユーモラスで惹き付けるような文体で、過去の日記もつい遡ってみたくなって、できれば話してみたくて、同じ楽団だけど別のパートに所属していた先輩だからなかなか接点がなくて、演奏会の1週間前のとある作業でようやく話せて、きのこさんと呼んでくれて、mixiの友達になって、演奏会の1週間後に亡くなりました。

mixi、もう忘れ去られたSNSなので念のため説明しますが、ログイン履歴が他のユーザーに丸見えなんですよね。
先輩のログイン履歴が23時間以内、24時間以内、1日以内、2日以内、3日以上前、とどんどん移り変わって行くのを止められなくて、どうしようもない気持ちになったのを覚えています。

そうこうしていたら、先輩の年を8つも上回ってしまった。


私はご存知のとおり記憶力がいいし、情報収集もそこそこ得意です。最初に書いた「知りたい」と思った人の身内のアカウントや裏アカウント、結構見つけてます。
「そういうことあんまり言わない方がいいですよ」って言われたから言わないようにしてたけど、もういいかなって思ったので言いました。


本人と話せなくて、これ以上何かを知ることはできなくても、今あるものは、今のところ残されているものは、私が全部記憶してやる。

それが私なりの故人との向き合い方。


しばらくは「とらわれてる」かもしれないけど、何度か復習すれば定着するから、いましばらくの間だけ、許してね。



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