エンジニア/スタートアップのための円安トーク | 書き起こし #ナウキャスト
こんにちは、ナウキャストの木下です。
ナウキャストでは定期的にTwitterスペースを実施しています。この記事は9月14日に配信された「エンジニア/スタートアップのための円安トーク」のTwitterスペースを文字の形にしてお届けします。
本企画は約60分の内容ということもあり少し長くなりますが、是非気になるセクションだけでもご覧いただき、少しでも多くの方に知っていただくきっかけになれば嬉しいです!
オープニング
辻中:よろしくお願いしますー!完全なただの思いつきでゆずたそさんに声をかけさせていただいた感じなんですけど。
ゆずたそ:ちょうどすごいですね、今の円安。だいぶホットな。先週声かけていただいて、ほうほうと思いながらこの日にしましょうかっていう調整をしたら、まさかのこの大きな変化のタイミングで。良いか良いのか悪いのか、わからないですけど。
辻中:そうですね。最初一応軽く自己紹介しておきましょうか。
私の方から自己紹介させていただきますと、ナウキャストの代表を務めております辻中と申します。バックグラウンドとしては、ゆずたそさんはバリバリデータエンジニアで、エンジニア目線で参加していただいてますが、僕はどちらかというと逆に金融バックグラウンドです。元々日銀にいて、ナウキャストに移ってきて今ナウキャストの代表を務めているっています。
今日はどちらかというと金融の人間から見た、為替の円安ってどうなんだろう、あるいはスタートアップにとっての円安ってどうなんだろうみたいな話ができればと思ってます。ゆずたそさんよろしくお願いします。
ゆずたそ:はい、ありがとうございます。ハンドルネームで普段活動していますゆずたそと申します。データエンジニアリング系の分野で、データの分析をするためのシステムですとか、データ分析周りなんかで普段活動しています。何冊か書籍も出版していたりしまして、比較的この分野の中ではアウトプットなど、情報発信頑張ってる方なのかなというふうに自負しております。
元々データエンジニアリングという分野でもそうですし、昔リクルートグループでエンジニアリングの内製化とか、ヒトモノカネ情報の管理なんかをやっていた時代もありまして。そういったときにやっぱりコスト周りの話ですとか、海外のサービスを使いたいとか、ライセンスを使いたいとかそういった話なんかも担当してした時期なんかもあります。
そういったバックグラウンドを踏まえて、エンジニア部署、エンジニアの開発現場ではこんな影響があるんじゃないかとか、さあこういうのをどうしてこうみたいなところを、エンジニアリングの立場からディスカッションできればとに思っております。どうぞ皆様よろしくお願い致します。
辻中:ありがとうございます。ちょっとさっきも話しかけてましたけど、マジで円安すごく進んでいるんで。先週これやろうってSlackでご連絡してから、まさかここまでタイムリーな状況になってるとはちょっと思わなかったですよね。
ゆずたそ:乱高下というか、ちょっとタイミングによっては戻ったりするんじゃないの?とか、そしたらこの会つまらなくなっちゃうねとか話してましたけど、こんな面白いことになるとは。
辻中:そうですね。ゆずたそさんの周りでも円安の話をする機会ってありますか?
