#2 音読み対策は意味を考えることから【漢検準1・1級】
単語レベルでの理解が基本
新たに漢字を覚える際、単語レベルで覚えるか文字レベルで覚えるかの2択が迫られると思います。
あえて漢検配当外の字を例に挙げますが例えば「窳」という字を覚える必要が出たとしましょう。
単語レベルで覚える場合「苦窳(くゆ・こゆ/器物がいびつで粗悪な様)」など実際に使われている言葉を通して覚えることになります。一方で文字レベルで覚えるならシンプルに音読みが「ユ」であると覚えることになります。
どちらにもメリットはありますが、基本的に問題集などを通して単語レベルで覚えるのが得策です。
一般的な漢字の勉強でも同じだと思うのですが「漢字が読めるようになる」→「漢字の意味を理解している」→「単語の意味を理解している」→「書けるようになる」の4つのステップに分かれると考えております。
例えば分かれ離れることを意味する「乖離(かいり)」は日常でもしばしば目にする難しい字の言葉です。「乖」に対して音読みが「カイ」である字と認識している人より「乖離」の「乖」だと単語で認識している方が多いと思います。このように単語レベルで認識すると印象が強く残りやすいので多く覚えないといけない漢検では大いに活躍します。
さらに単語レベルで覚えていれば「乖く(そむく)」という訓読みや「乖背」といった他の音読みの熟語にも対応しやすくなると思いますしつながりのある知識として見えてくるはずです。
こういった関連づいた知識を身につけるためにも知らない漢字に出会ったら
読み方を調べる
漢和辞典などで漢字の意味を調べる
単語の意味を調べてその熟語での漢字の意味を推察する
単語を覚える
という順序で対処していくと後々いろんな場面で活きていくと思います。
応用問題は知っている知識の組み合わせ
例えば「乖舛」という単語に出会ったとしましょう。この単語自体を知っている人はいないでしょうし一般的な辞書には載っていません。
その時に先程の「乖離(かいり)」に加えて「舛誤(せんご・誤ること)」という単語を知っていたとしましょう。そうすると「乖舛」は「かいせん」と読むと推測できるはずですし実際正解です。
「乖舛」は「背くこと、違うこと」などを意味しますが上の2つの単語からの推測でなんとなく理解できると思います。
このように音読みの問題は知っている知識を組み合わせることになります。
「乖」は「カイ」、「舛」は「セン」など点の知識で覚えるより単語で覚えた方が間違えにくいですし覚える量も訓読みなどの話と合わせれば少なく済みます。
読み問題は書ける必要があるか?
よくある漢検の疑問に「読み問題を書ける必要があるか」というものがあります。
確かに上では漢字の理解のためステップに含めましたが必ずしも書ける必要はありません。前回紹介したように漢籍が出典である普通の辞書には載っていない言葉があるためです。そのようなものは書ける必要はありません。
準1級の難問や1級の合否を分けるレベルの問題を見ると常用漢字で構成された「読めるけれど難しい言葉」が多いです。難しい問題が必ずしも難しい字で構成されているとは限らないので書ける必要のある言葉は書き問題で出てきたものだけと切り離していいと思います。
出会った単語を書ける必要があるか明確な基準は難しいですが下のように認識しているとおおむね困りにくいと思います。
準1級勉強中の方は問題集の書き問題にも出てくる言葉
準1級高得点狙い〜1級初学者は漢検漢字辞典(漢字ペディア)の大見出し語(単語解説のある見出し語)
1級合格狙いの方は『広辞苑』や『精選版日本国語大辞典』どの中〜大型国語辞典に載っている言葉
連綿語に注意
これは参考程度の話ですが熟語の中には連綿語というものがあります。
基本的に1つの語(意味と発音)に対して1つの漢字が当てられるのでその関連付けで生まれた字がほとんどです。
しかし語の中には2つの音節からなるものがありそれには2つの漢字が当てられます。その時に生まれた字も存在します。
例えば何かを想起させられる時に使われる彷彿(ほうふつ・原義はぼんやりと見えること)や、突然の事件などを意味する「青天の霹靂」の霹靂(へきれき・雷のこと)などがそうです。
さらに2文字でセットで意味が生まれるものなので「彷」や「靂」など片割れだけにらめっこしても特に深い意味は特にありません。
(さまようことを意味する「彷徨(ほうこう)」の「彷」でもありますがこちらも連綿語なので共通している深い理由があるわけでもありません)
古くからある連綿語には表記の揺れが多くあるのが特徴で、「彷彿」は「髣髴」とも書きますし(変換で両方出ると思います)、「霹靂」も漢和辞典など見ると「辟歴」「劈歴」などとも書くようです。
ですので、上で漢字の意味を推察してみようと言いましたが、1字だけ見て何か見出せるとは必ずしも言えないのでご注意ください。(漢検漢字辞典を見るとそのあたりの考えを間違えているような記述があります)