ごま団子の話
画像はさっき作ってたやつ。
話には関係ない。
ごま団子好きですか。私は好きです。
初めて食べた時のことをよく覚えています。
たまに話すので知ってる人もいると思うのだけど、私にとってごま団子は金持ちの食い物というイメージがある。
小学校の時、私は別府のスラム街に住んでいて、どのくらいのスラム街なのかはまたそのうち言うかもしれないけど一旦置いておく。
スラム街にはなぜかとても素敵なマンションが一棟だけ建っていて、そこには転校生のAちゃんが住んでいた。
Aちゃんは普段家にいないパイロットのお父さんと、お婆ちゃんと3人で住んでいて、当時のスラム街にしてはものすごく珍しいパグを飼っていた。
わかりやすく甘やかされたお嬢さんで、なぜスラム街の公立小学校に通っていたのか今でも全く理解できない。
Aちゃんが転校して初めての誕生日を迎えたときに、パーティーの招待状をもらった。
お誕生日会はその子の家に行って、プレゼントを徴収し、その子の家のご馳走を食べる、というおなじみのもので、スラム街のプレゼントはスーパーの雑貨か文房具、それが買えなければ自分の大切なもの。
ご馳走はせいぜい唐揚げかカレーだ。
私はお金を持っていなかったので、とても大切にしていたうさぎのぬいぐるみ夫婦を持って行った気がする。
お誕生日会は、Aちゃんの家ではなく隣のホテルが指定されていた。
なぜ家ではなく隣のホテルなのか理解できなかったが、そんなこともあるのかとノコノコうさぎ夫婦を握りしめてでかけた。
会場は、ホテルのバンケットルームだった。
部屋の一面は全てガラス窓で日本庭園に面していたし、部屋の真ん中には大きな回転テーブルが鎮座していて、中華と言えば近所の駄中華屋しか知らない私には何をするテーブルなのか全く理解できなかった。
ただ、Aちゃんがすげー金持ちの子らしい、ということだけは私にもわかった。
そして自分たちと住む世界が違うことも。
そこでどんなものを見て食べたのか全然覚えていない。ごま団子を除いて。
そう。ごま団子。初めて見たのはこの時。
たぶん、食事の最後に杏仁豆腐と出てきた。
なんだコレ、お菓子なのか?ゴマなのに?どうやって食べるの?めちゃくちゃ熱いけどこれお菓子なのか??ほんとに?かじってみるとほとんど空間。がらんどう。カリカリ。薄くて、香ばしくて、ちょっと油っぽくて、食べたことのない味のあんこ!!!!!!
うっっっま!!!!!!!!!!!!
え!!!!!???なにこれ!!!!
金持ちってこんな美味いもの食ってんの???うっま!!!!!!!!!!
私の母はとても食べ物の好き嫌いが極端で、なおかつ我が家は貧乏で、私は限られた食材しか食べさせられていなかったし、駄中華屋にはごま団子なんてなかったし、腹にもたまらないほとんど空気で出来ているのに一粒百何十円もするお菓子なんて食べられるわけもなかった。
羨ましい、なんて少しも思わなかった。
私の人生に登場することがなくても、この世にはこんな美味いものがあってこれを食べたい時に食べられる世界があるのだと知ったその時、とても感動した。
なんならちょっと嬉しかった。
うさぎ夫婦をAちゃんに渡せたのかは覚えていない。
ごま団子はその時から私の中では金持ちの食べ物で、今でも頼む時は緊張するし嬉しくてしょうがなくなる。