魔神の父のМリーグ観戦記Ⅲ⑥「渋川快進撃‼やったぞ6連プラス」2024年11月26日
1 負けを噛みしめる
前回渋川が連勝した時、私はこうつぶやいた。
「どうせ次は負けるんだよ」
それを聞いてたゼロ君ケタ君トールさんが怒る。
「お父さんがそんなことでどうするんですか‼」
「『負ける』って言わんよ‼」
何と有難いことだ。こんなこと言ってくれる人が居るって嬉しいね。
ただ私はそんな風に考えるのが癖になっているんだろうね。これは広島カープのせいでもある。50年前私が中学生の頃のカープの弱さは群を抜いていた。
「赤ヘル1975(重松清)」に登場するヤンチャ坊主のヤスに「カープの負けには年季が入っとる」と言われるくらいだ。
当時私はラジオのカープ中継を聞きながら宿題をしていた。カープが勝つと、予習も頑張ろうという気になるが、負けるともうダメ。
カープ、2/3は負けてたから、そのままふて寝することが多かった。しかしそれじゃあ心が持たない。
それでいつしか「どうせ負ける」的な心防御策を身に着けてしまったのかもしれない。
孫がゲームやトランプをする前に、「どうせ負けるのは僕だよね」と予防線を張るのと一緒だ。孫レベルだね。これじゃいけないよ。
「負け」は本当はもっと積極的に受け止めるべきものだ。「苦有れば楽有り。楽あれば苦あり」「人生万事塞翁が馬」は、世の理を表す。
特に塞翁が馬の最後のどんでん返しは思いも寄らぬ驚天もの。何が有っても悲観する必要のないことを教えてくれる。しかしそれ以上に人を成長させるものがある。
それは
「負けを噛みしめる」
「負けっぱなしの8年間に感謝しながら道の真ん中に倒れ伏す薄影君。馬鹿にされ恋に破れ、四畳半の部屋で一人うずくまる『男おいどん(松本零士)』(2023年5月「魔神の父の観戦記」)」の負けっぷりこそが私は本物だと思う。
実は渋川に関して言えば、私は彼がそこまで勝負にこだわる人間とは思っていなかった。
うちに居る時、卓球でもゲームでも、そんなそぶりは見せなかったのだ(「チンイツトレーニング」を読むと、結構負けず嫌いだったらしいが)。
しかしМリーグに入ってから、彼のしゃべりやツイートの中に「悔しい」という言葉が増えて行った。
そして私は2024年3月1日、鈴木優さんに大敗を喫した後の渋川のインタビューを聞いてびっくりすることになる。
渋川は今、本物への道の一里塚を歩いているのかもしれない。
2 第1回戦
こうした渋川の歴史が、もしかしたら現在の好調に繋がっているのかもしれない。
それが顕著に表れたのは東2局
親の本田さんの捨て牌
渋川10巡目の手牌
渋川ここから当たり前のように七マンを切ってリーチ。相手は親リー。2ソーは2枚切れ。いくら3ソーが3枚見えているからといって、これはどうなのか。
私は昔、麻雀の強いおっちゃんから、2枚切れのカンチャンは即リーチだと聞いた。
「ええ?」と言う私に、「2枚切れくらいがちょうどいいんだ」と。この言葉は頭に残ってるんだが、「ちょうどいい」の意味は未だに分からない。
結局これまで2枚切れカンチャンが「ちょうどいい」と思ったこともない。
しかし渋川、この局あがり切った。これをどう考えるか。確かに渋川、7ソー八マンと落として降りる手は有った。
ただその場合は親の思い通りで親のプラスは確定してしまうのだ。
正解は私には分からない。ただ言えるのは、渋川はこの追っかけを正解と思い、それを実行できたことだ。
「A切りが正しいかなと思っても、結局Bを切っちゃった」という事例が山ほど有る中、その決断は素直に称えたいと思う。
東4局も面白かった。
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