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インパクトスタートアップ企業のIPO支援|株式会社笑美面

株式会社笑美面は、2023年10月26日に東京証券グロース市場に新規上場を果たしました。KINOCOSと進めた上場時のプロジェクトの経緯や内容、ビジネスの現況を踏まえたIR発信状況や今後の展望を、同社代表取締役の榎並将志氏と同社IR担当者の高岸千恵氏に伺いました。

1.改めて、貴社の会社概要をお話ください

榎並:当社は、超高齢社会における介護領域において発生している社会課題に対峙し、「高齢者が笑顔で居る未来を堅守する」というビジョンに向かってサービスを展開しております。特に今注力している課題は「介護家族の介護負担」です。その背景には、シニアホームに対する誤解があります。「シニアホームは満床で入れない」、「民間のシニアホームはすごく高価だ」、「大切な家族の介護を他に任せるのに心理的抵抗感がある」といった誤解が発生している結果、シニアホームに対する「諦め」が起こっており、介護離職、老老介護、孤独死、 ビジネスケアラーやヤングケアラーなどの介護領域の社会問題を引き起こしています 。こういったシニアホームに対する誤解を解き、シニアホームとお客様のベストマッチを目指すサービスとして、「シニアホーム紹介サービス」を行っております。特徴は、原則face to face相談による「家族会議」の機会をつくり、シニアホームの正しい情報と併せて最適な暮らしの場となるシニアホームの情報を提供している点や、その他入居に伴う多数のハンズオン支援を行っている点にあります。

また、当社のビジョンの実現のためには、シニアホームと入居者のマッチングにおける課題だけでなく、介護家族が安心して入居させたいと思えるシニアホーム側のサービスの質向上・拡大も必要だと考えており、シニアホームの新規開設時のコンサルティングを提供する「シニアホーム新規開設コンサルティング」の推進と、既存のシニアホームに対して必要なプロダクトを届けるプラットフォームである「ケアプライムコミュニティサイト」の拡充を進めています。シニアホーム市場は棟数ベースで大手10社のシェアが約11%に過ぎず、中小規模法人が乱立している状態にあり、業界構造として「分散」という課題があります。この分散構造により、シニアホームとしての情報取得能力や、バイイングパワーの不均衡から購買等の不効率が発生しているため、シニアホームのサービス品質を向上させるようなプロダクトの導入が進まず、業界構造の硬直や低い生産性などの課題が発生している現状があり、当社はこの市場課題の解決を目指しています。

株式会社笑美面『2024年10月期 第2四半期決算説明資料』より抜粋

長谷川:貴社の特徴として、介護家族を支援するための実践的なロジックモデルを構築し、その実現に向けてビジネスを進めている点が挙げられると思います。中長期のアウトカム実現に向け、どのように価値創出できているのか、お客様が感じている実感や定量的に取得したデータに基づいて、ご教示いただけますか?

榎並:当社はビジョン実現までのロードマップを可視化したロジックモデルを構築しており、中長期のゴールとなるアウトカムや成果指標となるKPIを設定しています。また社会インパクトの成果指標として、入居後アンケートにより「介護家族の身体的介護負担からの解放によって生み出された時間とポジティブな使い方を計測しています。アンケート結果から、サービスの利用前後で1日あたりの家族介護の時間を8時間以上削減できているというデータや、減少した介護時間を利用して多くの方が仕事に復帰されており、ビジネスケアラーの解消にも寄与しているということがアウトカムとして実現でき、SDGs5.4のターゲットにも繋がっています。

株式会社笑美面『2024年10月期 第2四半期決算説明資料』より抜粋

2.IPO支援をご依頼頂いた当時、どのような課題意識を持って、弊社にご依頼いただきましたか?

