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麻雀プロの研究会ってどんなことやってんの?【文・友添敏之】

割引あり

友添敏之


【Sリーグ】

 スポーツ選手の練習風景とかってニュースで目にしたりしますよね。だけど、それ以外の競技の練習ってあんまり見たことない気がします。

 初めて研究会に参加したのは、2014年の春、“Sリーグ”という名前の私設リーグでした。

 当時は出る対局出る対局全て勝つもんだから、元々あった僕の麻雀への自信は確信に変わっていた。そりゃそうだ仕方ない、全て勝つんだから勘違いしても仕方ない。

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 ハッキリ言って絶対最強だと思ってた。
「多井さんって人が今麻雀一番強いって言われてんだって?

へー、どんだけのもんなのかいっちょ見に行ったろ。

とゆーか、多井さんもめちゃめちゃにやっつけて自分が一番なことを証明したろ」

と思ってSリーグに乗り込んだのです。
そうです。

 Sリーグは多井さん、今やMリーガーとして影も踏めなくなったそのけんさん堀さん、松ヶ瀬さん、のちに最高位を獲る坂本さん、協会のAリーガー選手も複数人。

【多井隆晴プロ】

その頃の話で僕が覚えてるのが多井さんとの話で…
友添「この5p4pのターツ落としはダブルメンツ落としになってないやつっすね。

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3-6pは通ります。1枚切れの4pの方が5pより後に出てきているから(牌効率的に非合理なので)。」

多井「いや、そうとは限んないよ。俺もあえて逆打ったりするから。第一、みんなが絶対に理屈通りに打ったらバレバレ過ぎて勝てないっしょ。」
「えー―――!じゃあどの程度の頻度で確率を外してくんすか!?損するのに!」
1p4p9pってあっても9pから切ること普通にあるからね。」
「いやいやいや!効率落としてまでそんなんするのはさすがに損ですって!」
というやりとり。


 その頃の僕は損得の話ばっかしてました。いや確かに、ゲームだから損得考えて行動を選ぶんやけど、損得だけが選択の基準になってしまうと読みやすくなり過ぎてしまったり、裏を取られてしまうことも増えますよね。
 例えば、グリコチヨコレイトパイナツプルってやつ。

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 先に目的地に着いた方が勝ち。ジャンケンで勝った方が前に進めるんやけど、その勝った手によって進める歩数が変わってくる。グーで勝つと3歩、チョキで勝つと6歩、パーで勝つと6歩進める。
 損得のことだけで考えるとチョキかパーを出すに決まってる。
 で、そこから少しだけ進むと、まあ相手もチョキかパーを出してくるだろうから、そん時に負けることないようにチョキを出すようになる。
 ここまでは相手の思考に立たなくても(可愛い子供でも)わかる。
 だけど、可愛い子供の域を出るとこう考える。
「相手はほぼ確実にチョキで来るんだし、ほんならグー出したら絶対勝てるんじゃね?」と。

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 僕はそんな子供だった。そして現実として勝ちまくった。ただ勝つだけじゃない、ほぼ常勝だったのだ。
 なぜ“ほぼ”なのか。それはたまに、ホント稀に、なんも考えないでパーを出してくる奴がいたからだ。
 そんな奴に出会うと、幼少期の僕はまず「え?」と思った。そして次に「えぇっ!?」と驚いた。そう、負けが信じられなかったのだ。
 そうして最後に「何なの!?なんで何も考えてない奴に俺が負けんの!?そんなアホな!パ・イ・ナ・ツ。プ・ル、じゃねーよ!」と、そう、怒っていたのだ。理が通らない、その余りの理不尽に子供でありながら本気で怒っていたのだ。ダメな奴だ。アホは俺だ。
 そうして僕は、何も考えてなさそうな相手に対しては結局チョキを出すことを決めたのでした。

 で、その結果、また何も考えずにグーを出してきた奴に負けて怒って。

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 さて、まとめてみると、この二者は出す手は同じやけど、それを決めた理由は全く違っているんすね。
 今になるとこうやって「ふーん、おもろ」と思えるけど、当時はまだここまでは気付いてなかったっすね。
  
 多井さんが4p5p問題の時に言っていたのはまさにこれなんだなと思う。
7年前、すでに現役最強だった多井さんに向かって、恐れ多くも僕は「いやチョキ出したら効率良いんだし、そして相手が効率通りやってきたら絶対負けないんだから、そうしない奴はダメっす!」と言い放っていたのである。
こわっ。
 その先の「だからグーを出す」という思考にも至らず、「その上で、全てを知った上でパーを出す」という選択があることなんて微塵も思わずに…。
ハズい…

【園田賢プロ】

 こんなこともありました。
 そのけんさんが5巡目くらいにドラの7sを切ってリーチ宣言して、その時はそれが役牌1副露していた人にシャンポンで刺さったんやけど…。
 手牌開けたらそのけんさん6p単騎の七対子リーチだったんです!

そのけんさんの

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