脅威の5連勝! 鈴木優が異常にゲンを担ぐワケ 文・ZERO / 沖中祐也
みなさん、くれぐれも今回の記事はデジタルの権化であるU-NEXT Pirates船長・小林剛の目には入らないよう配慮をお願いする。
優はゲンをかつぐ
優には対局前のルーティンがある。サウナに入り、同じ時間に同じ担当者からマッサージを受け、オロポ(=オロナミンCとポカリスエットを混ぜたサウナー御用達のドリンク)を青いストローで飲んでからスタジオに向かうのだ。
ある日、どれくらいの強制力があったのかは測りかねるが、優は嫁様から勧められた野菜をしぶしぶ食べた。するとその夜のMリーグで気持ちの良いトップを取ったのだ。夜の日の配信では「これぞベジタブルツモ!」「さすがスーパーヤサイ人」というコメントで溢れ、優もその気になってしまう。次の対局前にも野菜を食べるべきな気がしてきて、野菜サラダを買うために近くのコンビニに走る優の姿があった。
するとまたしてもトップは優のもとに転がり込む。今度は「今日の髪型最高でした!」というコメントを見つけたのである。
なんでも、このゆるふわな髪型が女子のハートを射抜いてしまったらしい。私は座高の高さで女子の度肝を抜いたことはあるが、ハートを射抜いたことは一度たりとてない。おかしい。
非モテの私怨はさておき、この髪型でトップを取ったのだから同じことをやらないと優の気がすまない。次の対局でもスタイリストさんにあの日の画像を見せ「これと同じ髪型にしてください」とオーダーするのである。
12月に入ってからトップを量産した優のルーティンは増える一方であり、あれよあれよのうちにMリーグ新記録である5連勝を成し遂げたのである。
パーフェクトな1000打を目指そう
「誰でも取れるトップでした」
と優は言う。はい出ました!これ強い人が言うお決まりのセリフ!と、言いたくなるものの優は本心からそう思っている節がある。
優は片山まさゆき先生のマンガの大ファン。いや、私を含むこの年代のほぼ全てのプロが片山マンガのファンだとは思うが、麻雀観に大きな影響を与えたという点においては優のそれは根深い。
たとえばノーマーク爆牌党という作品の中にこんな一コマがある。
準主人公である鉄壁保(てっぺきたもつ)が、女流プロである九蓮宝燈美(ちゅうれんぽとみ)に対し、配牌記憶の特訓を行う一幕である。若き日の優は、鉄壁の放った「この訓練はプロならみんなやるのさ」というセリフを「なるほど、プロは毎日これをやらないとだめなのか」と真に受けた。こうして勝ちたい一心で、来る日も来る日もこの特訓を続けたのだ。純粋すぎる。
そのおかげか、優は周りが引くレベルの記憶力を身に付けた。以下の動画は、私が抜き打ちで「今日の東一局の配牌言えますか?」と尋ねたときの切り抜き動画である。
【#牌譜検討 】ヤバすぎて引く・・・カバンは忘れるけど牌姿は忘れない!!鈴木優の超絶記憶力【#mリーグ 】
ちなみにこの特訓は昔の教え子であった魚谷にもやらせており、やはり魚谷も近いことができる可能性が高い。麻雀においてこの能力がどこまで大切かと言うとわからないところだが、そんな優が片山マンガで一番影響を受けたのがこのセリフである。
パーフェクトな1000打とは、東南戦1半荘の打牌が平均して150回、チーポンリーチの判断を合わせると200回、リーグ戦や決定戦で5回戦を打つとしたら1日1000打。その1000打を全て正着で埋めることで優勝確率は8割以上になると推測されるので我々はそれを目指していこう、という考え方である。
若き日の優の魂に電流が走った。おぼろげに自分の中でイメージしていた麻雀に対する考え方が片山キャラクターのセリフによってハッキリと言語化されたのだ。
ゆえに優の麻雀は減点法なのである。パーフェクトな1000打があり、それができて当たり前、できなかったら減点。だから周りから「今回の半荘すごかったですね!」と言われてもキョトンとしているし、会心に見えるトップをとってもミスがあったら落ち込んでいる。
逆に自己肯定感がレッドゾーンまで振り切れている私が勉強会などで「優さん!この一打見てください!どうです?この天才的な読み!」と手筋をアピールしても「そうですねー」と棒読みに苦笑いをトッピングして返してくれるのだ。
「誰でも取れるトップでした」
謙遜とかお決まりのセリフではなく、優が本当に心からそう思っていることがおわかりいただけたのではないだろうか。
五連勝への道程
本当に誰でも取れるトップなのだろうか?それを検証するために我々は浜松町の奥深くに潜り込んだ。
南3局、親のリーチを受けた優の手牌。優はトップ目でありここで親に放銃したら2着目の東城(下家)が喜ぶだけという状況である。持ってきた4sはドラをまたぐ超危険牌。だが優はその4sをツモ切った。
言うて安全牌がない。4sよりは通りそうな5pを切る人もいるかもしれないが、自身も147mという絶好の三面待ちだし、多くのMリーガーは危険と思いながらも4sを押すだろう。
(33/36人)←Mリーガー36人中33人は押すという私の独断の推測数値。
次に5sをツモってきた。今度はリーチ者の菅原が6mをツモ切っており、安全牌ができたばかりである。何度も言うが放銃は罪な状況である。
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