ゆずたそ:そうですね、個人で作って放っているパブリッククラウドからの、いつも月末に”いくらぐらい突破しましたよ”っていうアラートメールとかがもう早くも届いたりとか、そういうのはありますね。
辻中:なるほど。元々この話すると面白いかなって個人的に思ったのが、やっぱりスタートアップ、あるいはスタートアップで働いてるエンジニアの方って、結構今パブリッククラウド、しかもそのAWSとかGCPとか外資系のパブリッククラウド使ってる方が多いと思うんで、ドル建ての支払いがどうしてもあると思うんですよね。
そうするとどうしてもそのドル建てのコストが、円建てだと円安になって増えちゃうってあると思うので、それがAWSとかクラウドのコスト管理とか、開発してるときの開発の仕方とかに響いてくるんじゃないかなっていうふうに思ってですね。
ちょっとその辺り僕は個人的に今日ゆずたそさんに話聞けると嬉しいなって思ってます。
ゆずたそ:承知しましたー。アジェンダというか流れとしてはどうしましょうか、今日の話。
辻中:そうですね、最初為替が今どんな感じになってるのっていうのとか、何でこうなってるのみたいな、そういう話をするとかですかね。
ゆずたそ:じゃあ最初にそもそも今為替がどういう感じになってるのかというのを、普段ニュースを見てないエンジニアたちに、辻中さんの方から解説いただくというところからスタートしてもらって、どんな影響があるのかとか、こういう点がやばいんじゃないか、あるいは逆にこういうチャンスもあるんじゃないかみたいな話なんかをした上で、今後どんなふうに対策なのかアクションを取ってくのか、みたいな話ができればと思いますね。
辻中:そうですね、わかりました。
直近の為替の状況について
辻中:ちょっと僭越ながら、今の為替の状況について解説させていただくと、今日、今この時点で多分ドル円が143円ぐらいになってて。いやすごいっすよね。
今年の前半で110円とかで、今143円、昨日の夜時点だと144円の後半ぐらいまでいってたかなと思うんですけれども。この水準で為替が動いたのって、1998年とかになるので、24年前になるわけで24年ぶりの円安っていうのが進んでいて、これはなかなか歴史的な出来事になってるのかなと思います。
ゆずたそ:そうですね、23歳未満の人からしたらこれ初ですよね。
辻中:そうですよね。だからずっと今までドル円って、どんだけ円安になっても120円ぐらいで、むしろ100円切ったり70円80円とかの時代を知ってる人の方が、今の若いエンジニアの人とかスタートアップの人とかだと多いんじゃないかなって思うので、結構こんなの初めて見たよみたいな感じですよね。
ゆずたそ:なんかざっくり×100ちょっとしとけば、まあいいんだろうみたいなイメージはありますね。素人目線で言うと。
辻中:そうですよね。1万ドルとか、1000ドルとか、そういう請求書を見たらとりあえず100掛けとけばなんとなくいいかなという。
ゆずたそ:そうですね、時期によってちょっとはみ出るかなぐらいに見てたけど、極端なこと言えば1.4倍ですからね。100じゃ全然足りないですよね。
辻中:そうっすね。さっきの話に紐付けて言うと、単純にそのクラウドを同じ使い方で使ってると、ドル建てで普通に同じ金額が請求されて、でもそれは円建てで言うと、今年の初めと今とで比べると3割ぐらい高くなる。
ゆずたそ:何もしてないのに3割コストが上がったってことですね。
円安による開発への影響
辻中:いや本当に。ただ真面目に仕事してるだけで3割コストが上がって、どうなってんだみたいなになっちゃう。これって、実際開発の仕方とか、クラウドの使い方みたいなところに対して、結構インパクトしてきたりとかしないんですか。
ゆずたそ:これ、あると思いますね。いろいろな観点があると思ってて、一つはまさにインフラやライセンスの値上がり。直接ドル建てで請求するものは、跳ねてしまう。それこそチームによってはコストの管理かな、売上変わらないのにコスト3割増しになっちゃいますし、そうすると僕なんかもそうですけど、アラートが飛んできたりとか、改善しようにもどうしたしたもんかみたいになっちゃいますし。
あと会社によってもしかしたらあるのが、いくら以上だと資産管理しなきゃいけないとか、何年かにわたって減価償却なきゃいけないみたいな話があったときに、ギリギリ高スペックな端末が20万とか30万以下で済んでたのが、ちょっと足出ちゃうってなると、いい端末買うにも大きな会社さんとかですとこれまでの手続きだと話通せなくなくなっちゃうとか。
いくら以内じゃないと困りますって言われても、かといってね、低スペックなPCで開発しましょうって言われると、エンジニアみんな嫌がりますし。とかってなってくるとなかなか。(笑)そういう観点もあるかなと思いますね。
辻中:そうっすよね。先週iPhoneの新型が発売されて値上げを大幅にされて、結構ニュースになってたかなと思うんですけど、エンジニアの方だと結構Mac使ってる方も多いじゃないですか。やっぱMacとかもかなり高くなってたりするんですか。
ゆずたそ:毎日Appleのサイト見てるわけじゃないのでちょっとなんとも言えませんが、結構こういうのはある気がします。
辻中:なるほどですね。まぁだとて、「ごめん、ちょっとスペックを落としたPC使って」とかってなかなか言えないですよね。
ゆずたそ:どうですか辻中さん、まさにそれこそ一つの会社の社長さんやってらっしゃるわけですけど。開発チームのメンバーたちに「低スペックのPCで明日からよろしく!」とはいえないですよね。
辻中:言えない(笑)ちなみに若干宣伝ぽい話になるんですけど、うちの会社は実はこの円安結構追い風な部分がありまして。
ゆずたそ:といいますと?
