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厳しい上司こそ後で感謝する存在になる。(文・堀内正人)

もと闇金業者の店長の下で

僕が大手麻雀グループの仙台店に入店したときに新しい店長がやってきました。その人の前職は闇金融屋でした。見た目からしてすごく落ち着いていて、修羅場を潜り抜けている感がありました。身長は平均よりやや低いほうですけど、ガタイが良くてボブ・サップのような丸太のような腕で、肌がちょっとやけていました。
闇金時代に収入が高くてすごく羽振りが良かったそうなんですけど、闇金を続けることができなくなってしまって雀荘で働くことになりました。闇金を辞めた理由はわかりませんが、雀荘で働いているときも、金遣いは荒かったようです。
その店には「日掛け」といって従業員が毎日お店に積み立てをする制度がありました。平の社員は一日千円、店長クラスは一日2千円お店に預けるので、店長なら月6万、年間72万円貯まる計算になります。しかしその店長は金づかいが荒く日掛け金を頻繁に引き出していたので30万円くらいしか貯まっていませんでした。


仏の顔も三度?

 雀荘では毎日の売上や従業員のアウト(店への借金)をパソコンと手書きの帳簿の両方に記録していました。ヒラのメンバーでも帳簿を任されると、少し偉くなったような気分になります。僕は、暗黒肉弾魔人みたいな店長から、帳簿を任されて、頼りにしてもらって嬉しく思っていました。
ただ僕はそういう作業があまり得意なほうではありませんでした。1回目間違えたときは店長は優しかったです。
「まーまー、誰でもミスはあるからねー」
と言ってくれました。それからちょっとして2回目間違ったときは店長の顔色が変わりました。
「お前ちょっと気をつけろよっ」
と。その後僕もかなり気をつけていたんですけど、また間違えて3回目のミスをしてしまいました。 
そのときは店長に店の外に呼び出されました。ワイシャツのボタンを外して丸太みたいな腕を見せられて

「お前口だけじゃ分からねぇのかよ」

と怒られました。
僕はそのとき完全にパワハラだと感じて、「こんな脅しありかよ」って思っていたんですけど、しばらくは怖くて何もしゃべることができませんでした。店長は闇金で取り立てをしていただけあって、迫力がありました、普段は優しいだけに、余計怖かったです。次は何をされるか分からないと思って、それ以来、僕の帳簿のミスはだいぶ減りました。
今、僕がユーチューブの収益などをちゃんと計算できるのは、このこわい元闇金店長のおかげかもしれません。

メンバーの恋愛は長続きしない

僕の働いていた大手グループの雀荘には、女性アルバイトの方も何人かいたんですけど、社内恋愛は禁止になっていました。もしもバレた場合は男性が転勤するか、女性が店をやめるかのどちらかです。

雀荘の女性アルバイトは時給が他に比べると少し高いので、応募してくる人はがけっこういて、店長は容姿重視で採用していました。
ただ雀荘の従業員は出会いが全くありません。1日12時間労働で、休みが月に5日、毎月300時間働くので自由な時間がかなり少ないです。毎日、店と雀荘寮の往復になります。
僕が働いていたときは、結婚はおろか恋人との関係を維持するのも難しいと思いました。
僕は、仙台店に入店したときには同級生の恋人がいました。専門学校で同じクラスで席が隣だった子と卒業してからも付き合っていたんですけど、雀荘メンバーとして働くようになってから別れるまでにそれほど時間はかかりませんでした。すれ違いもあるし、雀荘の仕事を理解してもらいにくかったのです。
社内恋愛も禁止なので店を辞めるまでの3年半、僕に恋人ができることはありませんでした。

それでも恋愛関係になるつわものたち


お店で社内恋愛を禁止にしても男女が一緒に働いていたら仲良くなります。当然働いていた店でもそれはありました。

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