榎並:2023年6月頃、IPOの審査段階でロードショーマテリアルの制作について、元々個人的に関係値のあったKINOCOSの代表の木下さんに相談しました。KINOCOSに発注させていただいた背景としては、過去の制作資料の実績とそのクオリティが非常に高かったことと、単なる資料制作だけでなく、エクイティストーリーの構築から投資家とのコミュニケーションまで包括的に支援してもらえるという点で、社内からも高い評価があったためです。

ロードショーマテリアルの制作は依頼させていただいたものの、実は当初、証券会社との株価交渉にはあまり注力していませんでした。当時の市況感もありマイクロキャップとしての上場が想定されていた中で、アクションをしたとしても時価総額に対する大きなインパクトは出せないと考えていたためです。しかし、当社のミッションや目指す世界観に共感いただき、長年に渡って支援いただいている株主の皆様の期待を前にして、株価交渉に真剣に取り組んでいない現状は失礼にあたると考えたのと同時に、少しでも高いバリュエーションを獲得することで、恩に報いたいと強く思うようになりました。

タイミングとしては東証からの上場承認直前、すなわち当社の想定価格が決定されてしまう直前であり、遅きに失する寸前の状態でした。KINOCOSは適切なバリュエーション獲得に向けた交渉支援も行っていただけるとのことだったので、すぐに依頼させていただき、タイトな時間軸の中で、適切なバリュエーション獲得に向けたプロジェクトを推進いただきました。

3.IPO支援時、特に印象的なエピソードがあれば、お話し下さい

榎並:一番KINOCOSの印象に残っているのは、24時間年中無休で並走いただいたことですね。当社のIPOの目的は、このサービスを世の中に広めることであり、念願でもあったので、「納得できるものを作りたい」というこだわりがありました。また、時間軸の制限がある一方で東証の審査に関わってくることは絶対にミスすることができないので、短時間ながら満足できるものができるまで並走いただけたのは大変有り難かったです。
 
特に、先に触れた証券会社とのバリュエーション交渉が最もシビアな時間軸で動かなければならなかったので、榎並、木下さん、長谷川さんで何度も緊急ミーティングを行いました。スケジュールを逆算すると1日で資料を作成して打ち返さないと先方のアナリストを交渉のテーブルに引き出せない、というような切迫した局面が多々あったプロジェクトにおいて、ときには徹夜で対応いただいたんだろうな、という日もありました。そういった証券会社の動きや上場審査のプロセスに対する深い理解があった上で、短納期で資料作成対応していただいたことは、当社の株価交渉の成否を分かつ大きなファクターになったと思います。
 
もう1つ、株価交渉の成否を分けた大きなファクターがあります。それは、バリュエーション交渉のロジックの設計についても非常にレベルの高い提案をいただき、証券会社に対する当社の交渉力を大きく高めていただいたことです。ファイナンスを専門とする人材を抱えていない当社のような事業会社が、金融のプロフェッショナルであり、独自のロジックを持っている証券会社のアナリストを相手に自力で交渉することは、とてもではないですが無理な話だと思います。表層的な事業内容を受けたコンプス企業(類似企業)の設定だけでなく、相手のロジックも考慮の上で、事業・収益構造、成長率、ポジショニングや収益性などの多様な観点による分析からバリュエーションのロジックを作り上げていただき、証券会社も考慮せざるを得ない交渉材料を提示することができました。
 
長谷川:当社には「クライアントが適正な価値評価のもと上場してほしい」という願いがあります。買収防衛・適時のファイナンスなど株価が重要となる局面は多々ありますが、適正な価値評価を受けていればこそ、企業価値向上に向けて必要なアクションの機会がフェアに得られると考えています。私自身、出自は今と逆で、証券会社でIPOバリュエーションをする立場を複数経験したことがあり、企業にとって一世一代のIPOというタイミングであるからこそ、極めて真剣に真のバリューを表現し切らなければならないとの強い使命感を持ち職務に挑んでまいりました。最後まで並走させていただき、その想いが貴社にも伝わっていたのかなと感じます。

ポイント
❶時間軸が切迫したプロジェクトの中で、短納期での対応
❷アナリストのロジックを踏まえたバリュエーション交渉材料の提供

4.IPO後も継続的にご支援させて頂いております。どのような点に価値を感じて頂けているでしょうか。

高岸:まずIPO前から継続して支援もらっているKINOCOSの印象として、「当社のビジネス理解がとにかく早く適切に言語化をしてくださる」ことと、「期日までに期待以上のアウトプットを出してくださるという絶対的な信頼」があります。これまで様々な外部の方と一緒に仕事をしてきた中で、中には完全に受け身な事業者の方もいる中で、俯瞰的な視座から私たちの抱えている課題と、それに対する解決策を明確に言語化して頂いております。圧倒的な投資家目線から、時には間違っていることを間違っていると言ってくださるため、本気で向き合ってくださる会社だな、と感じております。ロードショーマテリアルの制作においても、「インパクトIPO」という前例のないチャレンジの中で、どうすれば事業と利益だけでなく社会課題の解決に重きをおいている企業と見てもらえるかというテーマに対して、匙を投げられてもおかしくないと思うくらい、ギリギリまで二転三転とした中でも、「最後まで榎並社長の語りやすさを考えて行きます」と言っていただき、タイトな時間軸の中で本当に仕上げて下さったことには、大変感謝しています。
 
