「二人が危惧する『エセデジタル』、そして小林剛が麻雀界でたろうとだけしか話せないある事象とは?」鈴木たろう・小林剛対談スペシャル企画(2)
近代麻雀note・Mリーガー対談スペシャル企画。「オカルトバスターズ」が結成されてから、20年近い月日が経った。トッププロとなった彼らの活躍もあり、オカルト思考については過去の遺物となりつつある。だがその一方で、見過ごせない新たな考え方が出てきたという側面もあった。(全3回の2回目/#1、#3へ)
[文・東川亮]
■「エセデジタル」派の台頭
――では、現在の麻雀界におけるオカルトは、当時に比べどのように変わってきたと感じていますか。
小林 だいぶ変わりましたよね。ほとんどのプロがオカルト派だった当時に比べ、ここ10年くらいで比率が逆転して、オカルトが圧倒的少数派になりました。我々が20年前に考えていた中ではだいぶいいほうに、まともな麻雀界になってきたかな、と思っています。
あと、オカルトを言う人も「これはオカルトになっちゃうんですけど…」と遠慮がちに言うようになってきました。もちろん、まだオカルト派がいるのは残念なところではあるのですが、おそらくなくなりはしないでしょう。「科学的根拠のないオカルト」として捉えつつ、ただ自分はこれを信じているんだよ、という控えめな人がまだちょっと存在するくらいで、非常にいい方向にはきていると思っています。
たろう 僕は「昔よりマシ」くらいの感覚です。確かにオカルトはなくなってきましたけど、逆に「エセデジタル」みたいな人が増えたと感じています。
何かを主張したいときに後押しとして都合のいいデータを使う人や、それに騙されてしまう人たちね。
小林 たとえば、タンヤオドラ1のリャンメン待ちを、昔だと「流れが悪いからダマ」という人がたくさんいたんですよね。でも、今の人たちは「必ずリーチだ」になりつつあって。
我々としては、たまにダマにする局面のことも考えたいわけなんですけど、そこら辺が軽視されている、ということですね。今時の人は「全部リーチだ、ダマはぬるい」と言っちゃうんですよ。
たろう それがデータの弊害というか。剛君の言ったタンヤオドラ1は、全部リーチか全部ダマかで言えば、絶対に全部リーチのほうが得ですよね。でも、強くなるということはそれをさらに細分化していく作業のはずなのに、そこをサボってしまうし、細分化しようとする人が「ウマぶり」みたいに言われてしまうことも出てきているんです。
「データ上こうだから絶対にリーチでしょ!」みたいになって、リーチをかけない人をそれだけでバカにするし、データを見てそれを信じてしまう人も増えてしまっている。今はオカルトがなくなってきた代わりに、そういう人が出てきてしまっている印象です。
小林 反面、プロの中ではいろいろ理由をつけてダマにしている人も増えて来た気がしていて、それは増えすぎじゃないの、という気はしています。
たろう 逆にね。
小林 みんなもっと素直に打てばいいのに、って。いろいろ考えるのが流行りすぎていると感じるところもありますね。
■「風」の実況・日吉辰哉
――最近の麻雀界で言うと、Mリーグ実況で人気の日吉辰哉プロは、「風」に代表されるようなオカルトっぽい話をされていますよね。面白いですし、視聴者が楽しむ分にはいいのかなとは思いますが、お二人はどのように感じていますか。
小林 僕はやり過ぎな気がしていますけどね。ちょっと日吉さんの麻雀観が出すぎているんじゃないかな、と思います。「ファインプレーをしたら報われたい」とか、そういう一つの見方を視聴者に押しつけてしまっている感じがするので。
たろう 僕も同じ感覚は持ってます。ただ、それに感化されちゃう人が多いのがちょっとな、って思います。
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