─いつかはMリーグの舞台へ─ 選ばれなかった雀士たちの誓い
取材・文/東川亮
Mリーグ2022-23シーズンのドラフト会議では、U-NEXT Piratesが鈴木優・仲林圭、KADOKAWAサクラナイツが渋川難波を指名し、新たに3名のMリーガーが誕生することになった。しかしその裏には何百、何千という麻雀プロがいて、さまざまな麻雀プロに、指名への期待が寄せられていた。選ばれなかった者たちは今何を思い、これから何をしていくのか。ドラフト直後の、切なる思い。
醍醐大(最高位戦日本プロ麻雀協会)
「やるべきことは変わらない たゆまぬ自己研鑽の先にMリーグの未来はあるか」
醍醐大は、今回のドラフトで有力候補の一人に挙げられていた打ち手だ。所属する最高位戦日本プロ麻雀協会での成績は圧倒的で、2020年には同団体の頂点「最高位」を獲得。しかし今回、同団体から指名されたのは、「現」最高位の鈴木優だった。
「1年ズレていれば・・・みたいなことは、もちろん思います。でも、タイミングについてはしょうがないですよね。Mリーグ入りへの意識は今回選ばれた鈴木優さんの方が強かったのかなと思いますし、個人的には割り切れてはいます」
気持ちの整理はついている。しかし、心残りもある。
「ドラフトが近づくにつれて、周りの人とかが言ってくれるんですよね。『選ばれるといいですね』『あの舞台で見てみたいです』とか。そういう方々の期待に応えたかった、という思いは強くあります」
ただ、だからといって醍醐は、Mリーグ入りのために特別何かを始めることは考えていないという。
「自己プロデュースとかYouTuberになってみたらだとか、結構いろいろなことを言われてはいるんですけど、個人的にはそういうのはあまりやろうとは思っていません。あくまでも今の活動を続けながら、Mリーグに出ても恥ずかしくない、出たら自分が一番強いと思えるようしっかりと準備しておくことくらいだと思います」
今の醍醐は、「HQ麻雀」での麻雀レッスン、大会やイベントの企画・運営を主な生業としている。麻雀の普及活動に力を入れており、一般のファンと接する機会も多い。だからこそ、そうした人たちの声もより伝わってくるのだろう。
「Mリーグができるまでは、麻雀プロとして効率的なこと、勝つためにどうするべきかだけを考えていて、見てもらうことはそれほど意識していませんでした。でも、今は麻雀を見てもらって、その内容を説明するとかが必要になってきていると思います。そういうところを通じて、麻雀界の発展につながっていけば、と思っています」
麻雀普及、そして自己研鑽。醍醐はあくまでも一介の麻雀プロとして、己の力を磨き続ける。その姿はまるで、来るべきときを待つ武士のようだ。
「個人的に、あの場で麻雀をしてみたいという思いはあります。しかしそれ以上に、最高位戦の対局を見ていなくてMリーグは見ているという人はいっぱいいると思いますけど、そういう人たちにも楽しんでもらえるような、プロの麻雀を見せたいという思いはあります。いずれは選んでいただけるように、それまで麻雀の奥深さを表現できるような内容の麻雀を打っていきます」
麻雀プロの自己プロデュースの必要性に言及する声が多い中、それでも醍醐は自分の麻雀だけで道を切り開こうとする。無骨で、それはもしかしたら不器用なのかもしれない。だが、彼のような打ち手がMリーグに加わることがあれば、それはまたMリーグが、新たなステージへと進んだ証明と言えるのかもしれない。
そんな醍醐と対照的に、Mリーグ入りのために重大な決断をした男がいる。前雀王、矢島亨だ。
矢島亨(日本プロ麻雀協会)
「会社を辞め、麻雀プロとしてMリーグ入りに全てを懸ける」
「実は、ファイナルが終わった次の日にU-NEXT Piratesから連絡があって、面談をしたんです。過去のドラフトのときにはそうした連絡はなかったので、今回のドラフトはドキドキしていました」
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