麻雀が好きすぎて家庭を失ったプロ雀士 金杉空(かなすぎそら)~ドキュメントM
麻雀ばっかりしていて奥さんや恋人に愛想をつかされそうな男……。
そんな話は世間にゴマンとあるが、実際に離婚を言い渡され、3日後には何もかも撤収されてしまったというところまではなかなかいかないだろう。
日本プロ麻雀連盟の金杉空プロ(30歳)は今年の夏に離婚したばかり。
「麻雀が好きすぎて家庭を失ってしまった」という顚末を聞いた。
第1期麻雀最好位に選ばれました
今回の取材のきっかけは、金本編集長のツイッターである。
「麻雀が好きな人って何を考えてるんだろう」という好奇心から、「麻雀最好位は誰だ! 自薦他薦問わず」という主旨の書き込みをしたところ、「我こそは麻雀最好位。自分ほど麻雀が好きな人はいないだろう」「麻雀が好きと言えばあの人が一番でしょう」といった反応がたくさんあった。
その中で、一番おもしろかったのが金杉空(かなすぎ・そら)プロ。
失意の中でようやく現実を受け止めてコメントしたものをおもしろいと言っては失礼なのだが、「麻雀が好きすぎて、このたびヨメが出て行ってしまいました」という事実が金本編集長の心を打ち、「麻雀最好位2022」に選ばれた。
そのお話を聞く前に、金杉プロの経歴を追っておきたい。
東京都大田区出身の30歳。
中学生のときに滝沢和典プロが書いた入門書を購入して麻雀というゲームは知っていたが、ちゃんと覚えたのは高校生の時。当時は千葉県・銚子商業高校の野球部に所属していた。
「真剣に野球をする部活ですけど定期テストの前は部活動が禁止なんです。野球部の先輩で家に自動卓がある人がいて『麻雀わかるヤツ、来い』と声がかかり打つようになりました。
最初のうちはボコボコに負けました。高校生どうしだからもちろんお金を賭けたりはしないんですけど自分が持っているゲーム機を担保として打って取り上げられてしまって。
悔しかったから『アカギ』や『むこうぶち』を一生懸命読んで勉強しました。漫画の中からリアルな闘牌シーンを抽出して自分なりに『こういうとこはこう打つんだな』ということを考えたりして。
その先輩が卒業する前日、勝ってゲーム機を取り返してめちゃくちゃうれしかったです。麻雀で勝つって楽しいなあ、と実感したのはそのときです」
大学を除名された後父親の会社で働く
高校卒業後、千葉県内の私立大学に入学。
「いわゆるFランですけど、野球で入りました。親には『学費とか全部自分で出すから大学に行かせてくれ』と頼み、高校生の時から野球をしながらアルバイトでお金を稼ぎ、奨学金ももらって入りました。
そしたら1年生の時に『野球部員は3,4年になるまでアルバイト禁止』と言われたんです。アルバイトしないと暮らしていけないから野球をやめて、アルバイト三昧の生活になりました。バイト先は高校からずっと牛丼のチェーン店仕事だったんですけど、支店が異動になったらあまりにも忙しかったのでやめました。その後人と接しなくてもいい、夜中の工事現場の警備の仕事をしてみると、時間ってすごく長く感じられるんですよね。やっぱり人と話さなきゃだめだ、と思ってそこもやめました」
学生時代も、麻雀は実家の近くのフリーでよく打っていたという。
「ある日麻雀を打っていたら小学校の同級生にばったり出会い、
『今どうしてんの?』みたいな話から、焼き肉店のアルバイトを紹介してもらえました。ここのバイトは待遇がよくて、その同級生と一緒に働いて、仕事の後に朝まで麻雀したりしてました。今でも麻雀仲間です」
アルバイトと麻雀に明け暮れ、学校には行かず、学費の支払いが滞ったときに大学から「授業料を納入するか、このまま除籍か」の選択を迫られた。
「あと半年だったんですけど、別に卒業しなくてもいいかなと思って大学はそこでやめて、父親の経営する塗装業の会社に入りました。
塗装には興味ないですけど、その頃は『自分の好きなことは仕事にしたくない。仕事にしたら、好きなことがキライになってしまう』と思ってました。自分が子供の時、家族の時間がたくさんあったから、仕事としてはいい仕事なんだなあと思って入れてもらいました。自分が会社に入って父は喜んでいるみたいです。
後を継ぐかどうかは決めてないけど『一代で終わるとせっかくできたお客さんやいろんな道具がもったいないからやるならやってもいいよ』と言ってくれてます」
会社に入ってからは麻雀とは少し疎遠になり、月に1回ガッツリ打つ、というサイクルだった。
「『むこうぶち』はずっと好きで、それで安藤満さんを知り、小島武夫さんのことを知り、こういう人もいるんだなあとは思っていました。打ち方も、影響を受けてると思います。
フリーで下家の人がすごく噴いたときに、(傀ならどう打つだろう)って考えて第1打に赤5sを切ってみたらチーされて、その後下家が黒5sを手出ししたので(誘いに乗ったな、しめしめ。いつもと違うことをやってしまったからお前の流れは変わるだろう)なんて思ってました。亜空間殺法とか、流れとか、風とかは大好きです。麻雀は『勝ってる』というよりは『負けてない』って感じでした」
かわいいキャバ嬢と熱意で結婚
そのころ、地元の先輩がたまに連れて行ってくれたキャバクラで運命の出会いがあった。25歳の時だ。
「いつも指名していた子がたまたま免許の合宿で1か月いなくて、別のA子って子がついてくれたんですけどそれがめっちゃくちゃかわいくて好きになってしまいました。
後日、自分が後輩を連れて行って、うまくアフターでダブルデートできるように誘って、猛攻撃をかけました。初めから酒を8合頼んで飲ませて飲ませて自分も飲んで、お互いふらふらになった状態で『付き合ってください』と何度も頼んだら、明け方にOKしてくれました。夢のようでしたね」
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