ブータン旅行記 第4章 思考がぐるぐる
こっちに来てからやたらと夢を見る。
内容はすぐに忘れてしまうんだけど・・・。
夜中、スコールのような雨の音で目が覚めた。
今は雨季なので、毎日雨が降る。
けれどずっと降っているわけではなく、ざーっと降り始めたと思うと、あっという間に晴れ間が見えてきたりする。
めまぐるしく変わる空がおもしろい。
朝にはすっかりいいお天気になっていた。
遅めの朝食を取って、ティンプーの街を見下ろせる丘に行った。
そこには建設中の大きな仏像があるのだ。
世界で2番目に大きい仏像になる予定なのだとか。(一番はどこかと聞いたが誰も知らなかった。)
大仏は金色に輝いている。
これから周辺にお寺やレクリエーション施設なんかも造って、完成は2020年くらいの予定。
どんどん変わっていくんだろうなぁ。
丘の上からティンプーの街を眺める。
小さな街だ。
けれど周囲の山々を見渡せば、やっぱり大きな街だ。
遠くの山裾に同じような形の建物がいくつも建てられているのが見える。
ブータンで初めての建売住宅なんだそうだ。
ついにこの国にもそういう会社ができたらしい。
軍の施設の敷地内には、巨大なタンクが3つ、どーんと並んでいる。
これは水力発電のためのものだという。
発電した電気のうち、国内では3割くらいを使って、残りは全部インドに輸出するらしい。
街外れに政府が建てた日本の団地みたいな形の住宅は、低所得者向けのもの。
政府は教育にも力を入れており、毎年250人ほどの学生が海外留学する。
帰国すると国家試験を受けて、合格すれば国の要職に就く。
そんなエリートたちによって、国はもっともっと発展するだろうとサンゲは言う。
国中の町や道路が全て整備されるまでには長い時間がかかる。
開発が完了した頃には、自分はもう生きていないだろうと言う。
それは本当に長い時間だ。
誰のために?未来のために?国のために?
国って何なんだろう。
いろいろと思いはつきない。
自分が生きているうちには完成しないであろう何か。
ふと、日本の原発のことを思い出した。
私が生きている間には収束しないであろうもの。
しかしそれは、ブータンと比べてあまりにも対照的だ。
それでも、何十年かかろうと、自分が生きているうちに少しでも事態を改善しようと思ってがんばっているたくさんの日本人がいることを、私は知っている。
GNHのことも聞いてみた。
GNH(Gross National Happiness)、すなわち国民総幸福量とは、ブータンで提唱された新しい国の評価方法である。
経済を評価基準とするGDPとは対照的に、国民がいかに幸福に生活しているかを比較、考察している。
「発展」に二面性があることは、ブータンの人々ももちろん理解している。生活が便利になり経済的に豊かになる一方、今まで考えられなかったような問題が次々と発生している。
だからこそ、経済という一部の者だけが利益を享受する状態ではなく、全国民が幸せになることを目標とするGNHを掲げているのだ。
でも、じゃあ幸せってなんなんだろう。
ブータンの人が他の国の人よりも幸せかどうか、私にはわからない。
だけどGNHという指標がある限り、他の国の人たちよりもずっと、自分の幸せについて考える機会は多いだろう。
大切なのはそのことなのかもしれない。
自分を幸せにするのは自分だけなのだから。
GNHの判断基準には、健康、自然、教育などいくつかの大きな柱があるらしい。
そこからさらに細分化されて最終的に72個くらいの項目があるという(サンゲ談)。
それでもって幸福度を測るのだそうだ。
幸せって多面的だ。
でもすごくシンプルなことでもある。
改めて自分の幸せについて思いを巡らせた。
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