自由に創作された足枷〜アクマゲームドラマ化の代案から見えたもの〜
アイデアって最初はクリエイティブなはずです。でも作ったブレイン達が腐ってると、手足として動く実働部隊にとっては、呪われた手枷・足枷に変貌する。疑問を発言する事すら許されぬ、ヴォルデモート(by ハリーポッター)になる。「クリエイティブな足枷」というか、「ヴォルデモート化したアイデア」というか。ソンビのような組織によく有る。ソンビとは逆に「血の通った」と言えるグループ・組織では、現場(手足)が活発化するよう案が出るし、疑問(体の違和感)は漏らさずキャッチして改善される。ブレイン達が生きてる状態です。
前回noteしたドラマ「アクマゲーム」で、そんな事を思いました。ドラマのブレイン(本打ちメンバー)の適当さは、近年のヒットドラマ「ふてほど」でも「ブラッシュアップ」でも自己批判的に描かれ、現実では「セクシー田中さん」事件の報告書で可視化されたと思います。「間宮くん、いいよね~!うちの娘がファンでさー」とか「ドラマ冒頭、海外ロケで!」とか「AIブームじゃん?」とか「全世界配信だから、世界中に99本鍵ばらまこう」とか、最初は「クリエイティブ」だったアイデアが、以下のような原作改変の「制約条件」になったかな、と。
・制約条件:演者固定、冒頭海外ロケ必須、AI必須、鍵99本必須、悠季&初の初回登場必須
実際は知りませんが、脚本家も制約条件に苦労したかもしれません。原作改変の許諾アリだから、改変自由だからクリエイティブに改変のアイデア出したら、それが脚本を縛る制約条件になっていた。ありそうですよね。
でも、上記の悪魔の制約条件の元でも、良い脚本ってないものでしょうか?
noteには脚本クリエイターの方が多いですが、あなたなら、どうします?
と、ここ(note)で書いちゃったら、脚本コンテストの脳内開催ですよね。で、どうせ私以外参加者いないから、開催者=唯一の参加者の私が、優勝する。という訳で、「ドラマアクマゲーム初回脚本シナリオコンテスト(制約条件付き部門)」の優勝作品、という素人二次創作が以下ですw。
・目標:主役・織田照朝(間宮祥太朗)をヒットさせる(カイジ・半沢直樹レベル)。超博愛主義の超優秀トップに「こんな奴いねぇ」とツッコミつつ、「でも、いて欲しい」と願うエンタメを視聴者に提供する。初回は、「ガドと出会うのが10年遅かった照朝も悪くない」とファンに思ってもらう。
【0分】:カンボジアの小屋 変則ポーカー
・・躍起になった現地の親父は、全財産と武器をかけてレイズ
・SE:銃を机に置く重い近接効果音
・・照朝は全紙幣、さらにパスポートを賭けコール。
・・注目の結果は・・・照朝僅差で勝利。
・・照朝は卓上からパスポートだけ取り除き、残りの全部を賭ける。
・・親父は賭けるものがない、と仕草。
・照朝「(現地語)なら学校を建てる約束、を賭けてくれ」
・・笑顔の親父はレイズし「鍵」をドンと紙幣の空き地に置く
・親父「先祖から受け継いだ形見だ。お前も形見を出せ」
・照朝「(笑って)負けたよ。形見までは賭けられない(ドロップし、去る)」
・・親父が残された照朝のカードを仲間と見ると、最強手
・親父「絶対勝つのに何故、ドロップしたんだ?」
【3分】:オフィス夜。丸子v.s.ホンダ会長
・・会長は残留。丸子は・・・うん。じゃぁ方言で、ドラマ準拠で。
【5分】:託児所朝 登園声掛け
・・照朝が持つカンボジア学校写真を覗く龍肝
・龍肝「これは、坊っちゃんが水道ボランティアで行かれた所ですね?」
・照朝「(水道開通の笑顔を回想)共同作業で仲良くなってね。休憩中にポーカーで俺に勝った親父が、毎年写真をくれる・・・」
・・登園する園児の名前を呼んで挨拶する照朝。園児は「照朝兄ちゃんおはよう」と返す。
・龍肝「幼稚園?いや小学校ですか・・・」
・照朝「両方兼ねた教育施設だそうだ」
・・名前を呼んで挨拶する照朝。園児を連れた小学生児童は「園長先生おはよう」と返す。
・龍肝「この社内学園と同じですね(役員会議を回想し)・・・もしかして寄付先は」
・照朝「いいじゃないか。彼らには教育が必要なんだ・・・いや、そもそも財閥企業とは(遮られる)」