辻中:多分日本のスタートアップで結構珍しいんじゃないかなと思うんですけど、ナウキャストって結構海外売上も高いんですよ。半分ぐらいが海外売上で、ドル建ての売り上げも結構大きいんでむしろ結構ドルで売上入ってきて、もちろんクラウドの部分はドルでコストを払わないといけないんですけど、総じて見てむしろ収益的にはプラスになるんですよね。
ゆずたそ:何もしなくても3割増しということですか!(笑)
辻中:3割まで上がらないけど、でも基本的には円安メリットの方が大きいです。なのであんまりこれ言うと社内のお金の使い方が緩んじゃうんでよくないかなと思うんですけど、うちは”コストが上がっちゃってるんで使う機器を我慢してください”とか、そういうコストを絞る方向にはあんまり向いていかないんですね。これもしかしたら結構珍しいのかな。
ゆずたそ:そうですね。やっぱグローバル展開しているサービス、会社さんも当然いらっしゃるわけですけど、やっぱり多くのサービスは国内がメインのお客様みたいなイメージはありますね。
辻中:そうっすね。どうしても日本のスタートアップって、なかなか国内以外でお客さんを取れてない部分はあると思うんで、うちの会社結構特殊なんですよね。BtoBで、しかもデータの領域でビジネスやってると、データ活用めちゃめちゃ積極的にやってるような会社ってどちらかというと外資系だったりとか、海外の会社さんが多かったりするんで、そうするとドル建てみたいな形になるんですけど。やっぱり結構珍しいのかな。
ゆずたそ:そうですね。グローバルに価値提供できますっていうだけでも、実際に採用の宣伝になりそう。
エンジニアの海外進出
辻中:一部の報道とかTwitterとか見てると、さすがにちょっと言い過ぎかなと思うんですけど、日本がこれだけ円安になってくると、エンジニアのいわゆるオフショアみたいな。今までは日本とかアメリカの会社からインド、ベトナムとかそういうところにオフショアするみたいなのが、結構流行ってた部分っていうのがあると思うんですけど、むしろここまで円安になると日本のエンジニア安くね?みたいな話になって、日本に発注するオフショア的にやるって、実際あるもんなんですかね。
ゆずたそ:それ自体いくつかいろいろと言いたいことがあってですね。
一つが、そういうエンジニアの方のブログとかは、ちょっと前からよく投稿されている方はいらっしゃるんですよ。海外の案件取ってきて国内フリーランスっぽくエンジニア活動してるんだけど、海外の会社さんとツテあって、やっていくと向こうの基準でお金もらえてウハウハだよみたいなことを言ってらっしゃる方とか。
個人開発とかかな。普段フリーランスっぽく自分の趣味のサービスを作ってたら、使ってる技術がきっかけでその技術に詳しい人を求めてる会社さんからたまたまLinkedInとかでメッセージもらってみたいな。たまに見かけはするんですよ。なので、そういう形では一定いるんだろうなというのが一つと。
もう一つがですね、僕ちょっと前の話なんですけど、試しに海外の案件とってみようと思ってそういうマッチングプラットフォームみたいなところに突撃したことがあったんですよ。
そしたらアフリカのITコンサルタントとバトルになって。アフリカのITコンサルタント、めちゃくちゃ安いんすよ。その特定の国がどうってわけじゃないんすけど、やっぱ向こうは日本よりもまだまだ物価が低いのはあるよと。そういった方って、信じられないくらい安いというかちょっとその金額出されると、こっちは生活できないわっていうような金額で出してるので。
で、スキルどうなんかっていってその人のプロフィール見ると、割とグローバルに有名なコンサルティング会社で何年か働いてみたいなバックグラウンドで、普通にしっかりしてるんですよ。
一定グローバル水準持ってるみたいな人が、その人の国の価格で戦ってたりするんで、それは直接対決は無理だというのがあったりもして。
いろんなケースあると思うんですけど、3割減ったぐらいだとそこと戦えない。うまくやんないと駄目だなって思ったのが正直なところですね。なので、うまくやった人もいれば、一方でまだまだ国と国同士間の物価の違いとかを考えると、まだまだ価格だけで戦うのは厳しい相手もいるよというのが、少なくとも難しいところだなと思ってますね。
辻中:そうですよね。確かに3割って僕ら生活していく上では結構大きかったりとか、iPhone買うとしんどいなとか思いますけど。とはいえ、その3割4割とか、そのレベル感じゃないぐらい物価水準の差がある国ってどうしても存在はすると思うので、その物価水準で開発コストのところを勝負しに来られたら、どうしても競り負けちゃうっていうのはありますよね。そこで勝っても果たしていいのかみたいなところもあるとは思いますけど・・
日本のエンジニアのレベルについて
辻中:ゆずたそさんって、これまでいろんな会社さんとお仕事されてきて、中には海外展開とか、それこそ外国人エンジニア比率が高かったりとか、海外拠点あったりとかする会社とお仕事する機会も多かったんじゃないかなと思うんですけど。よく言われるコスト対比、日本のエンジニアは結構優秀とかクオリティが高いとか、そういうふうに言われるのって実際事実だと思いますか?
