プロ雀士スーパースター列伝 本田朋広 前編
【ホンマは賢い本田】
ウィーンのインターコンチネンタルホテルで昼食を取っていたら、目の前に本田朋広が座った。
「ここ、いいすか?」と言いながら座り、グラスに入った、スイーツ的なものにスプーンを突っ込んではかきとって口に運んだ。
「これ、うまいっす。こっちきて、ずっとこればっかし食べとります」
本田はそう言って、本当にうまそうにそれを食べ続けた。
「こっちきて思うんが、オレ、ずっと半笑いで笑われとるんすよ。飛行機の中でも、何言われて、何言うても、飛行機のお姉ちゃんが、半笑いすわ。こっちきてホテルついても、何か言われて、俺が何か言うたら半笑いすわ。日本とぜんぜん変わらんのすよ」
それを聞いて、私も笑った。
「まあ、そりゃいいんすけどね。そういや黒木さん、この後はどないするんですか?」
私は土産物を買いに行こうと思っていると本田に言った。
「それ、ついてってもええがですか? 僕もちょっと買いたいもんがあるんで」
かまわんよ。
そう言って連れ立ったのだが、本田は一向に買い物をしない。
私は3軒ぐらいの店を回って、それなりに土産の品を買ったところで、気づいた。
お前、何も買わんのか?
「あんまり買いたいもんが、ないがです」
それでやっと気づいた。
彼はただ私のお供をしただけなのである。
それを悟られぬように付いてくるためには「自分も行っていいですか」と言うのが一番良い。私が「やめてくれ」とは言わないからだ。
もし、普通に「一緒に行きましょうか?」と言われたら、私の性格なら「必要ない」と言うだろう。
後輩に負担をかけたくないからだ。
こいつは案外、アホのフリをして賢い奴なのかも知れぬ。そのように思った。
彼は彼で、道中、私に色々なことを聞いてきた。お供をしつつも、情報を聞き出したり、解消したい疑問があったのかもしれない。
そう考えると、ますますこやつの「アホ」は「フリ」なのかもしれん。そう思った。と、同時に、本田が人に好かれる理由が分かった。
【本田への借り】
実は私は、本田に大きな「借り」を作って、そのままになっている。
2021年の「EX風林火山-ドラフト会議指名選手オーディション」では「団体推薦選手」に「アドバンテージポイント」が与えられていた。
私は日本プロ麻雀連盟内の序列に従って上から順に連絡をし、出場意思の確認をした。もともと出ないつもりの選手でも「アドバンテージポイント」があるなら出たいというケースがあるからだ。
序列は上位リーグの期首順位によるものだった。それと、タイトルホルダーは優先される。
本田はグランプリのチャンピオンだったため、当然その資格があった。
だが、私が「本田にも連絡しなきゃ」と言ったら、そこにいた全員が「本田は富山のお店経営があるから絶対に東京には出てきませんよ」と言う。
私も「そっか」と信じてしまい、本田には連絡をしなかった。
そしたら、知らぬ間に本田がエントリーしていたのである。
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