SLN第五弾「アフターオール」から「Flower of Doomsday」までについて

セルフライナーノーツ、第五回の今回は3stアルバム『Pastel*Planet 0.03-Guardians of ego-』から、後半の4曲について解説しようと思う。

【「アフターオール」について】
以前にどこかで話していたような気がするが、私はいつかボーカロイドオペラのような作品を作りたいと考えている。これはその中のアリアから一曲を、アルバム用にアレンジしたものである。
歌詞のテーマは「人間」と「個人主義」で、原題は「防衛機構」だった。例えば「辺りは騒然として、だけど誰もが下を向いて、鏡をただ眺めている。」という歌詞の「鏡」が何を表しているかというと、これは携帯電話のことを表している。スマートフォンの画面を真っ暗にして、それをのぞいてみると、そこには自分の顔が映る。そして、中のデータは持ち主の人格や、対人、趣味、思想、性癖などのほぼ全てを映し出している。だから、スマートフォンは自身の写しであって、そればかりを凝視する様はさながら鏡に映った自分をひたすら見つめているかのように見えたのだ。
また、音楽は主題が2つしかない、バリエーションである。1フレーズごとにそれぞれ違うメロディが重なっていき、最終的には、均衡を保ったカオスが生まれる構造だ。また、使用しているシンセサイザーのほとんどが、外部のアナログシンセサイザーで、リズムトラックは、そのほかの楽曲制作中に出たクリッチノイズなどを使用した。

【「At the end of a Jouney」について】
これは次のトラック「地球儀を回して」につなげるための導入として制作した。ノイズの音色をシンセサイザーによって周期的に変化させ、風のような音を作ったものと、太い塩ビパイプの中にマイクを入れ、パイプの中の音を録音したものを重ね、さらに雪の中を歩く音を加える。そして、不規則に、鈴、タンバリン、カスタネット、リコーダー、ベースなどを重ねた、半アンビエント音楽である。また、シンセサイザーによる第一主題は、先ほどのボーカロイドオペラで、アフターオールの主題のアリアの前に使われる予定のメロディだ。敢えて今回は順番を逆転させて使っている。また、ピアノによる第二主題は後の「地球儀を回して」の中から印象的なメロディを挿入し、次のトラックへの伏線としている。ちなみに、この時使用したピアノは、20年以上調律をしていないものを使用していて、ピッチが僅かにずれている。それが、よりこの曲に味を持たせているだろう。

【「地球儀を回して」について】
この曲は、このアルバムの核となる曲であり、この曲が生まれなかったら、このアルバムはここまでのものが出来なかっただろう。
このアルバムは、二曲目「うたはねむる」からすべてストーリーがつながっていて、このトラックはそのストーリーの最終章だ。テーマは「世界の終わり」であるが、それは悲観的なものではない。登場人物はその「終わり」の中にわずかに希望を見出そうとしている。その結末は決してハッピーエンドではない。しかし、その中に、「終わり」の中に、少しでも純粋な美しさを見出してもらえたらと思っている。
曲は、ピアノを基本としたバラードだ。そこに、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスによる四声のストリングスや、シンセサイザーによる効果音などを取り入れている。これは馴染みやすいメロディにすることで、その中に、クリック音や、リバーブのかかったサイン波が入るのは、その世界観をより立体的にするためである。
また、この曲には、何回か変拍子が組み込まれている。それは、メロディを書いた際に、意図的に入れたものである。決まった一定のリズムにしないことにより、人間的な揺らぎを曲の中で生みだそうとしたのである。
ちなみに、この曲の歌のメロディは、全体を通した作曲時間が、三十分に満たない。これはそれだけ自分の中でメロディが素直につながったからである。そのため、自分の中では、かなり自然に近いメロディになったのではと思っている。
そして、この曲は、このアルバム全体にこめた、ちょっとしたメッセージを、最も具体的に提起したものとなっている。それについては、実際この曲を聞いた方に考えてもらいたい。

【「Flower of Doomsday」について】
このアルバムのエピローグにあたるトラックである。これも同じ主題を繰り返すミニマル的な曲である。原題は「終末の花」で、一番初めにこのメロディを思いついたのが、少女終末旅行の最終巻を読み終えた時だった。その時感じた衝撃を、曲に込めた。
その当時は、ロ短調だったのだが、今回、アルバムのために編曲した時に、前のトラックと繋げるために、ニ短調から、ロ短調に転調するようにした。
ちなみに、最後だけはロ長調の基本形の和音で終わる。しかし、完全終止で終わったかと思ったところで、さらに音が加わり、不完全終止で終わる。ここが、この曲の終わり方の、なかなかに面白いポイントだ。

【終わりに】
さて、ここまで5日に分けて、1stアルバムから新作の3stアルバムまで、すべての曲の解説をしたが、これは飽くまで制作者個人の見解であり、聞き手に価値観を強要しているわけではない。アルバムを買ってくださった方々には、それぞれの解釈で、このアルバムを心から楽しんでいただけたらと願っている。

2019年3月30日
音楽:フェネッ公 文章:漆畑公望
制作:Pastel*Planet〈Twitter:@fenekkou〉
スペシャルサンクス:uotaK〈Twitter:@_uotaK_〉
         だらけもの〈Twitter:darakemono25〉

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