ゆずたそ:まぁ人によりけりな気が。一定以上になると、もう正直わからんっていう感想ではありますね。ちょっと前に、2018年ぐらいかな。フロリダで当時世界中のマッチングアプリの開発の人たちが集結するイベントみたいなのがあって、そこでちょっといろいろと向こうのデータサイエンティストとも話したりしたんですけど、彼らが「俺だったら半年でこんくらいでやってやるぜ、どや!」みたいなこと言っているのを聞くと、別に半年だったら俺もできるわ、みたいなのは結構あったりもして。普通にメンバーでもできるよってあったりするんで。ちょっと正直わからないですね。
どっちが劣ってるって思ってることもないですし、そこでもしかしたらコストの差とかが出てくるんですかね。ちょっとなんとも言えないというのが、正直なところですね。
辻中:なるほどなあ。必ずしも国の単位でね、こっちの国は優秀な人が多い、こっちの国はそうでもないみたいな色分けができるものでもないんだとは思いますよね。
僕なんでそんなことを思ったかっていうと、よく言われるって話もあるんですけど、うちの会社って海外のファンドのお客さんが結構多いんですよね。海外ファンド、例えばニューヨークにある金融機関の、例えばデータ基盤の構築をやってる人とか、あるいはスクレイピングの仕組みを構築して実際それのメンテナンスをやってるみたいな人の給料の相場感を聞くと、結構普通に月に2万ドルとかの給料もらってるとかで。そういう話を平気で割と言ってたりとかしていて、社内でもよく話すんですけど、どう考えても月2万ドルでこの仕事、そんな・・すごいことやってなくね?みたいな。
ゆずたそ:そういうのありますよね。(笑)
辻中:あるんですよね。だからその辺りとかは結構円安で変わってくるかもしんないっすよね。
ゆずたそ:同じことやってもやっぱUS行っただけでいくらみたいな、まあまあよく聞く話ではありますよね。
辻中:そうですね。結局だからピザとコーラで45ドルとかの世界観で仕事してらっしゃるような人たちだと思うんで、実質賃金というか、実質的な購買力で見ると2万ドル月額って言ってもそんなに大したいい生活ができてるわけじゃないのかもしれないんですけど。でもだったら日本でその1万ドルで仕事するから、日本でやらせてもらったらいいんじゃないかと。
ゆずたそ:やっぱ外貨を取りに行くべき説はありますよね。
辻中:そうですよね。ゆずたそさんはそういう海外で働いてみようとか、海外進出みたいなのとかって考えたりとか、考えてる人周りにいらっしゃったりとかしないんですかね。
ゆずたそ:はい、自分もそんな感じで突撃したこともあります。興味がないってことないですね。ただちょっと1回悔しかったのが、自分が書いた記事をまんま英訳しただけのやつがくそバズってて。
辻中:えーーー
ゆずたそ:勝手に紹介されてて、このパートはこいつから引用したよとか書いてあるけど、別のパートも明らかに私の定義で。グローバルのデータレイク、データ基盤まわりの話なんですけど、データレイクとはこういうもんなんだよとかが書いてあって、それは別のパートで日本のこいつのこの記事をこの部分で引用してとか書いてあるんですけど、データレイクもそれ僕の説明なんですよ。
グローバルとかクラウドベンダーが紹介してるデータレイクの定義と、私がよく日本向けに紹介してる定義って若干違うので、見たら一発でわかるんすけど。結構殴りたくなる・・。それを国内の海外記事紹介アカウントみたいなのが紹介してて、それ俺のやがな!みたいなのを思ったことはありました。
辻中:えー・・それなんか文句言わなかったんすか。
ゆずたそ:いやまぁ結構よくあるという感じで。元々英語で発信しなかった方の負けみたいなところはちょっとありますよね。言ってそれ消したとして、みたいなところありますよね。
