確信を持って語る 鈴木優は 俺たちのヒーローになる 文・ZERO/沖中祐也
昨日緊急配信されたドラフトで、鈴木優がU-NEXT Piratesに指名された。
確信を持って言おう。
鈴木優は時の人となる。
そとづら十段
私(沖中)がプロになってからのこの半年間、誰よりも近く…というほどでもないが、かなりの頻度で鈴木優を近くで見てきたつもりだ。
「そとづら十段ですから」
鈴木は冗談めかして言う。
誰に対しても笑顔で話を聞き、限りなく優しい言葉で返す鈴木は、神対応という言葉が服を着て歩いているような男である。英語で言うと、ウォーキングゴッドサービスだ。
これは天性の素養である。
実は私も鈴木のようになりたくて、言葉遣いや視線などを参考にしているが、全く近づいている感じがしない。
そして麻雀が強いのは言うまでもないが、その麻雀に対する姿勢も真剣そのもの。
最高位を獲った後でも「まだまだ弱い!」と毎日のように勉強会を開いているし、対局が始まったらたとえどんな小さい大会だろうと仲間内のリーグ戦だろうと、鋭い視線を卓上に向け、何か1つでも学び取ろうという「乾き」に近い感情を剥き出しにしている。
(現在進行中の私設リーグ、鈴木を抑え2位を独走する新人に注目)
現Mリーガーと比較しても、抜きん出ているほどのファン対応力。
タイトルを獲っても崩れない麻雀に対する真摯な姿勢。
優しくて熱い男。
鈴木優は間違いなく今シーズンのヒーローとなる。
直前秘話
ハイボールを片手に鈴木は語る。
「指名が無かったとしても、そんなに落ち込むことはありません」
ドラフトの一週間前、やれ「渋川本命・鈴木は二番手だ」と周りの勝手な盛り上がりに反比例するように、鈴木自身は冷めきっていた。
もちろん指名されたいし指名されたらめちゃくちゃ嬉しいんですけど…と、前置きした上で鈴木は続ける。
「渋川さんが当確だとして、残りの椅子に誰が座るかなんてわかりません。多くの方がとても応援・期待していただいてくれてありがたいのですが…どうしてもこのチャンスを逃せない!という感じでもありません」
──指名されなかったらショックじゃないってことですか?
「全くショックじゃないですね。」
──最高位を獲って、今が確変というかチャンスの時期だと思うのですが。
「そんなふうには思いませんね。企業さんが選ぶことなので…」淡々と鈴木は続ける。
「もし選ばれなかったとしても、もっと麻雀を研鑽し強くなって、鈴木を選ばなかったら誰を選ぶんだというところまで登りつめるだけです」
最後の瞬間、鈴木の眼光が少し強くなった気がした。
いつの間にか、ハイボールは空になっていた。
娘の涙
「すいません、もう一杯いいですか?」
店員に対しても優しい言葉で注文する鈴木に対し、さらに質問をぶつけていく。
──ドラフトの瞬間はどこで見ていたんですか?
「豊橋の家で、家族と一緒にドキドキしながら見ていました」
──お子さんがいらっしゃるんですよね。
「はい、小学3年生と幼稚園年長の姉妹です。かわいいですよ~。これこないだ撮った写真なんですけど…」
嬉々としてスマホを見せつけてくる鈴木は親バカそのものだ。永遠の独身を貫く私としては全く面白くないのでちょっと意地悪な質問をしてみよう。
──もしお子さんに彼氏ができたらどうするんです?
「できませんね」
──いや、できたらという話なんですが。
「許しません」
いかんいかん、このままではご機嫌を損ねてしまう。ここはほっこり路線に戻そう。
──指名が発表されたとき、家族で大喜びだったんですね。
「そうですね、みんなやったー!って。でも…」
鈴木の表情に影が落ちる。
「下の子が『パパ、Mリーグになると会えなくなるんだよね…』と言って泣き出しちゃったんです」
──一緒に東京で住む選択肢はなかったんですか?
「指名されたらどうするかということは前々から話し合っていて、長女が転校したくないというので家族は愛知に残ります。私はまだどうなるかはわからないのですが、単身赴任のような形になりそうです」
2杯目のハイボールに口をつけた鈴木の表情は、どことなく寂しげだった。
たくさん放銃するぜ
──では、優さん自身の率直な感想を聞かせてください。
「ほっとしましたね。なんだかんだで緊張しましたし、決まった後は早く開幕こないかなという感じです」
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