井出洋介語る23阿佐田哲也さんとの思い出
「麻雀放浪記」の世界は僕には無縁だと思った
雀聖と呼ばれた阿佐田哲也さんとは、何度か麻雀をご一緒したことがある。
阿佐田哲也さんは「麻雀放浪記」という麻雀小説をヒットさせた作家で、本名の色川武大(いろかわ・たけひろ)の名前で直木賞を取っている。
僕が初めて阿佐田さんを知ったのは、「11PM」の大橋巨泉さんの麻雀実践教室の中で、麻雀の神様として紹介されたときだ。
その頃は、まだ麻雀放浪記をはじめとした麻雀小説を読んでいなかった。しかし、大学2年生のときに初めて競技麻雀に挑戦したのは「第1期阿佐田哲也杯」であり、それをきっかけとして、阿佐田さんの小説や戦術書を読み、ファンになった。
ただ、小説「麻雀放浪記」に書かれている世界は、僕には単なるフィクションで、自分には関係ないと思っていたし、憧れるものではなかった。
そもそも僕は、「麻雀放浪記」のようなピカレスクロマン(悪者が主人公になる小説)よりも、正々堂々とした正義の味方が活躍する話が好きだったし、スポーツ漫画でも「あしたのジョー」よりも「巨人の星」のほうが好きだった。
「麻雀放浪記」は、読み物としては面白かったが、決して登場人物に思い入れを持つようなことはなかったのだ。
2人きりでゆっくり話した夜
ただ、阿佐田哲也さんという人物の大きさは感じていた。
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