これ俺がやったんだ!とか後から言っても、別にその当時その記事がバズって直後に読んだ人たちが、そうかこいつの方がいいんだって思うことあんまないでしょうし。
なんかそこはね、もっと普段から初めから外貨取るぜみないな感じで、情報発信しないといけないなっていうのは思ったところですね。
辻中:そうですね。言語的な壁を、どうしても。
社内公用語の英語化について
辻中:うちの会社もあれなんすよ、昔めちゃめちゃドメスティックな会社で。
さっき結構外貨稼いでますって話したんですけど、昔はめちゃめちゃドメドメな会社でして。社員ももちろん全員日本人ですし、Slackも日本語ですし、営業資料を英語にするときは外部の翻訳会社にお願いして、みたいなこととかをやってたりしたんですけど、やっぱり優秀な人を採用したいってなったら言語の壁取っ払っていかないと駄目だなという話になって。
2018年ぐらいに初めて日本語あまり喋れない台湾人のエンジニアを採用しまして、そこから社内を全部公用語を英語にして、お客さんもどんどん海外開拓してみたいなになって、今社内公用語もがっつり英語ですし、3割ぐらいの社員が外国人だったりしますね。
ゆずたそ:それでいうとちょっと気になってるのが、どこの会社とは言わないんすけど、公用語を英語にした後に何が起きたかみたいなところでちょっと思ってることがあって。外資に行くための踏み台にしかならない説がちょっと。
英語も使える国内の会社に行きます、元々一定の選考通るくらいの技術スキルありますと。ただ日本人でそんなにグローバルで働いた経験はないよという人が、一回そこ行って英語でのディスカッションや働き方に慣れていくと、先に次になにがあるかっていうと、外資に行って給料倍になってボーンみたいな。
そういう光景を一部見たことがあったりなかったりして、Hiringの対象が増えるという話とあわせて、そういう副作用もあるのかなと。別に全員が全員そうじゃないでしょうしだからやめるべしとは言わないですけど、そういう事例も見たりして何がいいんだろうなとちょっと悩んだりはしましたね。
辻中:おっしゃる通りでぶっちゃけていうと、うちから外資のいわゆるGAFA的なところに転職した人とか、本当に海外移住しちゃって海外の現地のプロフェッショナルファームみたいなところに行ったたメンバーもいたりして。その意味で逆に人材獲得競争が厳しくなったり、定着に対しての難しさが上がったりする部分はあるはあるんですけど。
でもさっきおっしゃった通りで、だとてじゃあ日本のままでやるのか、日本語のままでやるのかみたいな話はあると思いますし、単純に結構楽しいっすよやっぱり。社員が3割ぐらい外国人で、普通に英語で仕事してるって環境が、僕は少なくともやりがいが常にプラス2割ぐらいになってるみたいなところありますしね。
ゆずたそ:いいですね。
辻中:多分うちのメンバーはみんなそういうふうに思ってるんじゃないかな。結構嬉しいんですよ。うちの会社入って、全然英語喋れなかった人がすげえ苦労して外国人メンバーと一緒に英語でプロジェクトを回したりして、気がついたらめちゃめちゃ社内ミーティング英語でファシリテーションしてるみたいなのを見たときに、会社やっててよかったなと思いますよね。
ゆずたそ:あーいいですね。そしてその結果、外貨を稼げる会社になっていったということですか。
辻中:まだ言うてね、日本から海外の会社と仕事してるっていうだけなので、本当の海外進出っていうところまではまだまだやってかないといけない部分は多いだろうなと思ってはいますけど。でも一般的な日本のスタートアップと比べるとかなりグローバル展開してる方ではあるかな。
