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#6 木の良さを引き出すために――設計士・小森正和

木の家だいすきの会のメンバーの、人となりを紹介していくこの企画。第6弾は、こもり設計室の小森正和さん。図面を描くことが好きというナチュラル・ボーン・設計士は、木材への愛を控えめに語りながら、新たなチャレンジを心に秘めていた。

木造建築は理にかなっている

――小森さんは昔から設計士になろうと思っていたんですか?
小森
 子どもの頃は大工になりたかったんです。ところが、母が「大工さんは仕事がない!」と吹き込まれて。今ではそんなことないとわかりますが、それを真に受けてしまって「じゃあ設計者ならどうか」と。そこからずっと今に至ります。

――この仕事辞めたいな、と思ったこともないですか?
小森
 ないですね(即答)。色々と大変なことがありますが、設計が嫌だと思ったことはないので、好きな仕事なんでしょうね。

――小森さんは独立してどれくらいですか?
小森
 7年目ですね。学校を出て、アトリエ系の事務所で住宅設計をやっていました。そこの代表が亡くなられて、独立しました。
実は、前の事務所を継ぐかどうかという話もあったのですが、建築はつくる人の人柄が出ますから。人が変われば作風も変わる。作風が違うのに同じ社名を冠するのはどうかと思ったこともあり、独立しました。

――小森さんの作風について質問です。やはり、木の家だいすきの会メンバーということもあって、木をふんだんに使った家づくりを得意としていますか?

小森 私はメンバーではちょっと異色かもしれません。もちろん、木は好んで使う材料ですし、こだわりもあります。ただ、例えば「真壁」か「大壁」かでいうと、大壁を選ぶタイプなんですよ。だいすきの会は真壁派が多い気がしますが…。

――すみません、真壁や大壁ってなんでしょうか。
小森
 真壁は昔ながらの日本の建築の壁のつくりで、柱や梁が見えていること。大壁は、それが表には見えていない壁のタイプ。もちろん真壁も良いですが木の存在感があるので、私はもう少しさり気ない空間が好みなんです。

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――なるほど。壁ひとつとっても設計士のタイプがあるわけですね。
小森
 それと、作風とは違うかも知れませんが、最近では設計士同士で組んで手掛けることが多くなっていますね。すると、お互いのアイデアに刺激を受けたり、得意分野で力を発揮したりできますから。あと、一人だと息詰まってしまうことも、話をすることでクリアになることもあります。

――情報をシェアしてギルド的に仕事をしていく。今的な手法ですね。
小森
 これもそうでした。お寺の別院で、葬儀場と休憩所が入っています。

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――おお、葬儀場は洗練された教会のようですね。
小森
 そうですね。光の入り方や照明、色のトーンなどで、厳かな雰囲気を演出し、かたや休憩所では木の温かみを全面に出すことで、ほっとできる空間をつくりました。オンとオフのゾーニングを注意して、木を効果的に活用した事例ですね。

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――木が最も魅力的に映えるように工夫しているんですね。
小森
 木造は、やっぱり理にかなっていると思います。大工さんも作りやすいし、鉄筋コンクリートよりも壊したり変えたりし易い。これから挑戦してみたいのは、天然乾燥材をつかう家造りです。

――天然乾燥材ってなんでしょうか?
小森
 今は木を伐り出したあと、機械で乾燥させるのが一般的なんですが、機械に頼らず文字通り自然に乾燥させて仕上げた材です。
機械乾燥より木自体の特性や強さを引き出せるのですが、まだトライできていません。いつかはきっと…。

できるだけ、図面を描いていたい

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――お客さんとのコミュニケーションで心がけていることはありますか?
小森
 最近のお客さんはめちゃくちゃ勉強しています。たくさんの情報を世の中から拾えますからね。その分、こちらもプロとして言いづらいことも含めて、正直に伝えるようにしています。結果的にはその方が信頼関係を築ける。もちろん建主さんの不明な点や違和感はどんどん知らせてほしいですね。

――コミュニケーションをかなり重視している。
小森
 そうですね。大工さんとの間もそうで、図面を見ていて疑問や提案があればどんどんぶつけてほしいタイプですね、僕は。

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――それにしてもかなりお忙しそうですが、休みはあるんですか?
小森
 週一日とっていますよ。

――なかなかハードな感じがしますが、もうちょっと休みたいとかありますか?
小森
 いやぁ全然ないですね(笑)。たとえばあまり図面を引かずに人にパスしていけばもっと楽できるかもしれませんけど、僕は現場も行きたいし、気になるので図面も描きたい

――そこまでいくと、天職ですね。奥さんにはもっと休んでほしいと言われませんか?
小森
 ずっとこういう働き方なので、特に言われませんね。もちろん合間合間で家事のお手伝いはしています。洗濯は苦手ですけど。逆に、何日か連続で休むと「休んでるなら働いて」って言われます(笑)。

――設計士の妻の鑑ですね(笑)。ありがとうございました。

こもり設計室

「住む人にとって心地よい生活ができ、長く住んでもらえる家」をモットーに、新築からリフォームまで手がける設計事務所。シンプルなプランと建具や造りつけ家具など細かなディテールを得意としている。

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