辛口批評!鈴木優は本当にMリーグで通用するのか 文・ZERO / 沖中祐也
Mリーグが開幕して、まもなく一ヶ月が経とうとしている。
その一ヶ月で、鈴木優はいともあっさりとMリーグに溶け込んだ。
私は開幕前からすぐにブレイクすることを確信していた。
理由は3つある。
① 麻雀に対する真摯な姿勢
とある人はJリーガーみたいと語ったユニホーム姿だが、場を見つめる視線に私が感じるのは「勝ちへの渇望」。
捨て牌だけでなく、仕草や精神状態までを見抜かんとする姿勢は端正なルックスと相まってとても絵になる。今の言葉で言うと「映える」ってやつだ。
最高位になろうとも、Mリーガーになろうとも、麻雀に対する姿勢は全く変わらない。
とあるキンマの質問に優はこう答えている。
お金を好きなだけ使える、時間を好きなだけ使える、どっちがいい?
――時間を好きなだけ使って麻雀を打ちまくりつつ、メッチャ働いてお金も稼ぎます!
不老不死の薬か人生やり直しボタン、どっちがほしい?
――どっちも必要ないです…強いて言うなら、やり直しボタンを使って3歳から麻雀をします。
未来にいける能力、過去に戻れる能力、どっちが良い?
――これもどちらも必要ないですが、過去に戻れる能力でしょうか。3歳から麻雀をします。
麻雀が二度と打てなくなる代わりに、◯◯はできるようになる。何なら麻雀をやめられる?
――すみません…代わりが何も見つかりません。
完全に質問者泣かせである。一生懸命麻雀以外のエピソードを引き出そうとしているのにこの男と言ったら。
何十年と麻雀を打ち続けているとふとモチベーションが低下する瞬間があるものだ。
努力・勉強を積み重ねても勝率が0.01%上昇するかどうかの話で、上昇すればまだ良い方なのだが、引き出しが増えたせいで弱くなることだってある。
一番恐ろしいのは、自分が強くなっているのか弱くなっているのかすらわからないことだ。
確率の波に翻弄され、100半荘程度なら負け越してしまうことだってザラである。
麻雀を覚えれば覚えるほど運という強大な壁に絶望してしまうのだ。
時にその壁を見上げるのがしんどくなることだってある。
しかし優のインタビューの答えを見る限り、どれだけ勝ってもどれだけ負けても麻雀に対する探究心を失っていないことが分かる。
「才能とは、続けること」
これは羽生善治先生の名言だが、一つの物事を続けるためには好きである必要がある。
掛け値なしに麻雀が好き。
わざわざ優に取材しなくても、そのことはもう十分に知っている。
② やわらかい語り口
10/18に行われたプレイヤー解説は非常に好評だった。
というよりはこれが本来の優の姿であり、初めて解説をした去年の解説があまりにも堅すぎだったのだ。
――もう昨年は何を喋ったか覚えていないくらい、ガチガチでしたね。
解説というのは人によって合う合わないがあるのだが、今回の優の解説を悪く言っている人は1人もいない。
これまたどなたかが「体操のお兄さんみたい」と表現していたのが印象的で、「3mがノーチャンスなので」ではなく「3mが4枚見えているので」と、なるべく専門用語を避けながらもライト層にもわかりやすく、かつコンパクトにまとめる。
体操のおねえさんっぽい節もある松嶋とのコンビも抜群で、わかりやすく楽しい解説という印象だった。
――今年はMリーグ会場にも慣れたこともあり、いつもの調子で話すことができました。好評のようで良かったです。
③ 意外な天然キャラ
(おしえてパイレーツにて)
これは優が村上のものまねをしたときのもの。
自らの胸をもみしだき、はぁはぁ言い出す姿は危うく放送禁止になってしまいそう。
瑞原「そんな人おらんてww」
仲林「変態じゃねぇかwww」
麻雀に全振りしてきたせいか、素の優は少しポンコツである。
麻雀中の真剣な表情とのギャップにより、親しみやすく感じた人も多いのではないだろうか。
① 麻雀に対する真摯な姿勢
② やわらかい語り口
③ 意外な天然キャラ
の3点によって一気にファンを獲得し、Mリーグに溶け込んだ優だったが、肝心の麻雀は決して良いスタートとは言えなかった。
解説や親しみやすさを褒められるのは嬉しく思ってるだろうが、優の本分は麻雀プロだ。
麻雀の勝ちが自分と取ってくれたPiratesへの最大の恩返しとなると考えている優にとっては、まず麻雀ファーストで考えているはずだ。
そこで今回はデビュー戦以降、どう戦ったのか、という麻雀面を忖度なしで批評していく。
10月3日 第1試合
優は開幕戦に抜擢された。
その開局である。
優は魚谷(対面)のリーチに対し、ここから2mを切った。
4sをツモってペン7s待ちでリーチを打ち、5200点の放銃。
これに対し「8s9sを払っていけば」という意見もあったが、私は打2mがごく自然な選択だと思う。
2m3mと落としていくのと8s9sと落としていくのでは危険度が大きく変わってくるので、わざわざ危ない橋を渡る必要はない。
とはいえ14mの景色が良く魚谷のリーチが愚形の可能性もあるので、8s9sを切っていくが戦闘民族っぽいとは言えるかもしれない。
また「場に高いペン7s待ちでリーチにいくのはやりすぎでは?」といった意見もあったが、それはリーチの時点で山0だったからゆえの神視点バイアスだろう。
愚形2600のテンパイはリーチしたほうがマシだ。
宣言牌3mが通りそうな牌というのが大きく、相手から先に放銃抽選を受けさせることができる。
なにはともあれ、優のデビューは5200の放銃から始まった。
――放銃した瞬間、チームメイトや監督の顔がよぎりました。自分のことだけを考えて打つことが結果的にチームのためになる、ということは分かっていたしそうするつもりでいたのですが、卓に着いたときのプレッシャーは体験してみないと分からないものですね。
少しずつ優の歯車が狂い出したか。
過去の弟子である魚谷がリードして迎えた南1局。
優はここから1sを切った。
ストレートに中、安牌を残しておくにせよ2mでいいのではないか?
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