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プロ雀士超技巧伝・堀慎吾⑦「1000万円の着順勝負!親リー一発目にその牌押せる!?」文・須田良規
<サクラナイツと風林火山の大勝負>
2024年5月17日(金)、
今期のMリーグも無事終了。
優勝はU-NEXT Piratesになりました。選手のみなさん本当にお疲れ様です。
さて、最終戦はもう優勝の決まった状況で、なんなら赤坂ドリブンズの準優勝もほぼ固い感じになり、(7万点以上のトップラスとかされなければ良い)
実は3位争いが激熱でしたよね。
Mリーグは1位が5000万円、2位が2000万円、3位が1000万円の賞金があり、4位はゼロです。
これは他の敗退した全てのチームと同じ。結構キツイ現実です。
そしてこの最終戦、EX風林火山が△43.8p、KADOKAWAサクラナイツが△47.8pと完全に着順勝負。
1000万円かゼロかの差し馬です。
この常人なら震え上がる半荘に挑んだのが、勝又健志選手と堀慎吾選手の両名です。
なんと昨年も勝又さんは似たような順位戦を戦っています。すげえ。
「企業に入る賞金だから選手は別に関係ないのではー?」
と思われる方もいるかと思いますが、
僕の聞いた様子では、チームと企業全体でもかなり重要なことみたいですよ。Mリーグはお金かかりますし。
まあ多少のお心づけも選手にはあるんじゃないでしょうかね。憶測ですが。
というわけで、もう僕らが予想もできないような重圧のもと、選手たちは戦ったわけです。
この半荘、勝又さんは展開に恵まれず、堀くんはわりと大きくリードする形で南2局を迎えます。
<運命の南2局>
勝又さんは親番。北家の堀くんは15800点上にいます。
この親をどうしても蹴りたいのはわかりますよね。
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7巡目、勝又さんがここから打8m。
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北家の堀くんがすかさずポン。
すご。
ノータイムでしたよ。
親の現物をポンして、すぐ親に手番を回すという。
元々の形はカン7mとカン8sのイーシャンテンなんですが、
8mをポンです。
カン7mはどうしてもネックですが、こうすると6mと9mのポンテンが取れます。
実際勝又さんに7mはトイツ。山にもなく、ここが残ったらどうにもなりませんでした。
敵の親を蹴りたいとき、アガリトップのときなどに是非応用したいポンですね。
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そして真っ直ぐ手を進めている仲林圭くんから6mをポン。
カン8sで最速テンパイです。
素晴らしい。
8mポンが生きましたよね。
しかし、勝又さんも当然黙っているわけがありません。
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12巡目に燦然と輝く赤5pをグイっと引き入れて、正に乾坤一擲のリーチを宣言します。
怖ぇ。怖すぎる。
リーチ赤ドラの69sリャンメン親リーチ。
敵は15800点差です。
4000オールでひと捲りというやつです。
これを受けた一発目──!
<堀くんの長考>
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堀くん、ド無スジで尖牌と言われる7の数字です。
ピンズのバカ高い河に対し、7p。
南2局、15800点自分が上の親リーチ一発目。
自身に親番はもうありません。
待ちはカン8sという愚形。
安全牌はアンコの発があります。
捲られたら1000万円を失います。
この牌、打てますか?
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うう・・・。厳しい。厳しすぎるだろ。
1000万だぞ。
あ、こういうこと書くと麻雀のギャンブル感出すな~って仰る方もいるんですが、
賞金の話ですからね。違いますよ。許してください。
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堀くんが考えます。
いやこりゃあ・・・やめるでしょう、考えても。オリの長考でしょ。結局待ちはこれ読めないもん。
いつもは待ちビタ止めするけどさ。
そして何秒かの静寂の後。
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ズッ、パーン。
行ったよ、堀ぽよ!!マジか!!
この瞬間、堀くんの打牌には魂を感じました。
この悪夢のような状況の死線をくぐり抜けた先、堀くんの目に映ったのは──、
KADOKAWAサクラナイツに1000万円をもたらす、渇望した8sでした。
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うおおおお!!!!!
震えた、震えたよこれは。
今期のMリーグの最後に、とてつもなく戦慄させる局が訪れました。
だいたい7p押したってカン8sがそうアガれる未来があるとも限りません。
その勇気と、結末に感動したのです。
<とりあえず堀くんに聞いてみよう>
一応僕はMリーグの閉幕後に堀くんにLINEしました。
あの押し凄かったよねぇ、と。
でも、そこに何らかの理由があるとはあまり思えなかったんですよね。
なんとなく危険なのは25p36p47p58p69p58s69sとかそんな感じで、
7スジくらいありゃあ行くべきってくらい?
1/7で14%だし。
「ああ、でも7pは押しやすい牌なんですよ」
えぇぇ?
始まったよ。日本堀慎吾研究会の興味を喚び起こす話が。
聞きたい書きたい。
やっててよかった定期購読。
または150円でその思考が知れちゃうの?
「でもちょっとマニアックな話になるんですけどね」
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