一番身近な二人の応援団たち【文・佐々木寿人】
滝沢は十分にその役割を果たした。
ただ、私がそれに続けなかった。
ファイナルが終わって一週間が経った。
今改めて思う。
悔いの残らぬ敗戦など、なかなかないということを。
ファイナル11回戦、滝沢和典が親の四暗刻を決めた。
配牌からだけではイメージすら湧かないが、やはりこの大一番でそれをやってのける滝沢への信頼感は揺らぐことはない。
とは言え、今期の滝沢はレギュラーシーズンから苦しんでいた。
チームでただ一人マイナスポイントの▲135.4は、本人的にも到底納得の行く数字ではなかったはずだ。
そのマイナスを取り戻すべく臨んだセミファイナルも▲97.7と、本来の力を出し切れず終わってしまった。
セミファイナルの二日目、楽屋を訪れた前原雄大さんがこう言った。
「ファイナルで爆発するよ」
もちろんチームからしても、このままの調子であれば優勝も厳しいものとなる。
そんな中で叩き出したファイナルの215.5というポイントは、個人トップの成績であり、間違いなくチームの起爆剤となる存在だったと思う。
滝沢は十分にその役割を果たした。
ただ、私がそれに続けなかった。
滝沢が四暗刻でトップを決めたゲームを終え、トータルの成績は以下のようになっていた。
渋谷ABEMAS 284.7
KONAMI麻雀格闘俱楽部 238.0
TEAM雷電 114.9
EX風林火山 ▲185.8
残り5試合で、ABEMASとの差が46.7ポイントである。
私としても気持ちは高まっていたし、ここで逆転できたなら一気に流れも変わると思っていた。
ただし焦りは禁物である。
もう何度となく決勝戦の舞台は戦ってきた。
ダメなときはダメなときなりの打ち方を心掛けなくてはならない。
そのかわり、ここが勝負所だという局面は全面戦争だ。
戦わずして勝利を勝ち取ることなどできないというのが、勝負事の鉄則である。
そこを制した松本選手が上だったのだ。
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