SLN第二弾「サルトメモリア」から「終わりの輪廻」までについて。

前回に引き続き、1stアルバム『Pastel*Planet0.01-finished a la carte-』から後の4曲を解説しようと思う。

【「サルトメモリア」について】
この曲は、私の中で構想を練っていたとある物語の、オープニングを意識して作曲したものである。その「とある物語」については、今後なんらかの形で発表したいと思っているが、何しろストーリーがとてつもなく長いので、どうしたものかと模索中である。
そのため、これについては、歌詞についての言及はしないでおく。
曲については、まず楽器の構成がこのアルバムの他の作品に比べて異色であることは言うまでもないだろう。ピアノ、ドラム、ベース、バイオリン、ヴィオラ。基本はこれらの楽器で曲が構成されている。これはその「とある物語」のイメージに合わせたのもあるが、これらのサウンドが、エレクトロサウンドに比べて、比較的馴染みやすい音色であることも、こうなった要因だろう。
因みに、ドラムは人間だと演奏不能なのではと思うレベルの超絶技巧が必要になってしまっている。

【「for hazuki」について】
これは現在発表している小説『for hazuki』をもとにして作曲したピアノ曲である。物語についてはこちら(URL:https://note.mu/kinmochiurushi/m/mafaad32642f6)をご覧いただきたい。
曲については、曲を大きく分けて3つのテーマに分け、基本的に音数を少なくし、どこか空虚な響きを作り出すことを意識した。1つ目のテーマでは、決して完全5度音程の和音を使用しないようにした。
2つ目のテーマでは急激にスピードを速め、明らかな場面転換を図っている。ここではその対比を際立たせるために逆に完全5度音程ばかりを使用している。
そして3つ目のテーマでは、もっともメロディアスで、印象的な主題を、あえて淡々と演奏した。ここの基本的な和音構成は、B♭.C.Dmを展開させたものを中心にしていて、その回転和音形によって音の演出を図っている。
そして、1つ目のテーマに入る前、つまりは演奏の始めと、演奏の最後の嬰ハ短調の部分、その内でも取り分け、最後の方はファのシャープ、つまりは下属音(サブドミナント)で終わっていてかつ、譜面には「perdendosi(消え入るように)」という発想記号を記した。ここは酷く細々と、儚げに演奏するのがミソである。

【「マイルーム」について】
マイルームはこのアルバムのために書き下ろしのつもりで作った曲だったが、全ての中で一番まとまりがあり、個人的にも気に入ったものができたので、後日動画にして投稿した(URL:https://sp.nicovideo.jp/watch/sm34788848?cp_in=wt_mllst)。
この曲の歌詞は「若い少年少女のやり場のない葛藤」と「恋と官能」をテーマにして書いた。「僕」の「君」に対する感情の変化や、サビの「世界を嫌って、愛を嫌って、僕はここまで生きてきたんだ」というフレーズにも、そんなところが見て取れるのではないかと思う。
曲においては、リズムトラックにおいて、ハイハットを64分音符で連続して入力するなどの工夫を凝らしている。そのほかには、2回目以降のサビで登場する、六連符のサブメロディが印象的なのではないだろうか。また、この曲については、パソコン内のプリセットシンセと、アナログシンセとをパートごとに使い分けており、それが含みのあるサウンドを生みだしていると思っている。

【「終わりの輪廻」について】
アルバムの最期を飾るこの曲は、私が初めて動画投稿サイトに発表した曲である(URL:https://www.nicovideo.jp/watch/sm31845141)。
この曲は基本のコードがほぼ全て完全五度音程で、同じ主題を何回も繰り返すミニマルの曲である。この曲の歌詞「終わりが訪れ、再び始まる」は、私の創作上の一つの重大な命題として提起したものである。しかしこれには、私個人の初音ミク像と何か重なるところがあるのではとも考えている。
初音ミクはその存在が非常に曖昧なものだ。だから、誰かの手によって、生まれることもあれば、誰かの手によって死ぬこと、消えることだってある。それを何度も繰り返し、それらの生と死によって、今現在の初音ミクが生まれ、現在のボーカロイドシーンが形作られていったのではないだろうか。つまりは初音ミクは、現在のボーカロイドカルチャーの代名詞であり、今も現在進行形の「始まりと終わりのアイコン」なのである。そう私は考えたのだ。
そんな初音ミクのヴォーカルパートでは、これまで使用していたリバーブとは別の種類のリバーブを使用し、これまでに比べてさらに残響性を強くした。その結果、初音ミクの歌っている歌詞はその発音がどこか不明瞭になり、そして、ややぼやけて聞こえるようになった。しかしそれがかえって、この曲の幻想的な空気や、輪廻というテーマの永遠性、普遍性、そして概念性をより強めたと考えている。

(次回へつづく)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?