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馬場さんのいなくなった世界【長村大】

 のっけから宣伝みたいで恐縮だが、荻窪でかき氷店をやっている。朝の開店前は、掃除や仕込み、メニューの書き換えなど存外に忙しい。だから━━おれがケネス徳田からのメッセージを読んだのは、それが送られてきて2時間ほど経ってからであった。
「それ」は意外な知らせではなかった。あるいは心の奥底では、その知らせが来ることを毎日恐れていて、しかし遠からぬ未来に必ず来ることを確信してもいた。見舞いに何度か足を運ぶうちに、人は心の準備を自然としてしまう。
 馬場裕一の、死。

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