流れの正体 デジタル/オカルト論争ふたたび
【すぺねこさん】
最近、私のことを呼んでくれる大阪の「フュージョン」という雀荘があって、そこに麻雀界では有名なすぺねこ(ΦωΦ)さんという人が来てくださった。
すぺねこさんのことは10年以上前から知っていた。片山まさゆきさんと馬場裕一さんが2人で「グッドプレーヤーズクラブ(GPC)」という麻雀サークルというかサロン的なものを立ち上げた時に応援してくださったからだ。
GPCは「グッドプレイヤーは相手を認める」「グッドプレイヤーは自分にのみ厳しい」「グッドプレイヤーは上機嫌である」という3条からなる憲章を掲げた、素晴らしいイデオロギーを持った運動体なのだが、なぜか立ち上げ当初は批判にさらされた。
今のようにSNSは発達しておらず、もっぱら「2ちゃんねる掲示板」にGPCへの批判が書き込まれていたのだが、それに対してすぺねこさんがGPCや片山さんをかばうような発言をしていたのだった。
また、GPCに寄付をしてくださったり、バビロンの事務所にお中元が贈られてきたこともあった。
その後、Twitterですぺねこさんがプロ連盟のことを叩いているのを目にしたが、それまでのことがあったので「この人はただストレス発散のために、やたらと他人を叩く愉快犯ではない」と思った。たぶん、彼なりの正義とかルールがあって、それに沿って、それなりの信念があってやっているのだろうと思っていた。
だから、すぺねこさんが誤解していると思しきことがあれば、DMを送ったりもした。逆に、すぺねこさんからDMで質問をされたこともあった。そのやり取りの中で私が受けた印象は「ある種の誠実な人」だった。
だから一度は会ってお話してみたかったのである。
大阪「フュージョン」でそれは実現したのだが、その際にすぺねこさんから「10年ぐらい前に連載していた『流れの正体』をnoteに再録したら面白いんじゃないですか。僕は叩きますけど」と言われた。
確かに、面白いと思った。
必要ならというか、それこそ流れ次第では、新しく書き下ろすこともできる。
連載当時から10年近く経っているので、アンケートを取り直すのも良いだろう。
東京に戻って、さっそく着手することにした。
というわけで、以下は2014年の1月発売号に掲載された「流れの正体」の第1話である。
明らかな誤字や脱字以外は極力直さないようにしてあるので、時代背景などは「10年ぐらい前なんだなー」と思いながら読んでいただきたい。
【連載第一話】
あの男には今一時(いまいっとき)の気持ちがない…。奴は勝負を長いスパンで考えすぎる。その根っこを支えている思想は「確率」という名の信仰だが、その「確率」で勝てるのはぬるま湯の状況だけ…。つまり半荘を20も30も打ってしかも高いプレッシャーを生まない程度の賭け金という…そういう条件のもとだけだ…
これは「アカギ」第38話「一時」で、平山幸雄(ニセアカギ)の麻雀を評した川田組長の言葉である。
平山は類まれなる計算能力の持ち主で、当然麻雀もうまい。常に損得勘定を正しく働かせ、ある意味で正しい行動をとる。いわゆるデジタル系雀士の典型だ。
ところが、そのある意味での「正しさ」が命取りとなり、裏社会の代打ち、浦部にオモチャにされてしまった。
今回は川田組長のセリフを拝借したが「デジタル麻雀だけでは勝てない」とする雀士たちの論調はおおむねこんなところであろう。
「デジタル麻雀は否定しない。基本だからできて当然。確率も知っていて当たり前。しかし、それだけでは勝てないのが対人ゲームである麻雀。デジタルだけを信奉していては成長がない」というものである。
一方デジタル派の意見はこうだ。
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