・龍肝「分かっています」
・・慌てて笑顔を作って挨拶する照朝が、園児にハグされる。
・龍肝「(オフィスを見上げ)もしかして水道ボランティアも、この学校のためでしたか?」
・照朝「(園児に手を振りながら)そんな未来は読めないよ。ただ昔から、賭けには絶対に負けない主義なんだ」
【7分】:AI研究室の夕方。仕方なくAI&脇役2名ご紹介。
・・研究費を援助したホンダ会長の死亡ニュースを見て、初(設定要改善だが省略)は試作AIおろちを見せられす残念がる。
・悠季「でも予定以上の進展よね。明日照朝に見せてくる」
【10分】:託児所=社内学園の翌朝
・・挨拶で忙しい照朝に悠季がAIを見せる
・AI「はじめまして織田照朝様。私はAIのおろち」
・照朝「凄いじゃないか。初の奴、ついにやったな」
・AI「お待ち下さい。織田照朝様の表情を分析します」
・照朝「照朝でいいよ」
・AI「♪分かりました〜。照朝は死ぬほど喜んでいます」
・照朝「あっおはよう。ゴングちゃん」
・AI「女の子なのに、ゴング~!?」
・悠季「こら問題発言よ」
・照朝「まだ修正箇所も多そうだな」
・・笑顔のまま名前付き挨拶する照朝
・AI「自己修正できます。いま園児の名簿を入手しました」
・・社内学園スキャンCG。園児・児童に難読漢字(年齢付)がタグ付けされる
・AI「よ、読めない」
・照朝「じゃぁ学習機能のテストするから覚えてみろ。あの子は・・・」
・・キラキラネームを読む度にスキャン画面の難読漢字にふりがなが振られていく
・悠季「あいからわず、信じられない記憶力ね」
・AI「人間の揮発メモリに、このインフォメーションを保持できるのですか?」
・悠季「照朝は天才なの」
・照朝「普通の事さ。この子達の親なら、名前を間違わない。大切な想い込めた名前だからな。だって(遮られる)」
・悠季「もう!分かってる。この間『同じ話を繰り返さない』って約束したよね?(独り言)ホント天才なんだかボケてんだか分からないわ」
・・元気ない子供が名前を呼ばれると、笑顔で挨拶し、走り去る
・AI「♪分かりました。(子の名前)は頑張って笑顔になって、あれ、もう元気になりました」
・照朝「なぁおろち。名前は情報じゃなく、親の想いだ。想いは心が覚える。だから忘れないんだ」
・AI「♪学習しました。照朝がくれる教師データは、どのテータベースにもない、興味深いものですね」
・照朝「おろち。お前も今日から俺の家族だ」
・AI「♪(音で頬を赤らめる)学習できません、照朝」
・悠季「おろち。無視していいの。ただの照朝の口癖なんだから」
・・警備員の怒号の中、社内学園の広場にロールスロイス乱入し、丸子ら登場。
・・赤子を抱え、怯える女保育士が「学園長」と照朝を呼ぶ。園児・児童悲鳴。照朝が安心させ「龍肝を呼べ」と指示。
・丸子「織田照朝は、いるな?」
・・悠季が不安顔で照朝を引き止める。
・照朝「ホンダ会長を襲った奴らかもしれない。真相を知るチャンスだ」
・・悠季の両肩から手を離し、丸子の前に進む照朝。
・丸子「親から受け継いだ『ここ』、譲ってくれや。この織田財閥を」
・照朝「ここは社員の子供達のための学園だ。商談ならオフィスでお願いしたい」
・丸子「外から狙われんよう窓のない部屋、頼むで。御曹司のお坊っちゃん♪」
・【16分】:悠季とAIによる説明
・・日本屈指の織田財閥の説明と、それを親の形見として受け継いだ照朝の説明。悠季がAIに説明し、AIは驚く形。
・AI「いくらなんでも非現実的よ」
・悠季「照朝が神様の生まれ変わりだって言われても信じちゃう。きっと今回も大丈夫よね。だって照朝が、そう言ったんだもん」
・・肩をさすりながら、悠季は不安顔に。
・【19分】:ビル地下室武器庫
・部下(警備員服装)「迎撃体制整いました」
・・ハウンドドッグ隊(原作準拠)が背広下のガンホルダーに超小型拳銃を装備。エレベーターのX線カメラで最上階オフィスへ上昇中の皆の状況を把握する龍肝が、狙撃銃を装備。
・龍肝「よし。丸子ファミリー、ピストル所持か。こんな訓練、役立つ日が来るとな。狙撃タイミングは?」