IRの実務担当者として、私自身は投資の経験もなく、完全にゼロからのスタートでした。資料は精度の高いものを作っていただきましたが、IR業務については不安も多く抱えていた中で、私の知識や経験のレベル感に合わせて、初歩的な質問についても丁寧にコミュニケーションしてくださり、当社の時価総額水準やフェーズを踏まえて、上場直後のタイミングですべきことを整理いただけたことで、施策の取捨選択をすることができ、スムーズにIR活動の立ち上げと推進を実現できています。
 
榎並:経営者の視点からも述べさせていただくと、上場後の支援を通じて、上場企業としての気構えを教えていただきました。会社としても経営者としても初めてである「上場企業になる」という経験をしたわけですが、せっかく上場したのだからと、上場直後の株価や出来高の数字を見て、焦る気持ちもあると思います。そういった中で、KINOCOSは一貫して「適切に企業価値が評価されれば良い」というスタンスで並走いただき、時々で最適なアドバイスや支援をいただきました。一度上場すれば半永久的に上場企業であり続けるわけで、一時的に過大に企業価値の評価を受けても、適切な水準に収束していきます。焦ることなく、まずは業績をしっかりあげていくことと、良い投資材料が出てきた時に、きちんと投資家に対して発信すれば良いことを教えていただきました。
 
私がKINOCOSの支援にどれほど感動したかがこの記事を読んでいただいている皆様に伝わるといいなと思い、証左を2点あげさせていただきます。1つ目は、顧客の紹介です。KINOCOSのIPO直前の激烈な支援とIPO後の適切な支援を受けて、既に上場が決定している企業と上場準備中の企業を合わせて10社紹介させていただきました。2つ目は、セミナーへの共同登壇です。私が所属しているN-2期からN期(上場申請期)の企業の代表からなるグループがあり、2024年7月に私の上場経験談をセミナー形式で共有する場があるのですが、そこにKINOCOSの木下さんと長谷川さんにも登壇してもらいます。懇意にしている経営者にも胸を張って紹介できるくらい、KINOCOSの上場直前後の支援には大変感動しました。

ポイント
❶迅速かつ適切な事業理解に基づき、IPO直後にすべきIRアクションを整理
❷IPO直前後のKINOCOSの支援を受けて、上場を目指す会社を10社紹介

5.貴社の将来的な事業展望や意気込みをお話下さい

榎並:起業してからの道のりやIPOプロセスを通じて、こんなにも多くの方に応援していただけるのは、世の中にとって価値になることをやっているからだと改めて痛感しました。応援してくださる全ての方々に感謝、そして恩を返していくためには、当社の心強いメンバーとともに、「高齢者が笑顔で居る未来を堅守する」というビジョンを実現していくしかないと考えています。私たちはインパクト企業であり、まさに「会社は社会の公器である」ということを体現する姿を見せて行きたいと思います。私自身も、20年以上の経営者人生の中で、今が一番楽しく、ワクワクしており、可能性に満ちていると感じています。一度きりであり、限られた時間である「人生」を何に使うのかということを考えた時に、社会をよりよくできる事業に使うことでこの世に生まれ落ちたことに対する納得感が生まれ、それが人生に対する熱量に繋がり、周囲の人々に伝播していくことで良い循環が生まれると考えています。こういった正のスパイラルに身を置いていくことが人生における幸福であり、これを会社単位でも実現していきたいと考えています。

株式会社笑美面『2024年10月期 第2四半期決算説明資料』より抜粋

KINOCOSでは、資金調達支援、IPO支援、IR支援など、企業価値の最大化を実現するさまざまなソリューションを提供しています。
 
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