堀田善衛の「捜索」は「紅の豚」のモチーフだ

堀田善衛の『捜索』は、戦時中、飛行機の墜落により亡くした僚友の捜索のお話です。
冒頭、空に飛び立つことは『別れ』に近い、とあります。墜落機に乗っていた僚友は「死んだ」のではなく、「地上の世界に還ってこなかった」と主人公に述べさせています。
筆者が言いたいのは、生と死は2項対立により別れるのではなく、生と死のあいだにグレーゾーンである空が存在するということだと考えます。仏教用語では「三途の川」にあたるのかもしれません。
宮崎駿の「紅の豚」に描かれる墜落した飛行機たちの雲を思い出します。ポルコロッソが空中戦で生死をさまよい、ふと眠りに落ちて見た夢の世界で、以前、墜落により亡くした盟友が飛行機に乗っているところに出会うのです。そしてふと上を見上げると、数多の飛行機乗りが飛行機に乗ってひとつの雲を作っている。そう、その雲は死者の世界、そして盟友は死者の世界に上がる途中だったのです。
その盟友には婚約者がいました。そこでポルコロッソは「俺が代わりに行く」と言いますが、盟友が上に上がり、ポルコロッソは目覚め生の世界に戻ります。
宮崎駿は堀田善衛に強い影響を受けたとのことですが、この「捜索」をも読んだのでしょうか。堀田のこの作品をひとつのモチーフに膨らませた作品が「紅の豚」とも思えます。

堀田善衛全集の通読をしようと思っています。堀田の「上海にて」というエッセイに惚れ込んだのです。彼の人生を歩んでみたい。小林秀雄の「全集を読め」という言葉に従ってみようと思うのです。

このように自分の考えを言語化したい。1年前に、読んだ本の感想などを書いて手紙を女の子と送り合っていましたが、その子は別の男性と付き合うことになり、文通は終わりました。それ以降、自分の考えを述べることは馬鹿らしくなっていた。だけど、いま、語りたい。思っていることを言語化したい。そう強く願うようになっています。

いいなと思ったら応援しよう!