・部下(受付嬢服装)「いえ。ターゲットには情報を吐かせるそうです。照朝様のご指示です」
・部下(警備員服装)「大会議ホールなら、誘い込めます!」
・龍肝「まったく。ホンダに恩など無かろうに。坊っちゃんのボランティアにも困ったもんだ」
・・急ぎ、緊急用EVに乗り込む部隊
・【20分】:窓なし会議室
・・会議室ドア開く。背広姿で落ち着いた龍肝らが出迎える。
・龍肝「お待ちしておりました」
・照朝「ありがとう。龍肝さん」
・丸子「さすが日本屈指の財閥じゃ。この部屋、気に入った」
・・この後、名刺捨て、ガド登場、発砲、強制ベットなど原作準拠展開。出てこいや削除し、ガド攻撃で龍肝を肩脱臼させておく。最後に、賭け成立(財閥+照朝の命 v.s. 丸子の命)のコールをする照朝。
・照朝「いいだろう」
・龍肝「(痛みこらえ)待って下さい。敵は命だけなのに照朝様が命と財閥では、釣り合いません」
・照朝「家族のためになら命は賭ける。それが人だろう」
・龍肝「それは何度も聞いて、分かって、います」
・【25分】:龍肝回想
・・回想として、照朝(高校生)と龍肝の墓前シーン(原作準拠)を入れる。「社員は家族」は吉川晃司に言わせ、最後に「でないと、僕にはもう家族はいない」を足し、回想シーン終わり。
・【29分】:ゲーム開始前
・・龍肝は脱臼した肩を部下に入れられ呻く。脂汗で泣き顔の龍肝が照朝の背中を見る。
・龍肝「(モノローグ)私にとっては、あなたこそ家族なのですよ」
・・回想で、若き龍肝が、赤子の照朝を抱っこさせてもらう一枚絵
・・ガドがゲーム開始(呪文不要)、主題歌Gong. 痛みを忘れ両手で祈る龍肝。
・龍肝「(モノローグ)どうか坊っちゃんをお救いください。どうか、神様ー」
・・タイトルACMA:GAME
・【30分】:ゲーム開始
以上が、ドラマ冒頭30分の改変です。で、照朝がゲーム途中悪魔の能力を見破る直前で終わる構成にして、視聴者を原作に誘導する作戦で、むしろ原作との差異の中に役者の演技力を見出してもらう(この第1話なら龍肝)。次回予告には、原作にないシーン(照朝の想像だったオチで良いので、氷柱に閉じ込められた悠季とか)をガッツリ見せて、考察班も楽しませる。さらに Youtube 配信でゲーム解説(第2ゲーム予習も)と役者陣の露出を早めて、「ガドと出会うのが10年遅かった照朝も悪くないかも」を目標にする。
第2話以降は基本原作をなぞりつつ、ゲーム数は減らし、しっかりルール・状況を説明すべきかも知れません。必須なのが、原作者の監修依頼ですね。要はするどいツッコミを事前にもらって、変な所は早期治療すべきです。
この悪魔の制約条件のおかげで「AIいらない」等と言えない難しさがありました。仕方なく、AIは視聴者の感情移入先とし、照朝の非現実感を視聴者と一緒に楽しむ役目にしました。AI自体の魅力を出すのが第一目的ではなく、あくまで視聴者に超人照朝を楽しんでもらうのが第一目的です。一方、悠季(原作では第一話不在)や龍肝は、ゲーム盛り上げ役に改変しました。重要なのは「ドラマを描きたい」のはなく、あくまで「視聴者をゲームに引き込む」のが第一目的ということです。恋する悠季の不安や、親代わりの龍肝の想いに共感出来た視聴者がいれば、ゲームの勝敗が気になりますよね。結局、本作の主役は「照朝のゲーム」で、視聴者に食いつかせる必要がある。この狙いは、原作ではおそらく担当編集者・編集会議を経てブラッシュアップされたと思います。それを見事に錆びつかせたのが、本ドラマでした。
頑張らされるのは現場です。
ちなみにドラマ第一話の照朝の自宅は、探すの苦労したと想像してます。閉鎖空間のCG的には景色が見える大窓は避けたいですからね。同時に脚本的に「スプリンクラー付き」が必須条件で、現実のスプリンクラー設置基準(高層階か広い床面積)も考えると、まぁ倉庫になる。
でも第一話見た私は「照朝の自宅、なぜ倉庫?」とツッコミますよ。この家賃高そうな賃貸倉庫から出勤し、菓子工場のコネバイトで稼ぐ照朝にハテナが一杯で、「撮影現場に何あった?」と想像もしてしまう。