エンジニア/スタートアップの海外展開
ゆずたそ:どこまで話せるかわからないですけど、そういう海外の仕事を取って、案件なのかな、お客さんを取っていった術とかあったら知りたいですけどね。言える範囲で。
辻中:なんだったらnoteとか発信してるんでよかったら見ていただきたいなと思うんですけど、僕ら2018年ぐらいに結構ビジネスのピボットしてまして。それまで国内が主体だったんですけど、データをビジネスに活用するっていうのを本気でやってるところって、海外なんじゃないかと。
特に金融の世界だとそうだったんですよね。っていうのを考えて、あるときふと思い立って、ロンドンとかニューヨークとかそういうところでやってるデータのカンファレンスみたいなものに出ていきました。
それをきっかけに海外のクライアント200件ぐらいにうわーっと、海外だとデータ活用をどういうふうにしてるのか、金融においてどういうデータが求められているのか、日本だとそういうデータのニーズがないのか、みたいなめちゃめちゃヒアリングして。
そうしたら、結構僕らか注力してるクレジットカードデータとかPOSデータとか、そういったものニーズがあるっていうことがわかったり、サービスこういうふうにしてほしいみたいな話とかがわかってきたんで、それを実際作って展開したら、サブスクリプションで海外の顧客から契約が入るようになったっていう感じですね。
ゆずたそ:なるほど。つまり、エンジニアの立場に置き換えると、海外のカンファレンスか何かに出ていって、発信してみて、今なら3割4割安だよと言って、会社から声かけてもらい、何が求められてるのか知り、俺こんなことできるよとLinkedIn登録すると。
スタートアップのやることは海外の自分の分野のカンファレンスに出て行き、うちの会社こんなことやってるよと言って、今なら4割安だよと言って案件取ってくると。
辻中:そうですねー。そうですねって言いながら、価格で勝負したくないところはありますけど。
でも絶対エンジニアの方も海外のカンファレンス、特にゆずたそさんに言うとマジで釈迦に説法ですけど、例えばデータエンジニアリングとか、あるいは僕の領域でいうとオルタナティブデータの領域とかって、圧倒的にアメリカのエコシステムの方が発達してるじゃないですか。
パブリッククラウドどこもアメリカのスタートアップから来てるわけですし、最近出てきてるSnowflakeとかああいうのも基本的には米国の会社になっていたりするので、やっぱりアメリカのベストプラクティスみたいなものを、早い段階で吸収しに行く、それをしかも肌身で感じるっていうのは、やっぱエンジニアだからこそ必要だし、スタートアップだからこそ必要なんじゃないかなって個人的には思いますね。
ゆずたそ:完璧なまとめですね。(笑)
辻中:ただ為替の話なのかみたいな、ちょっと・・
ゆずたそ:為替の話をするならやっぱ今なんでこんなふうになってるのかと今後も続くのかは、元々聞きたかったことではあったけど、完全にさあどうやって外貨を稼ぐかって話が。
辻中:確かにオーディエンスのニーズを全く踏まえない・・(笑)
為替円安なんで起こるのかとか、あるいは今後どういうふうになっていきそうかみたいな金融の話は、それはそれでね、どっかでまたできればなあと思いますけど。
ちなみに結構昨日某マクロファンドの人と話してて、やっぱこれで終わりじゃないっていうか、ドル円は140円台で止まらないんじゃないかっていうふうには言ってましたし、僕もそう思います。
ゆずたそ:それでどういうシナリオが?多分何本かありますよね。より円安になっていくシナリオとか、戻るシナリオとか。根拠とかあったりするんですか?どういうロジックでこうなりそうとか。
なぜ物価が上がると利上げをしに行く?
