若手プロに知ってもらいたいこと 麻雀に正着打はあるのか?
【ことはそう単純じゃない】
日本プロ麻雀連盟の育成プログラムに講師として参加することがあるのですが、受講生から「この局面、この手牌での正解はどれですか?」と聞かれたことがありました。
私は「そんなの分かったらタイトル獲れてますよ」と答えました。そして「たぶん、すでにタイトルたくさん獲ってる人も『正解』は知らないと思います」と付け加えました。その上で私の見解を示して、別の講師はまた違う見解を示しました。
要するに「自分がこうしたいならこれ。でもこうしたいならこっち」みたいな答えしかない局面もあるんですよね、麻雀には。そして「こうしたい」が人によって違うことがあります。たとえば「デカトップとりたいならこれ」とか「プラマイゼロぐらいにまとめたいならこっち」という風にです。もちろん「普通のトップをとりたい」というのがノーマルなミッションだと思いますが、それでも答えが2種類以上になることがあります。
それと「なぜこれを鳴いたの?」とか「なぜこれをリーチしたの?」と聞いた時に「プレッシャーかけてオロしたかった」という答えがありました。
もちろん、そういう考え方もあるとは思いますし、私も実戦でそういう戦略をとることはあります。
でも「具体的にどのようなプレッシャーがかけられて、どういう対処をされそうか」と聞いたら「それは分からないです」と言う人もいました。
リーチが入ったらプレッシャーがかかるのは事実です。でも、プレッシャーがあるからどうなるかということを、厳密にシミュレーションするのはかなり難しいんです。
特に、一発・裏ドラがないプロ連盟の公式ルールだと、リーチの打点がある程度推測できてしまうケースもあります。「この牌なら最高で3,900点」というリーチだってあるので、巷の赤入り麻雀と比べたら、リーチのプレッシャーは少し小さくなります。
また、リーチが入ると局面が単純化することもあります。周囲がリーチによってオリた結果、リーチと親のチャンス手の一騎打ちになる、という可能性も高くなるのです。ヤミテンにしておけば他家が親のチャンス手を安手で蹴ったかもしれないのに、リーチを掛けたために、親満に放銃した、という展開だって考えられます。
もちろん、そういうことを言い出したらキリがないのですが、キリがないぐらいに複雑だから、簡単にこれが「正解」とか「リーチすれば相手がオリるだろう」みたいな「決めつけ」は危険だと私は思います。
【名人様に振り回されないように】
麻雀打ちとして「何が正解か」を探求する気持ちは大切です。一打一打、可能な限り「正解に近い打牌」をしたくなるのは当然ですが、でも、少なくとも自分で決断した「正着打」を打ってほしいと思います。「本に書いていたから」とか「勝又さんが言っていたから」とか、そういう「他人から聞いたやつ」はやめましょう。
なぜなら、局面は似ていても微妙に違っており、たとえば対局者の性格が違うだけで正着打は変わるからです。
「他人から聞いたやつ」を自分なりに消化して、自分のものにした上で、新たな局面に対して自分なりの「正着」を見つけるようにしましょう。
最悪なのは、SNSやインターネット配信番組のコメント欄に降臨する「名人様」の意見を聞いてしまうことです。
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