四人家族
「母さんが、怪我をした。」
珍しく弟からのLINEによって、知らされた。
生きた心地がせず、慌てて実家に電話した。母本人が出て、どうやら健康ランド(公衆温泉施設)のミストサウナで気を失い転倒、気づいたら左手首を骨折していた、と。
ホッと安堵したのも束の間、必要と思われる食材、雑貨をネットで見繕い、実家へ送りつけた。
休みが取れた今日、夕方になって実家を訪れることにした。
実家近くのスーパーで買い出しすると伝えると、父と弟が入口付近で待機してくれていた。
三人で買い物など初めてで、心がザワザワした。
母に、万が一のことがあれば、これは日常になるかもしれない光景なのだ。
買い出しを終えて実家に帰ると、三角巾で左手を吊っている母が出迎えてくれた。その左目周辺は、殴られたボクサーのように青紫色をしている。
痛々しい姿から目を逸らし、私は淡々と夕飯を作り始めた。
買ってきたお惣菜と、私が作った豚汁で、父、母、弟、私の四人揃って晩御飯。私も弟も、子どもたちはいるのだが、今回は彼らを除いて、シンプルに四人。何十年ぶりだろう。
ああ、そうだったね。四人家族だったね。急に昔を思い出して、泣けてきそうになったけれど、何事もなかったように和やかに過ごすことに徹した。
帰りは、母が弟に、私をクルマで家まで送るように言った。電車でも、全然問題なかったけれど、母の想いを尊重した。
弟と二人で車に乗る、というのも初めてだった。お互い気を使いつつ、当たり障りない会話をしながらも、最後は
ありがとう
と言った。離れている私、実家にいる弟。お互い、やるべきことをやっていこうね、と無言で語り合った。
今度は、母の服を持って、近いうちにまた行こう。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?