伊達直樹へ【文・長村大】
もう、10年も前になるだろうか。
チー、と下家が発声し、リャンメンターツを開く。まだ3巡目である。
「ツモ、ゴットーです」
次巡すぐにツモアガったそいつの手牌を見て、さすがに驚いた。
メンゼンでいくらでもテンパイするだろ、相変わらず辛いな──これくらいのことで悔しさを面に出すほどうぶではなくなっていたが、それでもおれは自分のドラ暗刻の手牌に一瞬目を落としたあと、下家を見る。
伊達直樹。かつておれが所属していた日本プロ麻雀協会のトップリーガーだった、タイトルも多く獲得した男である。
だが、それもすべて過去形である。現在の伊達の行方は、杳として知れない。しばらく休会扱いとなっていた協会も、退会になった、らしい。
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