多井隆晴スペシャルインタビュー Vol.3【最終回】「Mリーグで知名度だけ上がっても……収入がそれに追いつかないのはマズい」
これまでに残した実績、その源となった雀力、そして周囲に与える影響力。名実共に、多井隆晴が今日の麻雀界におけるトップオブトップの麻雀プロであることに、異論を挟む者はいないだろう。しかし多井は今や一選手としての枠を飛び越え、より広い視野から麻雀界全体を見つめている。
(構成・東川亮)
■自分たち麻雀プロなんて、全員総取っ替えでもたぶんMリーグは続くんですよ
閉会式で、多井は藤田晋監督への感謝の言葉を口にし、涙ぐむ場面があった。
「Mリーグを作ってくれたのが藤田さんですし、Mリーグは藤田さんの人間関係を削って作られているところもあります。藤田さんがたくさんの人に貸しを作って、それを返すという感じで参加してくれている企業の方も多いのではないでしょうか。あの人に頼まれたら断れないでしょうし。
正直、自分たち麻雀プロなんて、全員総取っ替えでもたぶんMリーグは続くんですよ。
でも藤田さんを筆頭に、企業の方々が抜けてしまったら、Mリーグは終わります。
麻雀業界の人間は、その危機感は絶対に持っていなければいけません。
これまでのように団体で年会費を取って、それだけで細々とやっていくみたいな感じにしたいならそれでいいですけど、少なくとも自分は、もうその時代には戻れません。
『Mリーグがなくなったら麻雀界全員やめようぜ』ぐらいの覚悟で、麻雀プロ全員がMリーグと向き合わなきゃだめですよ。
Mリーグに直接参加していないから関係ない話だと思っている人はまだ多いですけど、もっと業界全体で盛り上げなきゃダメだと思います。やっぱり、まだまだプレーヤー気質の人が麻雀界には多いと思います」
■幸せになる人が増えなければいけない
Mリーグには来シーズンから、衛星放送の「BSJapanext」が母体となる新チーム「BEAST Japanext」が参戦する。視聴数も伸び、スポンサーも増え、選手個人がメディアで活躍する機会もリーグ発足当初から比べると格段に増えた。
しかし、多井からすれば、業界はまだまだ楽観視できる状況ではないらしい。
「自分も含めてですけど、麻雀界はMリーグのチームスポンサーをはじめ、お世話になってきた各社に対して、まだそこまでの恩恵を返せていないと思うんです。それに、そもそも今いる30数名のMリーガーが幸せになっているのかと言えば、決してそうだとは言えません。
もちろん新チームとして参入してくださる企業の方には本当に感謝していますし、それによって新たなチャンスをつかむ人も増えます。
でも、ものすごく幸せになっている人がいない、という現状に関しては、もう少し見直すべきなのではないでしょうか。
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