流れの正体 ライアン・モリス編
今回、この連載をnoteで再録するにあたって、M.Mizさんにご協力をいただいた。
私も版元の竹書房も古い「近代麻雀」を残しておらず、原稿のデータがなくなって困っていたところを助けていただいたのだった。
本当にありがとうございます。
【雀荘で麦茶を頼むアメリカ人】
今、私の目の前にはアメリカ人が座っていてレタスを食べながら言っている。
「いや、厳密に言うたら流れはあらへん。この連載では、流れはあるという前提で、コントロールできるかとか、読めるかということを議論しているけど、そもそも『流れなどない』と俺は思う。あれは百パーセント人間の錯覚やで」
彼はアメリカ人だが、流暢な関西弁で流れ論を否定する。そして、ここは本郷三丁目の焼き肉屋であって、リーチ麻雀世界選手権の会場ではなかった。
実は私は「近代麻雀」編集部の人たちに、パリで行われる世界選手権で世界各国のプレーヤーたちに「麻雀の流れ」についてアンケートを取ると言ってあった。
しかし、よく考えたら私の語学力でそれをやるのは容易ではなかったのだ。
At mahjong,Do you think that human can control his fortune?
こんなんでええんやろか?
中学生の英作文より低レベルな気がする。
不安になった私は出発前、プロのポーカープレーヤーで、シアトル在住時代は「近代麻雀」をお取り寄せしていたアメリカ人翻訳家のライアン・モリスに文章のチェックをお願いした。焼肉奢るから、頼むわライアン。ライアン、ライアン、これちょっと変やねん。俺の英語、変やねん。
実は2010年ごろまで私とライアンは「近代麻雀」で「ライアン・クロキの重箱の隅」という連載をやっていた。いわば相方みたいな存在だったのだ。
変やねん、変やねん、とライアンが私に麻雀の変なところを聞いてくるという企画だった。
そんな彼と出会ったのは今から約12年前、私が働いていた新宿の雀荘にライアンが現れた。
アメリカ人にしては小柄で、トム・クルーズとかマイケル・J・フォックスに似ている彼は「1人で打てますか?」と聞いてきた。そして、少しうろたえる私の心を読んだように彼は言ったのである。
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