「『最高位はラピュタみたいなもの』 5年間の集大成、最高位への挑戦」最高位戦日本プロ麻雀協会・坂井秀隆
10月9日、最高位戦日本プロ麻雀協会・第49期A1リーグは最終節を迎えた。最終半荘を前にして、最高位決定戦への進出枠3名は、村上淳・石井一馬がほぼ当確、残る1枠を牧野伸彦・坂井秀隆・近藤誠一・水巻渉の4名で争う構図となった。
特に坂井と近藤・水巻は配信卓での直接対決であり、注目も集まった。戦いは最終戦のオーラスまでもつれ、最後の一席を確保したのは坂井秀隆。
初のA1リーグを戦い抜き、初の決定戦へと駒を進めた坂井の胸中にある、率直な思いとは。
■初めてのA1リーグと、追いかけていた村上淳
坂井にとってA1リーグは、10年近く挑戦を続けて、ようやくたどり着いた舞台だった。そこで戦った感想を尋ねると、坂井は「やっぱりA1は違った」と振り返る。
「1枚厚みが違うというか、圧も違うし、初めてだったのはあるのかもしれないですけど、やっぱりA2とA1ってまた一つ違うんだな、というのはすごく感じた1年でした。自分もプロになって18年経ちますけど、それと同じか、もっと長く続けてきた人たちですし、背負っているものもあって、何よりも最高位を目指せる唯一の位置にいる14人じゃないですか。その重みはすごく感じていました」
A1リーグには、これまでずっと追いかけていた背中があった。リーチ超人・村上淳。彼に対する思いは、最高位戦の「FACES」でも語っている。
「村上さんと同じリーグになったのは、18年で初めてです。村上さんは常に一つ上のリーグにいて、ずっと憧れていた人でした。最高位は僕らにとっては誰しもが目標にするものなんですけど、もう一つ、『村上さんとリーグ戦という公式の対局で半荘4回を打つ』のが、僕の目標の一つでもあったんですよね。
そのときはもう、『レベチな感動』って言うんですか、それがありましたね。今まで別のところで打った村上さんとは全然違いますし、マジで生きてるな、やっていてよかったんだな、っていうのはめっちゃありました」
村上は、A1リーグをぶっちぎりの首位で突破。最終節では同卓の坂井・近藤の前に、大きな壁として立ちはだかった。
「エモいっすよね」
砕けた語り口調の坂井だが、そこには紛れもない本音と熱がある。
「村上さん、めちゃくちゃ強かったです。そして、最終節では自分のやるべき麻雀を徹底していました。村上さんは牌で会話できる人だし、してくれる人だし、『今日の4半荘はこうやって打つんだよ』っていうのを彼は1回戦から最後の場面まで貫いてくれました。
僕はそれを本当にリスペクトしていて、だから僕は最後の村上さんのリーチについても、形や打点までさらに深く読めたんです。その日一日の村上淳の麻雀を見た上で、あれは彼なりに何か意味のあるリーチだったので、彼には放銃できないなと。
あの局は、僕は近藤さんをまくらないといけないのになぜか全ツッパできない、近藤さんをオリさせず、村上さんにはまくりに行ってもらうとか、すごく難しい局になりました。最後に開かれた手牌を見て、納得しますよね。村上淳は最後まで村上淳でしたし、素直にすごいなって思いました。『7s、俺の三色・・・』って思いましたけど(笑)」
最終戦オーラスは、村上と坂井によるリーチ対決となった。村上の待ちは147s、坂井は47s。待ち牌はくしくも同じだった。そして、坂井がツモれば逆転トップとなるはずの7sを村上がツモり、戦いが終わった。
追いかけていた村上淳が、そこにいた。そんな彼に対するリスペクトを、坂井は隠そうともしない。
「そういうのはあまり口に出さないほうがいいよって、先輩2人くらいから言われたことがあります。でも、僕の村上淳に対するリスペクトはあまりに特別過ぎますし、僕は自分の思いを口にし過ぎるタイプなので、むしろそれを表に出すほうが自分にとっていいのかなって思っています」
■その瞬間から手が震えて、うまくマイクを持つことができなかった
坂井が最後まで決定戦進出を争った近藤誠一は、いわずと知れた最高位戦日本プロ麻雀協会の大看板である。Mリーグ・セガサミーフェニックスでも数々の名対局を繰り広げたトッププロで、坂井と比べると、知名度や人気は圧倒的に上だと言わざるを得ない。そして近藤にとっては、今期限りでのリーグ戦勇退を示唆していたシーズンだった。
「もう、ヒールですよね。最高位戦って、スタートの段階で全部の組み合わせが決まるんですけど、僕は今季、12節中で近藤さんと6節当たったんですよ。その組み合わせも道中も、そして僕のキャラ的にも、今年は圧倒的にヒールになっちゃうなって、自分でも思っていました。実際、ヒールで終わったというか、終われたというか」
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