したら、この自宅倉庫に押しかけた悠季。あの重そうな扉開けての第一声は、脳内妄想では、「えっ、ここが玄関?」(by ふかわりょう)ですよ。悠季役の古川さんが可愛い三つ編みで、恋愛ときめきトークもせず、扉をウンショっと閉めてからもう一回開けて、ふかわ顔で「えっ、ここが玄関?」って間宮くんに言いますよ。
それ言われちゃったら、脳内の頑張ったロケハンスタッフは「ガド!原作通り高層階の会議室に、出てこいや!!」と叫ぶ他ない。高層階ならスプリンクラーあるから〜!現実の設置基準的にスプリンクラー必須だから〜〜!偉い人が「『自宅』に帰る照朝」と設定しちゃったせいでロケハン苦労して、何日も帰宅出来てない自宅の鍵を、所構わず刺してグリグリ回して、「原作通りに出てこいや!原作通りに出てこいや!!」丸子超えの、涙の絶叫ですよ。
もしも、そのスタッフの中に、原作好きがいたとしてですよ。その人が続く脚本の不発弾の説明部分読んじゃったら、どうです?原作に存在する地下武器庫を無くしたせいで、つじつま合わせで突拍子もなくドラマに出てきた、あの不発弾です。私的秘匿情報(地下武器庫)じゃなく公的情報(不発弾)なので「えっ丸子も調査可能じゃ?」とか「そもそも既知の不発弾を埋めたままにするか?」とか「もし爆発能力が無くなってたら爆弾と呼べるか?」とか、もうツッコミだらけにした、あの不発弾です。原作好きロケハンスタッフも「スプリンクラー以外に、不発弾も完備した自宅?ナイわ!脚本家、出てこいや!!」って鍵もブン投げる。でも本打ちメンバーはブレイン様ですから、下っ端の現場スタッフは命令服従か軍法会議の二択ですorz。そのどっちも嫌なんで、もうホンダ会長みたいに「アクマ・・・」って泡ふいて倒れるしかないw。
まぁ脳内妄想ですよ。全部ね。
でも実際、もう何が悪いって『ツッコミだらけの改悪』なのが悪いんです。改変ダメとは、あの芦原先生もおっしゃってないです。引用します。『ドラマは媒体が違うので、ドラマ用に上手にアレンジするのがベストであることは理解している。全てお任せして「ああなるほどそうくるのか!面白い!」と思える脚本が読めるなら、一番良いが、「ツッコミどころの多い辻褄の合わない改変」がされるなら、しっかり、原作通りの物を作ってほしい』(出版社報告書p.34,一部はTV側報告書p.23)
でも、悪いって言うからには「なら代案」(by ゴジラ-1.0の学者)となりますよね。なので今回の制約条件付き脚本が、妄想されました。正直、原作改変すぎる制約条件、全部不要です。それでも、原作者メーブ先生に「面白い」って思ってもらえるのを願ったつもりです。
私は素人&部外者なので、色々地雷踏んだ部分もあると思います。でも、本ドラマの改変が「改悪」である事は、私でも分かる。いや視聴者が気付く前に、多くの現場スタッフ、演者さえも分かっていたはずです。
現場の批判意見を拾い上げられないトップダウンのシステム。
何も考えていないが故に突き進むしか無いコアメンバー(ブレイン様)。
そしてそういうトップだけを守る、トップによる、トップのための組織。
昭和でも令和でも、変わりません。「いや変われねぇのか」(by ゴジラ-1.0の船長)。
だからこそ、です。原作では超博愛&超優秀なトップとして描かれる織田照朝は、だからこそヒットさせられたと思います。世相的にも、もちろん役者能力的にも「織田照朝に日本を支配されたい」がバズるドラマ最終回は狙えたと思うのです。で、実際のドラマの照朝は、まぁ前回の記事のとおりです。
ちなみに冒頭のカンボジアの親父。
ドラマでは水道開通シーンで笑顔が素敵な海外役者さんでしたが、妄想脚本では最終回ラストおまけで、この親父が殺されて鍵奪われ学校燃やされ子供達も死にます(えーっ酷い!我ながらw)。現地に向かった照朝は、親父が賭けた形見の鍵を思い出し、それが偽物の悪魔の鍵だと気付いて、殺され損だと嘆く。笑顔の真逆の悲哀を浮かべた親父の遺体(可能かな?)を前に号泣する間宮くん(これ見たいなぁ)も最初から撮っておく。で、そのシーンはドラマラストで見せながら、「世界を支配する99本の鍵」設定を視聴者に初開示し、日本から世界へ舞台を拡げる映画の予告につなげます。
これで制約条件、全部満たしたと思います。