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運転手さん、一番印象に残っている客おしえて

いらっしゃい。
来てくれてありがとう。

初夏の兆しが感じられるね。
シャツが長袖から半袖に変わる。

ところで6月が旬の食材って知ってるかい?
ネバネバで披露回復のオクラ!

オクラは茹でても焼いてもおいしい。
細かく刻んで豆腐にのせて、
さっぱりとして美味しい一品。

夏バテしそうなこの時期に是非食べてね。

今日は青色
ノンフィクションのショートショート。

▶ライドシェア


一般の人が自家用車で利用者を運ぶ。
ライドシェアがいよいよスタート。

地方では説明会が行われている。
背景は、タクシードライバーの人材不足。

ぼくは建築の業界だけど
人手不足はかなり深刻。

日本の高齢化に伴い、
互いに助け合いながら生活が必要だね。

□□□□□

ドライバーはタクシー会社と雇用契約。
個別面談を実施する地域も。

タクシー会社にとっては助かるのかな。
運転手にとってはどうかわからないけど。

あとは、安全面の配慮くらい。
ドライブレコーダーや緊急時のランプなど
事前に準備するものは多そう。

タクシー会社さんの声を聞いてみたいな。

▶ノリノリな運転手

去年の春ごろ。

飲み会が想定よりもりあがり、
終電をのがしてしまった。

駅前でタクシーに乗る。
片道20分程度。

「お客さん、だいぶ待たれたでしょ」

50代くらいの男性。
ぽっちゃりとした身体。
ミラー越しに笑顔で語りかけてくる。

「金曜日は毎度こうなんですよ」

たしかに20分くらい列に並んだ。
スマホを見ていたのであまり感じなかったが。

□□□□□
少し会話がそこから盛り上がった。

タクシーの運転手とこれほど会話する機会はない。
そう思ったので、聞いてみたいことを質問。

_印象に残ったお客さん教えてください。

タクシーは日々たくさんの乗客を運ぶ。
その中にはきっと特殊な話もあるはずだ。

その話を是非聞いてみたいと思った。

「いいですよ」

そこから運転手は語りだす。

▶婚活パーティー後の男女

2月のある週末。
毎度のようにタクシー待ちの列ができる。

その男性は、少し酔いながら乗車。
スレンダーな女性も同席。

男性は仕事帰りなのかスーツ姿。
30後半から40前半だろうか。
女性はおそらく20代。
互いに少しだけはなれて座る。

女性は男性に語りかける。

今日の婚活パーティー楽しかったですね

なるほど。婚活パーティーで出会ったばかりか。
男性も笑顔で返す。

__家まで送ろう。お家はどこだい?

なんだ。まだ聞いてなかったのか。
さて、ここは新橋。どこまで運転するのだろう。

え、わたしの家まで行ってくれるの?
「運転手さん、埼玉県熊谷市まで」

運転手・男性「熊谷~~~!!!」

男性もあとに引けず、わたしに目で合図を送る。

▶首都高のあかり


運転中。
最初は男性が女性に積極的にアプローチ。

どうやら熊谷に行かず、どこかのホテルに行きたいようだ。
気持ちはわかる。私も熊谷にはいきたくない。

しかし、女性は男性のはなしをうけながす。
あした朝から用事があると言っている。

首都高を経由して埼玉方面に向かう。
時間は午前1時。ほとんど車が走っていない。

□□□□□
うしろが静かになった。
ミラー越しに確認する。

女性が寝た。

男性は静かに窓の外をながめている。
その目にオレンジのあかりが映り込む。

声をかけようにも、女性が寝ているので無理だ。
男性は何を考えているのだろう。

車内はエンジン音だけが響く。

▶遠回り

熊谷に着いた。
女性のいえの付近。

男性は女性を起こす。
口についたよだれをふき、女性が起きる。

「あたしの家は、その角です」

女性は知らない。
となりの男性がさっきまでどんな目をしていたか。

男性は真っすぐ道を見ている。
その目はもはや何も映っていないようだ。

指示されたところで車を停止。
料金ボタンを押そうとする。

「ここは、ぼくが払うよ」

わたしは男性を瞬時に見た。
おい、お前はそれでいいのかと。

□□□□□

ありがとー!いつかごはんいこうね~

いつか・・・
それはいつになるのだろう。
わたしは静かにドアレバーを引いた。

そういえば、男性の家を聞いていない。
お客さんどちらですか。

「浦安です」

わたしは泣きそうになった。

わたしもしびれを切らす。
___すいません、ラジオつけていいですか。

男性「どうぞ」

FM90.5のTBSラジオ。
荒井由実の翳りゆく部屋が流れていた。

最終的に4万円くらいになった。

▶そして

嘘みたいな話でしょと笑いながら話す。
タクシー人生で一番遠方まで行った日だったようだ。

断れないわけではないですけど
お客さんだからねぇと。

わたしだったら断りそうだ。
埼玉経由の千葉はきつすぎる。

他にも、強盗や強姦にあいそうになったことも。
その話も面白そうだと思いながらも
タクシーは家の前についた。

___最後にひとつだけ質問いいですか。

お金を渡しながら聞く。

幽霊って乗車したことあります?

そう聞くと、
レシートを渡しながら、にこやかにこちらを見て。

ないですけど、
幽霊のほうがまだマシかもしれません。

そう答えてタクシーは去った。
また話を聞いてみたいものだ。

それじゃぁ。

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