20歳の時の、大切な人へ。
周りからお似合いだと、両思いだと思われるほど、その相手と付き合えないこと、あると思う。
その人と出会ったのは季節外れのサークルの勧誘でサークルへ行った時。
大学院生で、わたしの4歳上だった。
19のわたしにはとっても大人びて見えた。
流れで連絡先の交換をして、しばらくメールのやり取りをして、電話もした。気がついたら敬語はなくなっていて、出会って半年が経った頃。
「そろそろ遊び行くか」ってメールが来た。
サンシャイン水族館。わたしはあの時以来、誰と付き合っても、誰とデートしてもサンシャイン水族館だけは行っていない。
渋谷のハチ公で待ち合わせ、何回したことだろう。わたしの学祭にも来てくれた。忙しくて一緒に回れなかったけど。パルコで洋服見て、ご飯食べて、カフェ行って。
デートはした。手も繋がないし、キスもしないけど。
20歳の思い出は、ほとんど彼がいた。友達に彼といる時に会うたびに「絶対両思いだよ」と言われたり「2人ってお似合いだよね」と言われることもあった。でも、わたしたちは付き合ってない。
彼はわたしの気持ちに気がついていただろうし、彼もわたしのこと好きだろうな、と思うことも何度かあった。でも、気持ちを伝えてもう2度と会えなくなるなら、気持ちを伝えずに一緒にいたいと思っていた。
何度かその間に合コンも行ったし、デートする人もいた。でも、その先に進めなかった。
彼と出会って1年が経った12月。彼との連絡は変わらずで、どちらかが水曜にかける電話のみ。そろそろ会いたい、そう伝えると、今忙しいから2月になったらね、と返される。そんなに待てないと当時は思ったけど、たぶん彼の忙しさは本物だったと今では思う。その口約束を、わたしは待てなかった。
その数週間後。男友達が、わたしに紹介したい子がいるという。「絶対、好きになるよ。あいつ、良い奴なんだ」その言葉通り、わたしは年明けてしばらくしてから、紹介された子と付き合った。彼のことを忘れたわけではなかったけど、もう待てなかった。
付き合うことになったその日、久しぶりに彼からメールが来た。
「そろそろ遊び行くか」
「ごめん、彼氏できたの」
「俺のこと、弄んでたんだね」
どっちが…!って思ったけど、もうそれ以上はメールを送らなかった。似たもの同士の彼とわたし。
それから当時の彼とわたしが同じ年齢になった時。一度だけ会った。
「あの頃の彼くんと、同じ歳だよ、わたし。大人っぽくなったでしょ?」
「もうそんなんかぁ。俺は4歳上かもしれないけど、実際そんな大人じゃないよ」
そんなやりとりもしたけれど、すっかり社会人になってた彼は、変わらず大人びていた。
「じゃあ、また。元気で頑張れよ」
それが、彼の声を聞いた最後だった。
最後まで気持ちは伝えなかった。伝えられなかった。隣を歩いた時に時折触れる小指がもどかしいと思ったのも、過去のことだとようやく気がついた。
ありがとう、20歳のわたしが大好きだった、大切な人。
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