辻中:そうですね。まず今起こってることって基本的にはドル高だと思ってて。円安というよりはドル高。ユーロもめちゃめちゃ下がってますし、ウォンもめちゃめちゃ下がってますし、基本ドル以外めちゃめちゃ弱くはなってるんですよね。
それでなんででドルが強くなってるかっていうと、基本的にはFRBが利上げをしているっていうところがあります。元々みんな利上げはするだろうとは思ってたんですけど、店舗と最終的にその利上げを仕切った後の一番ピークっていうのが、これほどまでだとは思ってなかったっていうところがあるんだと思ってます。で、おそらくアメリカのインフレ率って昨日発表されたところで言うと、8.3%っていう形になっていて。
ゆずたそ:えぐいですねー。
辻中:いやもうめちゃめちゃ8.3%とかマジでえぐいです。普通に10%ぐらい常に何でもかんでも値上がりしてるみたいな状態っていうことなので。
このインフレが沈静化するまでは基本的には、どんどんどんどんFRBは利上げをし続ける。で利上げすると、アメリカの方がある種金利が付くっていう状態になるので、世界各国のお金が、どんどん例えば米国債を買おうとか、アメリカの株買おうとか、外貨預金を作ろうっていうような形で、ドルにみんなお金を変えるっていう動きが強まっちゃうんですよね。
ゆずたそ:えっと、順番としてはまずアメリカの物価が上がっていますと。で、どんどんモノの値段が上がってるからそれに対して中央銀行が利上げをしていくと。ただそこのロジックのギャップをもしかしたら、金融畑じゃない人は一瞬どういうことなの?ってなっちゃう気がするので、なぜ物価が上がると利上げをしに行くのかって話はちょっと補足してもらうとありがたいかもしれません。
辻中:そうですね、基本的にはどこの中央銀行も物価の安定をするっていうのが、ある種経営理念というか、それをやることがミッションでできている組織になるんですけれども、大体2%ぐらいの物価上昇率っていうのをターゲットに置いてるんですよね。
ゆずたそ:はい、インフレターゲットってやつですね。
辻中:そうです。物価を抑えるっていうのは方法としては二つしかないんです。一つはよく経済学の教養科目とかであったかもしれないんですけど、需要と供給って需給で決まるっていう。供給を増やすか需要を減らすかどっちかしないと価格は下がらないんですよね。
基本的には中央銀行がコントロールできるのは供給ではなくて、需要です。
例えば、住宅ローンを組んで家を買うとか、あるいは金利が高い低いっていうことによって企業の投資活動を増やしたり減らしたりするっていうのをコントロールする。それって全部経済活動の需要面っていうのを基本的には増やしたり減らしたりするっていう活動になってるんですよね。
ゆずたそ:住宅ローンがあるからラッキー、家買おう!とかそういう話ですね。
辻中:そうです。金利低いから家買おうみたいな、そういうのを中央銀行は促進したり、逆に抑制したりするわけです。今のアメリカの場合は、あまりにもインフレ率が高すぎるんで、需要を抑えようっていうことで金利を引き上げるっていうことをFRBはやってらっしゃる。
ゆずたそ:住宅ローン借りてもめっちゃお金返さないといけないと、ちょっとこんなたくさん返すのは勘弁してくれっていうんで、家買うのはやめとくか・・っていうふうに思わせるみたいなのか。
辻中:おっしゃる通りですね。それでそれがしばらく続くんじゃないかと。
ゆずたそ:そういうことなんですね。物価が上がっていて、供給が変わらないのにみんなが欲しい欲しいと言ったら、当然売る方は高くても買ってくれるやつがいるだろうから値上げしていく、みたいな感じですかね。
辻中:まさしく。
ゆずたそ:じゃあみんなが欲しい欲しいっていうのをちょっと一旦抑えようということで金利めっちゃ上げると。
仮に住宅ローンだったら、住宅ローンで借りたらいっぱいお金を返さないといけない、じゃあ家買うのはちょっと今やめとこうって思わせて、買いたい人たちを減らすと。そうすると買いたい人が少ないから、売る方もたくさん価格つり上げても、買うやつがあんまいないんだったら値下げしようかな、みたいなことを国家規模でいろんな産業で行うということですね。中央銀行が目指している2%ぐらいのインフレまで。
辻中:そうですね、おっしゃる通りです。
ゆずたそ:でそうすると、金利が上がっていくと。他の貨幣に比べてドルの金利が上がっていくと、じゃあ日本で銀行に預けててほぼゼロになるよりも、そっちを預けた方が何%上がるんだったらそっちのほうがいいじゃないかということで、ドルに換えてこうぜとみんな思うと。
ってなると、みんながみんなドルを買って、みんながドル欲しいっていうんでどんどんドルの価格が上がっていって、一つのドルを買うために必要な円が増えていく。ということは円安になると。合ってますでしょうか?
辻中:まさにおっしゃる通りですね。
いつまで円安は続く?
