「魚谷侑未が鈴木優に怒られた言ってはいけない言葉。そして東京で飛躍する魚谷と愛知からそれを見つめる優の今だから話せる隠された思いと優のプロ復帰秘話」鈴木優・魚谷侑未対談スペシャル企画（２）
近代麻雀note・Mリーガー対談スペシャル企画、鈴木優×魚谷侑未（２）。魚谷侑未は鈴木優の店でめきめきと力をつけ、上京後は数々のタイトルを獲得し、Mリーグ発足初年度にはセガサミーフェニックスからドラフト1位で指名され、初代Mリーガーとなるまでに名を馳せた。そんな魚谷を、優は愛知からどのような思いで見ていたのか。そして、Mリーガーとなった師弟は今、どんな関係になっているのだろうか。（全3回の2回目／#1、#3へ）
［文・東川亮］
■「麻雀をやめろ」と言った話
――漫画「泣き虫マーメイド」では、優さんが魚谷さんに「麻雀をやめろ」と言ったというエピソードが紹介されています。
優 昔のこと過ぎて不鮮明な部分もありますけど・・・その日の魚谷さんはとにかく麻雀の調子が芳しくなくて打つのもつらいくらいで、最終的にはひどく負けて、営業が終わった後にほろっと、「麻雀なんかしたくない、やめたい」と言ったと記憶しています。
でも、麻雀をやっていればこれからもいっぱい負けるし、もっとしんどいこと、辛いことだってたくさんあります。そして、たかだか1日ボロ負けした程度で簡単に「麻雀をやめたい、二度と打ちたくない」などと言うのは、応援してくれている人、活躍を願ってくれている人に対して、絶対にやってはいけないことです。たぶんちょっと感情的になって言っただけだと思いますけど、一生やっていく麻雀をそんなに簡単にやめたいというならやめればいいし、悔しいなら努力すればいい。「もう二度と麻雀をやめたいなんて口にするな、次に言葉にするときがあるなら本当にやめてしまえ」と言った記憶があります。
魚谷 だいたい合っています。付け加えるなら、優君は私が道中ずっと負けているのを見て「代わろうか」と言ってくれていました。でも私は打つといって10時間くらい打って、結局その日はほとんど逆連対でノートップ。それで、お客さんがいなくなった後にお店のバックヤードで泣き言みたいなことを言いました。
でも、さきほど「優君はいつもキレてる」って言いましたけど、麻雀のことで怒ることはそれまで1回もなかったんですよ。その優君が怒っている様子を見て、「これは付き合っている彼氏に辛いことがあったからって『別れる』と言っているのと同じことだ。気を引きたかったわけではないけど、言ってはいけないことを言ってしまった」と気付きました。言ってはいけない言葉はどんなことにもあって、自分はそれを言ってしまったと思い、怒られたことには納得感もありました。
今まで一度も怒られていなかったからこそ腑に落ちた、忘れられないひと言でしたね。なのでそれ以降は、一度もその言葉を口にしていません。
優 魚谷さんも、負けが込んでふてくされているとかではなく、ずっと一生懸命打っていました。でも、麻雀なのでそういうこともあるじゃないですか。これからはそういうゲームとつきあっていくんだ、というのは伝えたかったですね。
魚谷 私も、そのときは怒られましたけど、優君はずっとお店で見守ってくれていて、それにはすごく感謝しています。最後もそうやって怒ってくれたのは、私の財産として生きています。
■優には、できれば連盟に入ってほしかった
――魚谷さんは、2年くらい優さんのお店で働き、そこから上京しました。上京後も連絡を取り合っていたのでしょうか。
優 あんまり取っていなかったかな。でも、リーグ戦やタイトル戦の結果などは本人と同じくらい気にしていましたし、だから女流桜花を獲ったときもうれしかったですよ。
魚谷 いや、普通に連絡は取っていましたよ。タイトルを獲ったときも報告しましたし。
優 まあ、頻度は減ったし、離れていたから会うこともなかったですからね。
――優さんは魚谷さんの活躍を見て、どんな心境だったのですか。
優 言ったように、魚谷さんは不器用なタイプで、媚びを売ったり気に入られようとしたりするのが得意ではないですから、とにかく不安でしたよね。活躍するために上京したものの、先輩や友達と仲良くやれるのか、思ったことをストレートに言って怒られないか、という心配はありました。
本当は愛知にいてほしかった気持ちもあり、東京に送り出したことに寂しさもありましたけど、送り出したことに間違いはなかったですし、活躍するのは自分のことのようにうれしかったです。魚谷さんには一番名前が売れて強くなってもらって「魚谷侑未のようになりたい」と思われる麻雀プロになってほしいと思っていたので、「羽ばたけ、勝って勝って勝ちまくれ」と、自分の分身を見ているような感じで応援していましたね。
ここから先は
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか？