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雷電の苦悩 黒沢咲は赤五萬をチーするべきだったか

【雷電は阪神】

 私は隠れ雷電ファンなので、TEAM RAIDEN/雷電の試合はほとんどすべて見ている。リアルタイムで視聴できなければあとから見る。
 日本プロ麻雀連盟の理事の立場で特定のチームをTwitterなどで応援するのはよろしくないかもしれないから「隠れファン」なのであって、応援する気持ち自体は別に何の問題もない。

 萩原聖人さんの書籍を竹書房から出版する際、私が文字起こしを担当したのだが、そのためにMリーグ初年度は毎試合のように雷電の控室にお邪魔していた。

 そういったこともあり、心情的に雷電を応援したくなるのだ。
 それと、チームカラーに黄色が入っているのも阪神タイガースを彷彿とさせ、私のDNAにはたらきかけてくるものがある。

 それと、本当にちょっと阪神タイガースみたいなところがあるのが雷電なのだ。
 
 こういうことを言うと阪神ファンじゃない雷電ユニバース(雷電ファンのことを萩原さんが名付けた)たちが怒るかもしれないが「期待の裏切り方」が阪神タイガースそのものなのだ。
 「なんでここで!」とか「どうして今日こうなるの!」とか。
 でも、そればかりならファンをやめてしまいそうなのだが、忘れたころに勝って喜ばせてくれる。
 試合が始まる前から期待と不安が入り混じって、何とも言えない気持ちになってソワソワする。それが阪神と雷電だ。
 
 まるでヘビースモーカーからタバコを取り上げて、数日ぶりにニコチンのにおいをかがせた時のように、私の脳は物質を分泌する。阪神の試合前と雷電の試合前は、同じ脳内麻薬が分泌されるのである。
 
 奇しくも巨人ファンの萩原さんがMリーグ発足当初、言っていた。

 「雷電のファンは阪神ファンみたいになってほしい」

 それぐらい熱狂的なファンであってほしいという意味だと思う。
 しかし私は、勝手にだが、ダメになっても見棄てないファンのことでもあると思っている。

 阪神ファンはお人よしだ。言葉ではボロクソ言っていても、誰かがヒット1本打てば喜ぶ。ボロ負けしていても「明日につながる一打」という無理矢理な理屈で喜んで酒を飲む理由にする。
 歴史的にずっとやられ続けている讀賣巨人軍の原監督が解任された時、甲子園で異例のセレモニーが行われた際には、温かい拍手で原さんを送り出した。結果、数年後に戻ってきた原巨人にボコボコにされる。

 雷電ユニバースたちも同じだ。成績が低迷しても雷電を決して見棄てない。野次ることはあっても、それは愛情の裏返しだ。
 
 ただ一つ、阪神ファンと違うのは、雷電ユニバースの皆さんは、他チームへの野次を飛ばさないというところである。

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 本当に阪神ファンと巨人ファンの良いところだけをとったような、素晴らしいファンだと思う。

【鳴かないという実験】

 そんな温かいファンに見守られ続けている雷電だが、今年も今のところ低迷している。
 開幕当初はいきなり4人でトップを取るなど首位に立ったりもしたが、今は誰が出て行っても負けてしまうという最悪の状態で、11月25日現在、最下位だ。
 
 昨日の2試合目で本田朋広プロが2着を取ったが、やはりトップでなければポイントは微増するだけなのがMリーグだ。

 その25日の試合は、私は私の戦いをやっていたので見られなかった。
 「麻雀格闘倶楽部」の投票選抜戦が行われており、ちょっとでも気を抜くと、私も最下位になってしまう。私は前回も最下位だったので、連続最下位だと、今度こそ出演メンバーから外されてしまうかもしれない。そういう危機感があって、時間を見つけては自転車をこいでゲームセンターへ行き、プレーしているのである。本当に、私のサポーターの皆様、申し訳ありません!

 そういう事情で、黒沢咲プロと本田プロの試合は気になっていたが、帰宅してから見ることにしていた。

 実は私は黒沢さんの麻雀にものすごく注目している。麻雀というか豪運に、である。

 生まれつき運の凄い人などいないと思っていたが、黒沢さんを見ていると「やっぱりいるんじゃないか」と思わされてしまう。
 そのぐらい黒沢さんは配牌が凄いしヒキも強い。こんなこと、真顔で言うと「バカなの?」と言われてしまいそうだが、そうなのだから仕方がない。

 ただし、豪運すぎるという苦悩を彼女は抱えている。なぜか分からないが、鳴くと悪いことが起きるのだ。
 Mリーグ開幕にあたって、竹書房から「Mリーグ選手名鑑」という本を出したが、そこでも私は同じことを書いた。その時は「頭だいじょうぶか?」と言われたが、今では「黒沢は鳴かない」というのが常識になっている。ただ、鳴くととんでもないことが起きることは、まだ半信半疑のファンが多いようである。

 そしてまた、それは本人も半信半疑であり、苦しみながら戦っているのだ。

 25日の1回戦、東1局について、黒沢さんからLINEがきた。

 「あれは鳴くべきだったのでしょうか?」

 瑞原明奈プロからリーチが入った。宣言牌は赤五萬だった。これをチーするとハネ満確定ののシャンポン待ちになる。

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を暗槓しており、ドラは四萬・九萬 

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