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流れの正体 若きサイボーグ

【ロボット野郎】

 「席あったまってる?」
 「それは温度的な意味じゃないですよね? であれば、答えようがありません。僕はそういうよく分からないことは考えないようにしているので」
 15年前、高田馬場にあった某雀荘での、私と小林剛君の会話だ。小林君はまだ東京理科大学の学生でプロ雀士ではなく、雀荘のメンバーだった。私もまだ学生で、1年分の単位しかとっていない3年生だったと思う。
 当時、客の間で「誰の後で打つのが一番良いか」ということが話題になっていて「小林君は常に丁寧にキチンと打つから席が冷えない。下手なメンバーの本走後に入るとツモがヨレてどうしようもない」という具合に、徹夜明けの早朝のファミレスで話し合いが行われていた。
 それで私が小林君の本走後に案内されて、挨拶代わりに冒頭のように話しかけたのだ。
 学生時代からマシーンのような男だった彼は一切の愛想笑いもなく、ひきつった顔でメガネを直しながら言った。いつものあの冷徹な眼差しで。
 私は『この社会不適合者め、そういう時はテキトーに調子を合わせて、あっためておきましたよーとか言っとけばええやろ。客商売なんやから』と心の中でののしったが、やはりツモも配牌も良かったのであった。

【隠れデジタル雀士がいた?】

 前回、荒正義プロに流れ論者の側からの意見をいただいたが、これに反論してもらうデジタル雀士…と考えた時に、冒頭のあの忌まわしいやり取りがよみがえってきた。
 十数年を経てもおそらくあのロボット野郎は変わっていないだろう。そう確信し、久しぶりに取材させていただいた。
 聞くまでもないが「流れはありますか?」という質問から入ると、例のごとく、
 「偏りの意味なら存在はするけど読めないしコントロールは不可能。それを因果関係のようにこじつけて語るのはダメです」
 という答えが返ってきた。
 では、前回荒さんが言っていた「過去に強いデジタル雀士が存在しなかった」という点についてはどういう見解をお持ちなのだろうか?
 「まず最初に、私は荒正義プロや金子正輝プロのことを、とても尊敬しているということを言わせてください。後ろで見て、何て凄い麻雀を打つ人たちなんだと驚愕したし、憧れていました。今もその思いは変わりません。そして、荒さんや金子さんの世代の麻雀プロたちも、かなり役に立つ話を戦術書などでしてくれています。たとえば、金子さんの牌流定石などもそう」

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