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相思相愛【角谷ヨウスケ】

ぼくは幸せな結婚を知らない。
いや、正確に言うと「知らなかった」。

ぼくの父はずいぶんと自由な人で、母と結婚していても、つねに彼女がいるような人だった。

幼き頃に父に遊びに連れていってもらうと必ず「お父さんの会社の人や」「お父さんの友達や」という綺麗な女の人と同伴していた。
(「会社のお姉さん」たちからはずいぶん優しくして貰った覚えがあるが、今から考えるとあれは...。)

そんな父なので家に帰ってくるのは週に1回程度。幼少期のほとんどは母親との2人暮らしみたいなものだった。

お父さんというのはたまにふらりとやってきて、遊びに連れて行ってくれる人。

ただ子どもというのは素直なもので、この家庭を特に不幸だとか、悲しいと思ったことはない。
何せ生まれた時からそうなので、それが当たり前なのだ。

しかし、小学校に入って道徳の時間だったか、家庭科の時間だったか。「家族のだんらん」という画像を見た。

あれれ?ご飯の時にお父さんも一緒にいるのだが????

うちの家ではご飯というとお母さんと2人で食べるものだった。お父さんがいた記憶などほとんどない。
学校の授業で初めて、「お父さん」というのはどうも毎日家に帰って来るのが普通らしいと知る。
なかなかに衝撃を受けたのを思い出す(笑。

時は流れ大人になり、ぼくにもお付き合いする女の子ができた。
そこで思う。

「結婚とは何だろう」
「普通の世の中では、結婚したら彼女は作らないらしい」
「結婚したら毎日家に帰るらしい」

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