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プロ雀士スーパースター列伝 岡田紗佳 編
【箱根麻雀駅伝青学代表】
初めて岡田紗佳を見たのは箱根の温泉旅館だった。2015年の12月に2日間かけて撮影が行われたのだが、私はバタバタしていて、温泉に入る余裕もなかった。
「大学対抗 麻雀駅伝in箱根」というテレビ東京の番組で、2016年のお正月にオンエアされた。岡田は青山学院大学の代表選手だった。
「non-no」のモデルという「存在感」もあったし、今と同じで「ワハハハハ!」と豪快に明るく笑うので、めちゃくちゃ目立っていた。
ただ、当時の岡田は「麻雀ができるモデルで女子大生」というだけで、まさか後にこの人が日本プロ麻雀連盟に入って、役満をアガりまくって、Mリーガーになるとは思わなかった。というか、当時は「Mリーグ」など夢にも思い描かなかった。
それからしばらくして、ある取引先の人から「モデルの岡田さん、麻雀好きらしいですね。プロ連盟でスカウトしないんですか?」と言われた。私に直接ではなく、山井弘事業部長が言われて、山井さんが私にその話を伝えたのだった。
萩原聖人さんと加藤哲郎さんに対しては、プロ入りを勧めたというか、個人的にお願いしてきたのだが。それは彼らの知名度が欲しかったからではなくて、麻雀が魅力的だったからだ。
だから最初は岡田のことを誘おうとも思わなかった。そもそも面識があったわけでもないし、彼女の雀力が高かったわけでもない。
ただ、山井さんとその方の関係性もあったので、前向きに検討したいという話になったから、話が前に進んだ。
「女流勉強会」という、若手女性プロ雀士の雀力向上のための勉強会があった。山井さんと森山茂和会長が話し合って、その勉強会に、岡田が特別に参加できるようにはかった。
その話を岡田の事務所の方に話したら「参加させてください」という返事があった。
私は意外だった。そんなに麻雀に興味があったのか、と。
そのことを岡田に聞いたら「当時は、ただの遊びだったのですが。そうやって私のために準備をしてくださったのであればと思って、受けさせていただきました」ということだった。
岡田は上海の小学校に通っていて、麻雀は身近なものではあった。が、それはあくまでも中国の麻雀であって、日本式麻雀に触れたのは大学生になってからだった。
2016年当時の岡田にとって、麻雀は友達や家族と楽しむゲームでしかなかった。
が、事務所を通じて誘いがあり、それを受けた時点で岡田にある「スイッチ」が入った。
「菅原千瑛プロ、井上絵美子プロ、小笠原奈央プロ、石田亜沙己プロといった面々に囲まれて、私だけただの麻雀好きだったので。これは頑張らなきゃ失礼だと思って、ついて行けるように勉強しました」
岡田は言うが、そうやって頑張ったところで、ついて行けるようになるものでもない。
岡田には「才能」があったから、短期間で上達できたのだと思う。
3ヵ月ぐらいした頃、山井さんから「岡田さん、メキメキ上達していますよ」と聞いた。
教えてもらって上達していく岡田の能力と、教える側の能力の、どちらも高いからそうなるのだろう。それを誰にも見せず、ひっそりとやるのはもったいない気がして「女流勉強会」を番組化するのはどうかと企画した。企画は通って、岡田の事務所からも了承をいただいた。
だから、この番組が始まったのは、ある意味で岡田のおかげなのである。
連盟ファンの皆さんには、番組を通じて、岡田がメキメキ上達していく様子を見守っていただけたし、一瀬由梨、内田みこ、大月れみ、松田彩花らを発掘することもできた。
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【役満アガりまくり女王】
そこから岡田が描いた「雀力の上昇を示す線」の角度はエグかった。
ただ「プロに混じったから」というだけで、そんなに急激に上達できるのだろうか。
「負けず嫌いで凝り性なんですよね。相手がプロでも、同じぐらいのレベルになりたいと思ったら、集中してやり始めちゃうんですよ」
岡田が通っていた中国の小学校が、半端じゃないスパルタ教育で、めちゃくちゃ勉強をさせられたらしい。その時の経験があったから、以降、何をやるにしても抵抗がなくなったという。
「日本の中学に通って、中三の夏の成績は偏差値50ぐらいだったんですけど。そこから勉強したら全国6位までいって、当時偏差値73だった青山学院高等部に合格することができました」
凄いことを平然と言う岡田。このようにトンデモないことを岡田は高校受験でやってのけ、その後、麻雀でも同じようなことを成し遂げたわけである。
努力する才能に加え、高性能の脳エンジンを装備している岡田が、麻雀の実力をつけていくのは当然だと言えるが、彼女にはプラスして「華」と「豪運」まで備わっていた。
2017年の冬に行われたプロテストに正規合格し、春にはプロデビューとなったのだが、そのテストの対局で、四暗刻タンキ待ちをアガった。
別にテストで役満をアガっても合否には影響しないのだが。岡田はその後も役満をアガりまくって「プロテストのスッタン」は伝説の幕開けのようになった。
プロ雀士としてのルーキーイヤーに出演した「八局麻雀」では、親番で四暗刻をツモって優勝した。文字通り、親の連荘なしで8局しか打てない麻雀で「残り2局で役満をアガらないと優勝できない」という状況でアガった。
普通は、プロ雀士を数十年続けてもできないような「持ってるアガリ」を、彼女は1年目にやってのけた。
同じ年に出演した「女流雀士 プロアマNo.1決定戦 てんパイクイーン シーズン3」でも優勝した。もっというと、この後シーズン4・5と優勝して、三連覇してしまった。
これだけ勝てば、色々な対局番組から引っ張りだこになって、たくさん出て、たくさん役満をアガって伝説を作った。
「THE われめ DE ポン!」では2回の優勝を果たしている。また、その時は優勝できなかったが、九蓮宝燈をアガったこともあった。しかも、そのアガリ形は、約10年前に小島武夫プロが「第3回モンド名人戦」でアガった形とまったく同じ、五萬と九萬のシャンポン待ちだった。
「天空麻雀23」では、オーラス、ただアガれば優勝の局面で大三元をアガって優勝した。
「麻雀最強戦2022 Mリーグスペシャルマッチ」では、国士無双13メンチャンをアガって優勝した。
プロデビューして5年とか6年で、これだけ役満アガってこれだけ優勝した選手はいなくて、麻雀界においては大谷翔平クラスの「漫画やんそれ」的なキャラ設定なのである。
2019年「Mリーグ」に「KADOKAWAサクラナイツ」が新規参入する際に、ドラフト会議で指名され、Mリーガーになった。
トッププロが集まる「Mリーグ」にも順応し、好成績を残して、チーム優勝にも貢献できた。
【誹謗中傷との向き合い方】
順風満帆すぎるプロ雀士人生のように見えるが「苦悩」を抱える時期もあった。
活躍する場が増え、麻雀界の中で目立つにつれて「下手」とか「運だけ」とか「性格悪い」とか「ブス」と言った、暴力的な言葉の石つぶてを投げつけられるようになっていった。
やられた者にしか分からないのだが、言葉の石でも、当たったら痛い。物理的に青アザはできないが、脳に同じようなダメージを受ける。
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