萩原聖人さんプロ連盟入りの舞台裏【後編】(文・黒木真生)
【椅子取りゲーム】
勝又健志プロも沢崎誠プロも「萩原さんを連盟に誘うべきだ」と言った。
2人とも、どこで誰から聞いたのかは分からないが「Mリーグ構想」を知っての発言だった。つまり、萩原さんを招き入れれば、その分「椅子」は1つ減るということは理解していたはずだ。
プロ雀士というのは自営業者だ。それもそんなに余裕はない。まずは自分のことを考えなければならず、だったら余計なことは口に出さない方が賢いのかもしれない。
だが、この時の2人は、そんな「椅子取りゲーム」の有利不利ではなく「壮大な構想を成功させるためにはどうするべきか」を考えたのだろう。
萩原さんがいるMリーグといないMリーグでは話題性が断然違う。萩原さんと戦えば対局が盛り上がる。萩原さんは面白い麻雀を見せてくれる。ファンはそれを見て喜ぶ。そこで自分が勝てば、自分の株もグングン上がる。
業界全体を考えると言えば聞こえは良いが、それは結局自分たちのためなのである。
醜い椅子取りゲームをするよりも、椅子の数を増やすようなことを考える方が良い。
2人は、私にそう言えば動くだろうと読んだ。
私はその思惑通り、すぐに動いた。
【森山会長との会談】
不思議なもので、何かをしようとすると、別の誰かがそのきっかけをくれたりする。それで迷っていたことを決断できたり、スルーしようとしていた問題点とちゃんと向き合うことができるものだ。
私が萩原さんに連絡を取ると、萩原さんも「黒木にお願いしたいことがある」と言う。
「俺、プロ連盟に入れてくれるかな」
それ、僕がお願いしようと思っていたことです。
「いや、まあでも、俺がちゃんとお願いして、入れてもらうっていうのがスジだよ」
萩原さんもすでに構想を知っていたのだった。Mリーグの記者発表があったのは2018年7月17日で、その翌日、私と萩原さんと、森山茂和プロ連盟会長の3人で会った。
萩原さんが、会長に「お願い」をするのである。
実際問題、お願いしたいのは私や会長の方なのだが、萩原さんは絶対に「スジ」を通す人である。
「おこがましいかもしれませんが、Mリーグでは、僕にしかできないことがあると思います。だから、Mリーグに参戦するために、日本プロ麻雀連盟でお世話になりたいと思います。もちろん、僕がMリーガーとして選ばれなかったとしても、僕はこれからずっと連盟員です。役者の仕事の都合で出られない対局も多いかもしれませんが、それでもよければ、入れてください。よろしくお願いします」
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