リサーチ技法を実践してみる。
最近本を読むスピードよりも買うスピードのほうが速くて無限に積読がたまっています。このリサーチ技法の本もちょうど一か月前に買ってようやっと日の目を見ました。
大学の学部で求められるリサーチとビジネスリサーチのスタンスや注意事項にそこまで差があると思いませんでした。ただ、本当にビジネスリサーチの場面に即して書かれており、非常に実践的な内容でした。(逆に学術リサーチには活かしにくい部分も多かったですが、それはそれでよいことです)これを知識としてとどめておくのではなく、都度見直しながら爆速でできるようになることがゴールなのでしょう。
改めてGPT-4が使えるようになった現在「物事の大枠をとらえ、リサーチデザインを立て、取捨選択する力」が重要になるのではないかなとぼんやり考えたりします。この本はその力を得るための「ナビゲーター」として機能してくれそうですね。
ということで、卒論のための文献リサーチ結果発表準備のために早速この本を活かしてみようじゃありませんか。
普段レポートを書く際に超絶場当たり的に論文に当たって自分の意見を補強してくれそうなものを数本ピックアップして何とか書き上げるという非常に舐めた課題への向き合い方をしていたので、今回はきっちりやってみましょう。
今回は文献調査なので、「リサーチの基本的な流れ」を固めて「情報を探す」ところに力を注ぎます。
リサーチの基本的な流れ
目的
◇答えるべき問い
①社会階層論では現在どのような問いが扱われているのか。
②私はどのような問いに対して興味関心を抱けるのか。
◇企画のステージ
検討着手ステージ:80%
答えるべき問いの①にあたる部分です。そもそも私はこの分野を断片的にしか知らないので、今現在の研究の潮流を知る必要があると考えます。
仮説立案ステージ:20%
答えるべき問いの②にあたる部分です。仮説を立てるまではいかないですが、卒論の「企画」をある程度しないといけないのです。
◇成果のレベルとまとめるイメージ
時間:3日間(水、金、土)
網羅性:なるべく広く
精度:もともとあたる情報が学術論文のみなので必然的に高くなる。
アウトプット:Word文書。レジュメとして使用する。リサーチプランの設計
◇どんなソースにあたるか
論文検索:J-stageの論文。たしか年ごとに分野の概略が出ているはずなので、概略読んで気になった論文を探すのがよさそう。
◇いつ、どの順番であたるか
1日目:
・常識の取得:Google検索上でキーワード検索をかける
・体系化された全体像をつかむ:J-Stageにある分野概略の確認(社会階層論・社会関係資本・ネットワーク分析あたりを読みたい)
2日目:
・個別具体的な情報をつかむ①:分野概略で興味のある分野を見つけ、該当する論文の要旨をざっと読む
3日目:個別具体的な情報をつかむ②:読むものを2本に絞り、Word文書に書き起こすリサーチの実行
アウトプット化
Word文書に
・論文の要約
・分析手法の説明(※卒論に活かすためここを厚めに書きたい)
・その論文で立てている仮説と結果の説明
・自分の疑問点や論点
を記述する。
実践してみたい手法
ゴール×時間を最初に設定
検索キーワードを書き出して、組み合わせてみる
タブブラウジング
論文を通読せず、頭の中にインデックスをつける程度に読み流す
さあ、やってみよう!
一日目
やったこと
j-stageの「テーマ別(分野別)研究動向」から自分の問題関心に近そうな「社会階層」「差別」「労働・産業・経営」「ソーシャルキャピタル」「ジェントリフィケーション」「リスク」を流し読みした。ゴール×時間
意味を成さなかったが、3時間程度で終わった。バイトまでに終わればいいなあ、できれば資格の勉強したいなあと思っていたが、結局時間ぎりぎりまでかかってしまった。タブブラウジング
非常に有効。とりあえず気になったやつを開いておいて、あとから戻ると効率がよかった。油断するとリンクそのままクリックしてしまう。論文を通読しない:読み流してみた。
今日の成果
私の問題意識:社会階層が異なる人はなぜ交わらないのか。また交わるとしたらどのタイミングか。
興味がある分野:①社会関係資本②ジェントリフィケーション(都心回帰)③社会階層
二日目
怠惰ゆえに一日で二日分やらないといけなくなってしまった。
とりあえずざっと10本読む。予定は3時間くらいかな。
午前中:10本ざっと読んだ。ソーシャルキャピタル論と合理的選択あたりが自分の興味関心と近そうであることがわかった。
ジェントリフィケーションの論文:都心再開発時の既存住民と新規住民だと、既存住民のほうが共同体への活動に熱心/社会階層が低い、新規住民は共同体の活動に消極的/社会階層が高いという結果が出た。
集団ネットワーク構造と社会関係資本の論文:居住年数が短いものほど豊かな社会関係資本を形成していた。また開放的集団(相互作用相手が集団外部の成員にも流動的)への参加数が多いものほど総合的な社会関係資本を多く形成。
これと片岡氏の「趣味の社会学」で書かれていた、社会的な接点を多く持つ(職場等)人は大衆文化を好む傾向にある
っていうのを結び付けて発表資料にできたらいいな…
気づいたこと
・タブが増えすぎてjstageのロゴしか見えず探す手間が増えた。
・notionに論文PDFを埋め込めることに気づいた。便利だなこれ
・メモしておかないとキーワード忘れる…!(大反省)
・Twitter周回しながら2時間半くらい読んだけど意外と知識ついた。集中したらもっと効率上がりそう。
三日目
レジュメ作った。4時間くらいで…
そもそもの用語解説⇒論文の要約⇒分析手法⇒まとめ・自分なりの考察でまとめた。
あほみたいに長くなってしまったが、2本で問いを深められるよいリサーチレポートになったのではないかと自画自賛…
作った翌日に発表したのだが、用語解説が甘かったのか、ペースが速すぎたのか終わった後に友達から質問攻めされてしまった…。ただ、2本の論文で共通の言葉がでてきているのがすごいとほめられて、嬉しい
たぶん、用語が腹落ちしていないので、ニュアンスをうまく伝えることができなかったのだろう。
総括
最初の文献探しの時にリサーチ手法を用いたが、なかなかやりやすかった。いつまでに、何を、どれだけ調べるかは実際に手を動かす前に決めておくが吉。
学者が学術雑誌にテーマ別研究動向を投稿されており、その分野の全体像をつかむにあたって非常に役立った。
並行して別の授業でもリサーチ手法を実践していたが、なんだかんだキーワードとそのニュアンスを抽出することが最重要なのだと思った。
ということで、今回の記事はこれで終わりです。
商学部系の授業(企業分析とか…)でやったらリサーチ技法の本で今回触れられなかった部分が実践できて、身になりそう。さすがに今回の題はビジネスと違いすぎた。