ケネス徳田伝説⑤ 披露宴の手紙
本日12月1日19時生放送。皆様のコメントお待ちしてます。
【夏目坂スタジオを1人で作った】
ケネス徳田はある分野では優秀である。
「近代麻雀」で長期連載されている人気麻雀劇画「むこうぶち」の闘牌シーンは、安藤満プロ亡きあと、ずっと徳田が担当している。それなりに良い物を納品しているから10年以上続いているのだろう。
だが、細かい間違いが必ずといって良いほどある。
特にライターとして原稿を書かせると、「しかし」が3回繰り返されていたり、最初に書き始めたことが最後の結びの言葉につながっていなかったりする。
指摘すれば理解するのだが、自分が書いたものを見直すことができないからそうなる。十年以上商業ライターをやっているのにそうなってしまう。
野球で言えば、打った後にたまに三塁に走り出してしまうぐらいのことをやってしまうのだ。
それはもう過去を振り返れない病気みたいなもので、見直せと言っても絶対に見直さない。無理なのである。
その代わり、人ができないことをやる。
一番すごいと思ったのは夏目坂スタジオを1人で作ったことだ。
スタジオを1人で作ると言ってもピンとこないかもしれないが、カメラ、モニター、スイッチャー、音声ミキサーなどの機械を買い集め、配線して使えるようにするという作業で、専門の会社に依頼すると2か月は欲しいと言われたのだが、それを徳田が14日間でやってのけた。
スタジオの企画・立案は私が言い出しっぺなのだが、物件は森山茂和会長が探した。スタジオの間取りはその業界のプロに協力してもらいながら決めた。
そこから先の一番大変な部分は、徳田が1人でやったのだった。
そもそも、なぜ自前のスタジオを作るという話になったのか。
かつて、池袋にアルバンスタジオという麻雀専門のスタジオがあった。
日本プロ麻雀連盟チャンネルは、そのスタジオがあったから生まれたのだが、そこが閉鎖するという話になった。
それでは困るということで、プロ連盟で独自のスタジオを作ることになった。その直後、アルバンさんから「スタジオを別の場所に移転して続けるかもしれない」と言われたのだが、すでに夏目坂スタジオ構想は動き出しており、ほぼ毎日のように稼働させるつもりでもあったので、予定はそのまま進んだ。アルバンさんにもお断りは入れた。アルバンスタジオはプロ連盟が最も多く使っていたので申し訳なかったが、仕方なかった。
ちなみに、その移転したスタジオが今の「スリアロスタジオ」である。
ただし、夏目坂スタジオの構想は「徳田ありき」でもあった。
もともと日本プロ麻雀協会にいた徳田だったが、アルバンスタジオにはスタッフとして来てもらっていた。
その当時はせいぜい月に何日かだったのでよかったが、夏目坂スタジオは毎日のように稼働させる予定だったから、プロ協会の人に毎日来てもらうわけにもいかない。
そこで徳田にプロ連盟移籍の話をしたところ、本人もプロ協会での活動に限界を感じていたようで、移籍しても構わないということになった。
それを森山会長に話したら「その前に協会の五十嵐毅代表に話を通すのがスジでしょう」と言われた。
(徳田と私が働いていた会社)バビロンの馬場裕一さんからすると、五十嵐さんは友人の「イガリン」であり、私にとっても先輩の「イガリン」であって、協会の五十嵐代表という感じではなかったのだが、確かに森山さんの言う通りである。
で、馬場さんが五十嵐さんに連絡をして要件を伝えたところ「他の役員にも聞いたが、別にいいと言われた」ということだった。
私は「協会は徳田の重要性をわかってないなー」と思いつつ、しめしめと思っていた。
バビロンとしては、会社に複数団体の人がいた方が良いのであるが、夏目坂スタジオ構想は是非とも進めたかったので、背に腹は代えられなかった。
徳田がいなければスタジオは作れないし維持できないと思っていた。
それほど「ある分野」では優秀さを発揮する徳田だが、欠点は「安いものが大好き」なところである。
ある程度それを知っていた森山会長が「絶対に安いものを買うなよ。それで早く壊れたら意味ないんだから」と「安物買いの銭失い」を実践し続ける徳田にクギを刺していたのだが、結果、スタジオにはよくわからない海外メーカーのモニターが並んだ。
どうしても安いものを買ってしまうのである。
そしてそれは、彼の人生最大の晴れ舞台でも変わらなかったのだ。
【披露宴をニコ生で生放送】
徳田は数年前に片倉まちプロと結婚したのだが、正式な結婚式の後に、立食形式の披露パーティーを開催した。
私が半分冗談で、そのパーティを連盟チャンネルで生配信しませんか? と言うと、森山会長は「いいね、やろう」とOKを出した。
マジか? と思ったが、基本的にファンが喜んでくれそうで、プロ連盟や業界にとってマイナスにならないであろうことはOKされるのである。
パーティには「むこうぶち」の天獅子悦也先生をはじめ、福本伸行先生や片山まさゆき先生など、有名な漫画家さんや、プロ雀士のみなさんが参加されていた。
そこに現れた徳田は、ドン・キホーテで3千円で買ったスーツというかセットアップ的な服だった。
なぜ私がその値段を知っているかと言うと、前日、徳田が黄色いビニール袋から白い服を出して「これドンキで3千円で買ったスーツ!」と自慢してきたからである。
おいおい、あれを着てきたんかよ。
伝説の3千円スーツを着て2021年も対局するケネス徳田
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