届かなかった倍満── 川原舞子に突きつけられた究極の選択 文・須田良規
<川原最初のチャンス>
9月17日(土)に行われた最強戦2022女流プロ令和の乱。
「変顔の女王」という愛らしいキャッチコピーを持つ川原舞子は、予選B卓を勝ち抜き、決勝戦を戦っていた。
川原は昨年女流チャンピオン決戦の枠でMリーガー3人を倒してファイナルまで進んでいる。
2020年に第15期女流桜花も戴冠しており、今もっとも旬な女流選手の一人である。
決勝はオーラスを迎え、川原がトップ目。
点棒状況は東家から、
内田みこ 26200
川原舞子 35900
清水香織 6500
中田花奈 30400
となっていた。
川原は逃げ切れば昨年に続きファイナル進出。
ここに親の内田みこがリーチ。
川原も親に切られた【4s】をチーしてテンパイ。
【3p6p】待ちのノベタン現張りである。
そしてすぐその【3p】を掴んだのが中田花奈だった。
<中田が止めた運命>
全体図はこうである。
中田から見て川原は直前に内田の切った【3p】を鳴いておらず、
自身が形式テンパイに向かうなら切っておきたい牌である。
しかし、やはり川原が【4s】チーしての打【1p】であったことから、ピンズの下に関連牌はあると踏んで、中田は【3p】を打たなかった。
中田は周知のように元乃木坂46のメンバーで、麻雀プロとしての経験は浅い。
しかし今回の放送を見て、堂々とした戦いぶりに目を見張った方も多いだろう。
そしてこの【3p】止めが、結果勝負の行く末を揺蕩わせ、川原を苦しめることになる。
この局は内田がツモ。
リーチ・ツモ・タンヤオ・ドラ1の4000オールである。
このアガリで内田が39800、川原は31700となり、川原はアガれば優勝だった先刻までとは大きく状況が変わり、条件が必要になった。
<内田の連荘が川原を追い詰めていく>
内田は流局して伏せても優勝である。
アガり止めのないルールでは、こういう状況での連荘は難しい。
アガればどんどん相手との点差は離すことができるが、逆転の機会を次局へ次局へ与えていくことにもなりかねない。
しかし内田はきっちりと攻め続けた。
1300オールは1600オール。
これで14500点差。
1000オールは1400オール。
これで20100点差。
次局は5本場で、川原はハネツモでも18000+本場2000で、100点届かない。
倍ツモだ。
3着目の中田が内田と25600点差の倍ツモ条件なので、中田からリーチ棒は出てハネツモOKになる可能性はあるが、
まずは川原も倍満クラスの手を狙っていく。
<川原最後の局>
さすがに内田も最終局とするだろう。
川原が願いを込めて起こした配牌は、アガりすら望めないような無残なものだった。
昨年ファイナルで瀬戸熊直樹に敗れ、雪辱を誓った川原。
事前インタビューでも、その思いを強く語っていた。
このまま、何も抗えずに終わるわけにはいかなかった。
打【5m】とし、国士や三元役、メンホン──。
訪れるツモ牌の導く倍満ルートを手繰っていく。
そして牌は川原の思いに応えた。
内田の寄越した、より厳しい条件と、逆転の機会。
それをクリアする手材料は揃いつつあった。
8巡目──。
運命の、瞬間だった。
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