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異名【文・佐々木寿人】

 十段戦の季節である。
 昨年は、レジェンド・荒正義さんがその頂点に立ち、プロ連盟創設以来初のグランドスラムを達成された。
 鳳凰位、十段位、王位、マスターズ、グランプリMAX。
 当たり前だが、どれもそう簡単に獲得できるタイトルではない。
 加えて、リーチをかけている(四種保持)選手も一人もいない。
 正に世紀の大偉業である。
 その荒チャンピオンへの挑戦権を勝ち取るべく、今私は奮闘している最中だ。
 特に今期は、鳳凰位シードで九段戦からのスタートである。
 このアドバンテージを逃す手はない。
 ちなみに私は、プロ入りから七年連続初戦負けという不名誉な記録を持っているが、いつからか「歩くトーナメント」と呼ばれるようになった。
 “Walking dictionary”(歩く辞書)の麻雀版と言えばわかりやすいだろうか。
 なぜそうなったのかはわからない。
 たぶん2017年にグランプリMAXを勝って、自分で言い始めたのが世に広まったのだ。
 どの世界においても二つ名を持っている選手がいる。
 通常こういったネーミングは誰かにつけてもらうことが多いが、自分で勝手に名乗ってしまった方が間違いは少ない。
 今回十段戦を勝てば、真の「歩くトーナメント」となることができる。
 今はまだ八合目といったところである。

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