ゆずたそ:じゃあ次の質問は、それがしばらく収まらないんじゃないかとさっき言ってらっしゃったんですが、そうするとそれ何でなん?とかどのくらい続くの?みたいなところですね。
それがわかったら誰も苦労しないとは思うんですけど、どんなことが言われてるのかどんなことを言う人がいるのかみたいな、そのロジックは聞いてみたいですね。
辻中:そうですね、例えばこの間2週間前ぐらいですかね。FRBのヘッドであるパウエルさんがおっしゃってたのは、物価上昇っていうのは供給要因なんだと。ちょっとさっき言った話と逆行してわかりにくいんですけど、供給要因になってるよねっていうことを言っていて。
それはどういうことかっていうと、例えばコロナが来たから仕事がしばらくできない人が一定数いらっしゃったり、例えばリタイアを3年後に予定していた人がコロナで働けなくなったから早めにリタイヤしようとか、あるいは仕事をする人がどうしてもコロナによって減ってしまったっていうところ。あとは今まで中国とかロシアとか、要はモノとかサービスを提供するのが、必ずしもアメリカの場合はアメリカの中から来なくても海外から輸入すればそれを消費することができた。で、この輸入っていうのはある種、供給になりますけれども、この外から安いものを輸入してっていうのが、今ウクライナの問題とかがあってかなりしづらくなってきた。
だからいわゆるグローバリゼーションの反転みたいに言われたりすることなんですけれども、今までだったら元々モノとかサービスを供給してくれる人がいたのが、それがどうしても減ってきてしまうっていう状態が起こってしまって。さらにそこで、エネルギーの禁輸、政治的に輸入しないみたいな意思決定をしたことによって、さらにそういったことが加速してしまうみたいなことがあって。どうしてもその供給が減ってきてしまうんですね。
でも、供給を増やすっていうのはなかなか一朝一夕にはできないので、じゃあどうすればいいのかっていうと、供給と同じぐらい需要が減るように需要を落とすっていうことをやらないといけないんですよね。ただこの需要を落とすっていうのはそんなに簡単じゃないっていうところがあります。
どれだけFRBが金利を上げたとしても、久しぶりにコロナが終わって旅行はやっぱり引き続きしたいし、久々に旅行行くんだったら車買わないといけないし、車は別に金利が多少上がってもまだ買いたい・・みたいな形で、多少金利が上がってもなかなか需要が落ち着かないっていうところがあって、引き続き物価の上昇圧力っていうのは続いてしまっているっていうところかなと思いますね。
ゆずたそ:なるほど。ってなってくると多少小手先というとちょっと失礼かもしれませんが、金融政策で一部対応してはいるものの、大元の供給の部分が一定解消されないことには、あるいは需要が一定落ち着かないことには、なかなかこの構造、状況自体が変わっていかないんじゃないかと。
辻中:そうですね、というのがおそらく一般的な見方で、いずれは当然需要っていうのも落ち着いてくるんだろうなとは思いますけれども、一般的に言われてるのはおそらくこの年末ぐらいまでは、少なくともFRBはより金利を上げるっていうスタンスっていうのは変えないんじゃないかな。
そうなってくると今のドル高が進む状況っていうのは変わらないんじゃないか、っていうのが基本的には言われていることだと思います。
ゆずたそ:しかしあれですね。もし年末が折り目だとしたら、SaaS企業は海外でカンファレンスで今から申し込んでプレゼンテーションしても、受注する頃にはもう一定発生する可能性もあるのではないかと。
辻中:ちょっとそれはわかんないですけど、半年後、1年後、2年後どこかでは、円安も歯止めが来るとは思うんですけど。円安に歯止めが来て、140円で停滞するのかそれとも120円ぐらいになるか。
クロージング
ゆずたそ:エンジニアができることといえば、どのシナリオが来ても対応できるようにしておくと。少なくともそういうポートフォリオを持てるようにするというか、そういう対応をしておいた方が精神的には安心するかもしれませんね。
辻中:そうですね。おっしゃる通りかなと思います。
ゆずたそ:なるほど。そういう海外の企業で実施するような、中には英語で働くような環境を探している人たちは、ナウキャストの採用ページを開きにいくと、そういうことで間違いない(笑)
辻中:さすがですね。(笑)いやありがとうございます。
ゆずたそ:これは、円安トークという餌で釣ってビジネスしていく社長の姿を見れるる場所だったと。
辻中:いやいや、人聞きが悪い。(笑)ピュアな好奇心で、懇意にさせていただいてるゆずたそさんとお話させていただきたかったっていうことなんで。
ゆずたそ:我々の事前の打ち合わせだと、このトピックが5行くらいのSlackの話しましょうみたいなやりとりでしたけど。こんなところですかね。
辻中:そうですね、すいませんついつい話しすぎてしまってというか、いろいろ聞きすぎてしまったところもあって。
ゆずたそ:いえいえ、すごく勉強になりました。いろいろ教えていただいてありがとうございました。
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