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革命はテレビ放送されたのか?〜ケンドリックラマーのハーフタイムショー〜
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2025年のハーフタイムショーは、稀代のリリシストで多彩なラップスキルを持つケンドリックラマー!
一昨年サマソニでケンドリックラマーを見た私の感想はこちら↓
新政権発足直後でトランプ大統領も見に来ている中での、示唆に富む圧巻のパフォーマンスでした。
ものすごく緻密にステージに意味を構築するケンドリックラマー、その考察や謎解きは数々の有識者がしていたので(最後にリンク貼ります!)私は自分が見た素直な感想をば。
現時点でハーフタイムショーを任されるって、アーティストにとってとんでもなく名誉な事だと思うのです。そこは、作品発表の場というより、全米が注目しているアーティスト史上一番のハレの舞台なわけです。
ケンドリックは真面目なリリックが多いなか、昨今は「ドレイクのとのビーフ」で大注目でした。でもそれって個人的な事。ああいう大舞台には私的な感情を乗せるよりも、もっと大きなオピニオン【黒人の連帯】とか【戦争反対】とか、壮大なテーマを主軸にし、みんなが知ってる名曲を新旧入り混じって披露するのが一般的かな、と思うのです。(実際昨年のアッシャー、一昨年のドレ軍団、3年前のリアーナなどは名曲メドレーでした)
私は広告の仕事をしていますが、関わってくる人が多くなったり金額がデカくなるにつれすぐブルってしまい、「広告人としての矜持」<「モメずに大人数が納得する事」を選んでしまいます。。だから、比べたらおこがましいですけど、もし自分がケンドリックラマーだったら「BLMをエンパワメントするような曲目を選びハッピーで真面目な舞台演出」にしたと思います。
ところがどっこい。今回ケンドリックはステージをゲーム風に演出、「アンクルサム」というツッコミ役を設けながら、プレイリストのほとんどが新曲。主軸にはドレイクとのビーフ曲「NOT LIKE US」を据えました。
「ドレイクが可哀想」「ビーフ曲をやるなんてはしたない」という声も結構聞こえ、賛否両論のステージでした。実際少しは私もその気持ちがあります。(ドレイク嫌いじゃないので。過去にドレイクのブランドNOCTAについても言及しています)でも今、このタイミングで自分がこの大役を任された以上、日和ったよくある舞台では無く、今しかできないこのステージを組んだケンドリックの心意気にアッパレです。
「NOT LIKE US(お前は俺たちとは違う)」というのは、ドレイクを指してはいるものの、アンクルサムに思考を読まれたように保守的なステージを想定していた私自身にも突きつけられたように思え、かなりヒヤっとしました。そういう視聴者も多かったのでは。
イラストにも書きましたが、最後画面が引いた時、光の当たらないところに黒装束の黒人ダンサーが鮨詰め状態になっていたのにはびっくりしました。ケンドリックラマーはギルスコットの有名な詩「革命はテレビ放送されない」を引用して「革命はテレビ放送される」と言いましたが、スポットライトの当たらない部分のうごめく影を見ると、逆説的な意味でもその言葉を発したのかな、と思いました。実際ガザの旗を振っていた人はテレビ放送されてない訳ですし。
ステージにも登場したSZAとのツアーが控えているケンドリック。この勢いのまま、今度は2人でどんなステージを組むのか楽しみですね。
SZAについての私の記事はこちら↓
きん
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ためになる有識者によるケンドリックラマーのステージ解説一覧です。まだの方はぜひ!