ケネスとの結婚を決めた理由【文・ヨメス】
「結婚したら、犬と猫両方飼おう」
付き合ってまもなくの、ケネスの発言である。
この時点では、ちゃんとしたプロポーズもないし、それらしき行動すらされてない。
ただ、付き合いたての浮かれたテンションで思わず口走ってしまったのだ。
かなり脳内お花畑だが,
「犬の名前はポンで、猫はチーね❤」
と答えた私もかなり脳内お花畑だったと言えるだろう。
そもそもお互いいい歳だったので、結婚のことはなんとなく考えていた。
ただ、結婚後の未来をはっきり描いたのは、あの日が初めてではないだろうか。
その日もケネスは酔っ払っていた。
子どもができる前、2人とも夜更かしが当たり前だったのだが、特にケネスは、夜遅くまで酒を飲み、寝落ちするのが日課だった。
下戸の私はケネスに付き合うことなく、さっさと先に眠ってしまうのだが、その日の明け方近く、事件は起きた。
「うわぁ!」
突然のケネスの叫び声に、私は飛び起きた。
「どうしたの!?」
ケネスは呆然と布団の上に座り込んでいた。
そして、うめくように、掠れた声でこう言ったのだ。
「…もらし…ちゃった…」
もらしちゃったのである。
まるで母親に叱られるのを恐れる幼児のように、ケネスはこわごわと告げてきた。
「…え」
「つまり」
「つまり?」
「オシッコでちゃった」
わかっている。
私の「え」は、言葉の意味がわからなくて出たわけではない。
37歳の成人男性が、おねしょをしてしまったという事実をとっさに受け止められなくて、出た「え」なのだ。
ケネスはショックを受けており、動けないようだった。
私は仕方なく、ケネスを布団の上からどかし、シーツを剥がして洗濯機に入れ、布団は、それと思しき部分に除菌スプレーをかけて、ベランダに干した。
5階東向きのベランダには、朝日が差しはじめていた。
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