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新宿を歩いていた【文・長村大】
新宿を、歩いていた。
次の一歩を踏み出そうとしたそのとき、おれは右足の先の地面にあるものを発見して、少しバランスを崩しながらも、着地点をずらす。
それはネズミの死骸であった。
歌舞伎町にいるようなでっかいやつじゃない、もっと小さなネズミ。あるいは子供なのかもしれない。おそらく死んでからまださほど時間が経っていないのだろう、それ──かつてネズミだった「それ」──はまだ新宿の鳥たちに荒らされることもなく、ただ眠っているようにも見えた。
でも、そのネズミは、5分前か何時間前かわからないけれど心臓の動きを止めてしまい、彼──あるいは彼女──の時間が再び動き出すことは、もうない。
そしておれは死んでしまったネズミを踏みつけてしまわなくてよかったと思い、僅かな時間ネズミに哀悼の意をささげ、また次の一歩を踏み出す。前の一歩と次の一歩に違いはない、次の一歩はその次の一歩の手前なだけだ。
時計の針は無限に回り続ける、時計の電池が切れるまで。
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