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ブランド価値を上げる

長く、ブランドビジネスに携わってきて、
既存ブランドの「ブランド価値を上げる」という転換期を
2度、経験した。

(多分、多い方なんじゃないかと思います。貴重な経験に感謝)


過去を振り返れば、幾つかの業界を経験した中で、
最も長く携わったのが「ファッション業界」。

専門商社系のアパレル会社、
輸出もしている国内ブランドの会社、
海外ブランドの国内販売をしている会社。

この中で、
「ブランド価値を上げる」時期に
ちょうど関わることができたのが、
輸出もしている国内ブランドの会社と
海外ブランドの国内販売会社。


基本的に
「ブランド価値を上げる」=「価格帯を上げる」
この図式になる。

結果からいくと、
国内ブランドの方は、2年程度かけて成功し、
逆に海外ブランドの方は、数年かかっているが
未だ着地できていない。

ちなみに、海外ブランドの方は、
多くの方がその名前を耳にしたことがあると思われる、
世界展開し、ショーも開催するイギリスのブランド。


知名度の差はあれど、
競合している売場もある、この2つの
ブランドの違いは何だったのか。


単純に「ブランド価値を上げる」、といっても、
昨日まで3万円で売っていたものを
今日から10万円で売ればいいわけはなく、

絶対的に、「付加価値」を高めなければならない
そして、それをお客さまに納得して頂く必要がある。


両ブランドとも、メインとなる価格帯を引き上げた。
でも、両方上手くいったわけではなかった。

その違いは何か。
まさに、「お客さまに納得して頂く」部分に
どれだけの費用と労力を掛けたか


それと
「既存顧客、既存市場の主戦場が変わる」ことを
意識していたか、

の違いだった。


国内ブランドの方がどのように価値を上げていったかというと、

・商品力向上
・上位レーベルの先鋭化
・プレス活動の強化

これを行っていた。
当時、わたしは生産管理が主たる業務だったので、
その時はそこまで優れた戦略とは気づかなかったけど、
今振り返ると、さすがだな!と改めて思う。

「商品力向上」については、インポートのこだわった素材をつかったり、
今まではシンプルな部材を使っていたものを、より装飾性の高いものに
変えていき、違いがわかりやすかった

「上位レーベルの先鋭化」とは、海外展示会で発表する、
エクスポートメインのブランドで、よりデザイン性が高く、
希少素材を使った高額ラインを拡充した。
ここで、最高価格が上がることで、ブランドの潜在価値も上がる

そして更に「プレス活動の強化」と連動させる。

プレス活動とは、SNSでの情報発信だけでなく
雑誌などの紙媒体やウェブニュースや
ファッションサイトなどのウェブ媒体の担当者、
またはそこに関わっているスタイリストなどに商品紹介をしたり、
広告を出したり、店舗以外のところで消費者との視覚的接点を
増やす活動
のことで、

その担当者を増やしたり、有名レストランで食事会をするなど、
活動も強化していた。

費用と労力を掛け、2年以上は時間を掛けて成功。
そして、売上を落とさずに価格帯を上げ、更に伸ばすことができた。
まさに「ブランド価値を上げられた」。

しかし、顧客は変わった。
いくつかの店舗は撤退。
その分、新規出店もあった。意外だったのはECなどの通信による
販売チャネルの売上が大きく増えていった。

そして、良いか悪いかは別として、主たる客層の年代は上がった。
でも、「価格帯を上げるとは、そういうこと」として
状況を受け入れ、新たな市場環境で戦っていくことに
柔軟に対応して成功した。


一方、海外ブランドは

・商品力を上げる
・ディフュージョンラインを統合する
・広報活動を増やす

これを行った。
ここで、いくつか失敗が起きる。

「商品力を上げる」については、上質な素材を使うようになったが
一般の方が見て、わかりやすいものではなかった。

「ディフュージョンラインと統合する」とは、
かつてあった、「マークジェイコブス」の「マークバイ」や
「ケイト・スペード」の「ケイト・スペード・サタデー」みたいな
廉価版のブランドをメインブランドに吸収し、

廉価版の顧客にメインブランドの顧客になってもらうか、
もしくは、そこは切り捨てる、という戦略となる。

かなり知名度のあるブランド、それなりの歴史もあるので
日本市場での位置は盤石な反面、イメージもかなり固定化していたため
廉価版の価格帯の顧客は離れていった。

そして最後の「広報活動の強化」。
あえて「プレス」でなく広報活動としたのは、
さまざまなブランドとのコラボを増やしたり、
大きなアートイベントを開催したことはあっても、

「このブランドはこう生まれ変わります」という
宣伝性のある積極的メッセージの発信がなかったから。

コラボレーションもそのブランド側がネームバリューを
貸すようなものであったので、一時的な話題になった程度で
効果は限定的だった。


そもそも、戦略の部分で少しのズレが生じ、
更に実務への落とし込みの部分でもズレが生じ、
だからこそ、上手くいっていない。

正直、固定化したイメージを上げていくには
広報宣伝であるプレス活動に多額の投資が必要となる。
これなくして、既存の価値を上げるのは難しい。

90年代のユニクロのイメージをご存知の方であれば、
少し前のユニクロのイメージとの大きな違いを
ご理解頂けると思う。

そこには、旬のモデルや女優の起用だけでなく、
パリへの出店も含め、大きな投資があった。
有名デザイナーとのコラボも、間違いなく
ユニクロの価値は上がる。

そして、お客さまが理解し、納得しているから
今も伸びている。


海外ブランドで
本国に絶対的主導権があるブランドだと、

日本市場や日本側の事情を汲み取らず、
理想論ばかりを掲げることもあって、
上手くいかないこともある。

どこのブランドでも、
「イメージ戦略」と「マーケティング戦略」にズレを生じるのは
よくあること。

ズレてしまったら、直近は摺り寄せるか、
どれを優先すべきか折り合いをつけ、

期限を区切って、再度、戦略を組み直せばいい

なぜなら、長い時間をかけて培ったブランドイメージだとしたら
それを更新するにも、同じく長い時間がかかるはずだから。



最後までお読み頂き、ありがとうございます。

マネジメントでお悩みの方、
管理職になって日が浅い方、
上司の考えに「?」と思っている方、
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などなど。

お仕事でそんなお悩みを持たれている方に向けて
発信していきたいと思います。

 きのした

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